宝塚大劇場、2014年1月24日マチネ。
東京宝塚劇場、2014年2月25日ソワレ、3月4日ソワレ、3月12日マチネ。
フランスを革命の動乱から救った、ひとりの英雄の物語。その名はナポレオン・ボナパルト(柚希礼音)、ヨーロッパを制しフランス史上初の皇帝にまで登りつめた比類なき英雄は何を求め誰を愛したのか…
作・演出/小池修一郎、作曲/ジェラール・プレスギュルヴィック、音楽監督・編曲/太田健。
『オーシャンズ11』以上に脚本の仕上がりが遅く、大劇場公演も前半は変更に継ぐ変更ということでしたが、私が観たときにはもうおちついているころだったのかな?
駆け足で歴史の教科書を見せられているみたい、といった評判を聞いていたのですが、私は普通におもしろかったです。とてもよくできていると思いました。
確かに芝居をじっくり見せるタイプの演目ではないけれど、展開が速すぎてワケわからないということはないと思うし、適材適所でよく生徒が配置されそれぞれキャラクターが立てられてそれぞれ上手く見せられていると思いましたし、ちゃんとドラマがありました。つまりキャラクターの感情が動いているのがわかって、ただ「ああなってこうなりました、おしまい」みたいな伝記ものにありがちな事態には陥っていない。さすがだと思いました。
予算があるのか新調のお衣装がこれでもかとまばゆいばかりに出てきますし、豪華なセットが華麗に転換しスピーディーで素晴らしく、映像もあまり多用するのは感心しませんが今回はあまり見切れることもなく上手く効果を上げていると思います。
またクレーンか、しかも二度もと初見は思いましたが、最初は苦学生時代の勉強机として、次は皇帝の退位宣言にサインする机として出てくる、というのはなかなか皮肉でいいなとも思えました。
単調だという声も聞く楽曲も私は好きです。リフレインもリプライズも効果を上げていると思うし、普通に覚えて鼻歌で歌えます。ただ歌詞は良くない気がしました。それこそ時間がなくて練れていない印象でした。それとこれは歌う生徒の歌唱力の差の問題もあるかもしれませんが、一番の大ナンバーが「僕の父は偉大だった」(よく考えるとタイトルも良くないな今回)に聞こえてしまったのはやや問題だったかもしれません。
ともあれさすがに最近はさばきも出ていますが即日完売立ち見も多い大盛況の客入りで素直に喜ばしいし、本当にこれをちゃんとやれるこの組はちゃんとしているなあ、と感心、感動しました。
特にディープなファンでない冷めた見方なのかもしれませんが…でもとにかく私は楽しく観ましたし、もっとチケットが取れていたらビギナーの知人をもっとたくさん同伴したかったなと思いました。素敵な演目だったと思います。再演する意義があるとかとか海外に売れるかどうかはまた別の問題かなとは思いますが。
というワケでザッツ皇帝ナポレオンのチエちゃんが縦横無尽で素晴らしい。こういうちょっと朴訥でまっすくででもちゃんと有能で…というキャラクターが私は好きだしチエちゃんにも似合うと思うので楽しかったです。ねねちゃんとの関係性も好き。
ねねちゃんも、再演ジュリエットの瑞々しさも素晴らしかったですが、こういう大人の女の役も本当に上手くなったと思いますし、チエちゃんと長くトップコンビを組んできたからこそ遠慮したりせず強気に出られるところもあるのでしょうから、バッチリだったと思います。悪女と言われることも多いキャラクターだけれど、ちゃんとナポレオンとの愛が描かれた脚本になっていたのもよかったと思います。
マルモン(紅ゆずる)は…もう少し大きい役にしてもらってもよかったのかもしれません。史実を少し変えてナポレオンと士官学校時代からの仲良しの後輩ということにして、ずっと一緒にやってきたのが最後の最後にパリ開城でナポレオンを裏切る形になる、その離反の苦しさ、天才についていけない凡人の悲哀、みたいなものをもう少しフィーチャーしてもよかったのかもしれません。が、スター人事を別にすれば私はこれはこれで今の形でも見やすいしかまわないと思ってしまいました。
