駒子の備忘録

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秋山はる『オクターヴ』(講談社アフタヌーンKC全6巻)

2011年09月23日 | 乱読記/書名あ行
 「売れなかったアイドル」という過去から、好奇の目と中傷にさらされ、高校生活に自らピリオドを打った宮下雪乃。ひとりの女としてみてほしい、誰かにもとめられたい、そう願いながら孤独な日々を送る彼女の前に現れたのは、かつてミュージシャンとして活躍していたという女性、岩井節子。ふたりは距離を縮め、肌に触れ合い、恋に落ちる…

 ヒロインがイヤな女のところがいいなと思いました。
 迷っていて、悩んでいて、卑屈で、フラフラしている。
 可愛く生まれて、芸能人を目指して、それが思うような結果に進まなかったということで自信をなくしてあがいているんだろうけれど、そのウザさ、身勝手さが本当に生っぽいし、リアルで、そして色っぽい。
 ジャンルとしては百合ものなのでしょうが、どちらかと言うと青春もの、と区分けしたくなるのは、雪乃も節子もそんなに主体的にレズビアンなわけではなくて、たまたま好きになった相手が同性だった、というようにも見えるところです。
 節子には男性経験もあって、その上で女性の方が好きだな、と認識しているのですが、雪乃の関してはかなり怪しいと思う。彼女にとってはまず自分探しがあるわけで、自分に近い体の持ち主にもたれかかるほうが楽だった、ように見えるからです。
 でも別にそれが悪いことだとも思いません。異性の体ってやっぱりものすごく別物だし、だったら同性の体の方がわかりやすいですもんね。
 雪乃もそして節子も意外に悩んでいて迷っていて、泣いたり喧嘩したり、そういう意味ではごく普通の恋愛をしていきます。だからこれは決して真実の純粋なな本物の恋の物語!とかではなくて、ただのよくあるごくごく普通の恋のお話なのです。
 その当たり前さ、気負いのなさがいいな、と思います。掲載されたのも青年誌で、百合誌じゃないし。
 ごく普通の恋の話として、こういう形もあるよね、という感じが、現代的でいいなと思うのでした。


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