なのでダブル二番手下席みたいに見えちゃっているまっかぜーのミュラ(真風涼帆)、キャラが立っていてきちんと仕事をしていてよかったと思います。でもフィナーレの絡みは不発でしたね、このふたりにはそういう空気や属性はないんですよ…「至上の喜びを分かち合いたいだけです」って台詞がおかしかったなー、やりたいってだけのことをそんなポエムにしてジェンヌに言わせんといてーな、とか笑ってしまった。
そしてズバリ四番手はもうまこっちゃんですよ。今までも上手いと思ってはいましたが今回で私は本当にシャッポを脱ぎました。だってウジェーヌの歌は上手いということ以上にキャラクターと感情を歌えているしきちんと芝居になっている。物語が進んでいるうちに年齢を重ねているのもわかる役作りができているし(子供から始まって大人になっていくまでなので変化を見せやすいというのもありますが)、自信と華が出てきていて、かつ以前の私にはやや鼻持ちならなく見えていた傲慢な嫌みはなくなってきたと感じました。パレード銀橋のいちには仰天しましたが、しかし納得の逸材だわあ。上手く育てて飽きられないうちにトップにしないとダメだよねえ、と思いました。
今回は専科の使われ方が的確だったのもよかったと思いました。みっちゃんが上手すぎて場をさらってしまったり組子をスポイルしてしまうようなことがなく、絶妙なバランスで舞台を支えていたと思いますし、ヒロさんもじゅんこさんも安心安定のいい仕事っぷり、圭子お姉さまも素敵な鬼姑っぷりでした。「私は認めない」はすごい歌詞の嫌な歌なんだけれど上手すぎて圧巻で素で、毎回拍手してしまいました…
この姑と嫁の関係とか、ジョセフィーヌがナポレオンの子供を産めなかったために離婚せざるをえなかった展開などについて、けっこう嫌がる声も多く聞きました。確かにデリケートな問題だし、もう少し台詞などにデリカシーがあってもよかったかもしれません。でも私にはぎりぎりセーフで基本的には正しいことを普通に言っているだけに聞こえました。政略結婚だし、当時の政治状況や家族や宗教のあり方からして当然至極かなー、と。
みきちぐとさやかさんがまたいい仕事をしていて、ふうちゃんやわかば、はるこもきっちり仕事していて、あと綺咲愛里が歌えて芝居ができるようになっていたのも頼もしかった。
そして夢のツバメ・イポリット(十碧れいや)がよかったわー、好きだわー。あとブリエンヌ(壱城あずさ)もよかった。まあ私はこういう秘書ポジションのキャラクターが大好物なんですが。そしてみっきーがもちろん素晴らしい。
柚長、コロちゃん、ワンコの綺麗どころが仕事しているのは当然、麻央くんもいい使われ方だったと思うし、まさこは役不足に見えるかも…だけどこのくらいが実はちょうどいいのかもしれないな、とか思ったり。すみません。
れんたやぺっちゃん、まいけるにも目がいったし…うん、やっぱり楽しかったな。よくできていたと思います。
やっぱり小池先生ってすごいと思いました。ちゃんとしている。本当に眠らなさすぎ、働きすぎだけど。新版『ベルばら』を任される日まで、がんばっていただきたいです…!
東京宝塚劇場、2014年2月25日ソワレ、3月4日ソワレ、3月12日マチネ。
フランスを革命の動乱から救った、ひとりの英雄の物語。その名はナポレオン・ボナパルト(柚希礼音)、ヨーロッパを制しフランス史上初の皇帝にまで登りつめた比類なき英雄は何を求め誰を愛したのか…
作・演出/小池修一郎、作曲/ジェラール・プレスギュルヴィック、音楽監督・編曲/太田健。
『オーシャンズ11』以上に脚本の仕上がりが遅く、大劇場公演も前半は変更に継ぐ変更ということでしたが、私が観たときにはもうおちついているころだったのかな?
駆け足で歴史の教科書を見せられているみたい、といった評判を聞いていたのですが、私は普通におもしろかったです。とてもよくできていると思いました。
確かに芝居をじっくり見せるタイプの演目ではないけれど、展開が速すぎてワケわからないということはないと思うし、適材適所でよく生徒が配置されそれぞれキャラクターが立てられてそれぞれ上手く見せられていると思いましたし、ちゃんとドラマがありました。つまりキャラクターの感情が動いているのがわかって、ただ「ああなってこうなりました、おしまい」みたいな伝記ものにありがちな事態には陥っていない。さすがだと思いました。
予算があるのか新調のお衣装がこれでもかとまばゆいばかりに出てきますし、豪華なセットが華麗に転換しスピーディーで素晴らしく、映像もあまり多用するのは感心しませんが今回はあまり見切れることもなく上手く効果を上げていると思います。
またクレーンか、しかも二度もと初見は思いましたが、最初は苦学生時代の勉強机として、次は皇帝の退位宣言にサインする机として出てくる、というのはなかなか皮肉でいいなとも思えました。
単調だという声も聞く楽曲も私は好きです。リフレインもリプライズも効果を上げていると思うし、普通に覚えて鼻歌で歌えます。ただ歌詞は良くない気がしました。それこそ時間がなくて練れていない印象でした。それとこれは歌う生徒の歌唱力の差の問題もあるかもしれませんが、一番の大ナンバーが「僕の父は偉大だった」(よく考えるとタイトルも良くないな今回)に聞こえてしまったのはやや問題だったかもしれません。
ともあれさすがに最近はさばきも出ていますが即日完売立ち見も多い大盛況の客入りで素直に喜ばしいし、本当にこれをちゃんとやれるこの組はちゃんとしているなあ、と感心、感動しました。
特にディープなファンでない冷めた見方なのかもしれませんが…でもとにかく私は楽しく観ましたし、もっとチケットが取れていたらビギナーの知人をもっとたくさん同伴したかったなと思いました。素敵な演目だったと思います。再演する意義があるとかとか海外に売れるかどうかはまた別の問題かなとは思いますが。
というワケでザッツ皇帝ナポレオンのチエちゃんが縦横無尽で素晴らしい。こういうちょっと朴訥でまっすくででもちゃんと有能で…というキャラクターが私は好きだしチエちゃんにも似合うと思うので楽しかったです。ねねちゃんとの関係性も好き。
ねねちゃんも、再演ジュリエットの瑞々しさも素晴らしかったですが、こういう大人の女の役も本当に上手くなったと思いますし、チエちゃんと長くトップコンビを組んできたからこそ遠慮したりせず強気に出られるところもあるのでしょうから、バッチリだったと思います。悪女と言われることも多いキャラクターだけれど、ちゃんとナポレオンとの愛が描かれた脚本になっていたのもよかったと思います。
マルモン(紅ゆずる)は…もう少し大きい役にしてもらってもよかったのかもしれません。史実を少し変えてナポレオンと士官学校時代からの仲良しの後輩ということにして、ずっと一緒にやってきたのが最後の最後にパリ開城でナポレオンを裏切る形になる、その離反の苦しさ、天才についていけない凡人の悲哀、みたいなものをもう少しフィーチャーしてもよかったのかもしれません。が、スター人事を別にすれば私はこれはこれで今の形でも見やすいしかまわないと思ってしまいました。
なのでダブル二番手下席みたいに見えちゃっているまっかぜーのミュラ(真風涼帆)、キャラが立っていてきちんと仕事をしていてよかったと思います。でもフィナーレの絡みは不発でしたね、このふたりにはそういう空気や属性はないんですよ…「至上の喜びを分かち合いたいだけです」って台詞がおかしかったなー、やりたいってだけのことをそんなポエムにしてジェンヌに言わせんといてーな、とか笑ってしまった。
そしてズバリ四番手はもうまこっちゃんですよ。今までも上手いと思ってはいましたが今回で私は本当にシャッポを脱ぎました。だってウジェーヌの歌は上手いということ以上にキャラクターと感情を歌えているしきちんと芝居になっている。物語が進んでいるうちに年齢を重ねているのもわかる役作りができているし(子供から始まって大人になっていくまでなので変化を見せやすいというのもありますが)、自信と華が出てきていて、かつ以前の私にはやや鼻持ちならなく見えていた傲慢な嫌みはなくなってきたと感じました。パレード銀橋のいちには仰天しましたが、しかし納得の逸材だわあ。上手く育てて飽きられないうちにトップにしないとダメだよねえ、と思いました。
今回は専科の使われ方が的確だったのもよかったと思いました。みっちゃんが上手すぎて場をさらってしまったり組子をスポイルしてしまうようなことがなく、絶妙なバランスで舞台を支えていたと思いますし、ヒロさんもじゅんこさんも安心安定のいい仕事っぷり、圭子お姉さまも素敵な鬼姑っぷりでした。「私は認めない」はすごい歌詞の嫌な歌なんだけれど上手すぎて圧巻で素で、毎回拍手してしまいました…
この姑と嫁の関係とか、ジョセフィーヌがナポレオンの子供を産めなかったために離婚せざるをえなかった展開などについて、けっこう嫌がる声も多く聞きました。確かにデリケートな問題だし、もう少し台詞などにデリカシーがあってもよかったかもしれません。でも私にはぎりぎりセーフで基本的には正しいことを普通に言っているだけに聞こえました。政略結婚だし、当時の政治状況や家族や宗教のあり方からして当然至極かなー、と。
みきちぐとさやかさんがまたいい仕事をしていて、ふうちゃんやわかば、はるこもきっちり仕事していて、あと綺咲愛里が歌えて芝居ができるようになっていたのも頼もしかった。
そして夢のツバメ・イポリット(十碧れいや)がよかったわー、好きだわー。あとブリエンヌ(壱城あずさ)もよかった。まあ私はこういう秘書ポジションのキャラクターが大好物なんですが。そしてみっきーがもちろん素晴らしい。
柚長、コロちゃん、ワンコの綺麗どころが仕事しているのは当然、麻央くんもいい使われ方だったと思うし、まさこは役不足に見えるかも…だけどこのくらいが実はちょうどいいのかもしれないな、とか思ったり。すみません。
れんたやぺっちゃん、まいけるにも目がいったし…うん、やっぱり楽しかったな。よくできていたと思います。
やっぱり小池先生ってすごいと思いました。ちゃんとしている。本当に眠らなさすぎ、働きすぎだけど。新版『ベルばら』を任される日まで、がんばっていただきたいです…!
ツイッターでたまに絡ませていただいてます、さき(saki:::)です!
私も評判を聞いてどうかなと思いましたが、とってもおもしろく観れました!
もともと人の生涯を見せる演目が好きなんですが、トモさんのおっしゃる通り、配役が適材適所でしたし、ナポレオンやジョセフィーヌの心の動きもよくわかりました。
宝塚好きとしても、ミュージカル好きとしても、楽しめる演目だと思います。
そして何より、
>そして夢のツバメ・イポリット(十碧れいや)がよかったわー、好きだわー。あとブリエンヌ(壱城あずさ)もよかった。まあ私はこういう秘書ポジションのキャラクターが大好物なんですが。
ここに、大いに、共感しました!!!
れなちゃんのツバメも素晴らしかったですし、秘書ポジションっていいですよね!
それがしーらんというのがまた!素晴らしいです!
こちらにもいらしていただけて嬉しいです。
うん、「人の生涯を見せる演目」にありがちな大味感は私は感じなくて、
ちゃんとドラマがあっておもしろく観たので、私は好きな演目です。
すっごい組ファン、組子ファンからしたら物足りなく感じるのかもしれませんが…
あともっとがっつり芝居を観たい、演技を観たい、という向きにもアレかもしれませんが、
このタイプの作品としては本当によくできていると思うんですよねー。観ていて楽しかったです。
そして握手ガシッ!
今後も秘書ポジション・キャラクターチェックをともにしていきましょう!!
今の最注目は『伯爵令嬢』シモンです!!!
●駒子/トモヌナ●