駒子の備忘録

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篠原悠希『後宮に星は宿る』(角川文庫)

2016年12月30日 | 乱読記/書名か行
 名門・星家の御曹司・遊圭は皇帝崩御に伴う一族すべての殉死が決定されて、ひとり呆然としていた。からくも逃げ延びるが、追われる身に。かつて助けた平民の少女・明々に窮地を救われるも、彼女の後宮への出仕が決まり絶望する。だが、遊圭も女装して後宮に行くことに…中華ふうファンタジー。

 文庫書き下ろし作品で、キャラクター小説というよりはライトノベルでした。中華ふうの架空世界での少年主人公の冒険譚で、キャラクター造形はやや累計的でしたが世界観やディテールの設定がちゃんとしていて、楽しく読みました。
 …が、オチていないんですけど!? っていうか、途中で終わっちゃってるんですけど!? なんなの? 連作予定なの? でもいかにも連載打ち切りになっちゃった漫画のラストの「これからもがんばるぜ!」みたいな、無責任な話の閉め方なんですけど!? よくこんな中途半端なものを売り物にするな角川書店! 始めた話は完結させてから売れよ、読者をなんだと思っているの!?
 楽しく読み進め、しかし美しいオチの形が想像つかなかっただけにオチを楽しみにしていたのに、オチないで終わるという目に遭わされるとは…もったくもって腹立たしいです。

 ヒロインが男装して男子寮に潜入するとか、この話のように少年が女装して後宮に入るとかの、異性装の物語は少女漫画やライトノベルには根強い人気があります。今回の場合は主人公が声変わりを迎え女装もしんどくなり、さてどうなる…?というスリルがありましたが、それも未回収。
 そしてこういう物語では、性別を偽っていることによるラブのこじれがたいてい大きなモチーフになるものですが、今回は周りのキャラクターの布陣が、彼女に仕える形で後宮に共に行くことになる明々と、そこで出会い主人公の正体をいぶかしむ宦官の玄月で、後者とBL風味になるのも微妙だし、といって明々にもヒロイン力が欠けているようで…と心配していたら、結局未回収のまま、でした。
 読者を馬鹿にしてんのか!!!

 おもしろかっただけに、残念でなりません。


 以下、脱線。
 こういう物語に頻出する「宦官」ですが、実は私は正確なところをよく知りません。競馬を観ていたし乗馬をやっていたので馬の去勢については知っているんだけど、人間の去勢ってどうなってるの?
 馬は、睾丸の精巣を取るだけなんですよね。だからペニスは残る。人間もそうなの? ということは勃起できて性交もできるの? ただ射精せず子供ができないだけなの? それともペニスも切っちやうの? でもそれだと排尿に困るの?
 そのあたりの設定によっては、生じる障害とかエピソードが変わってきそうなのですが、ちゃんと描写されたものを読んだことがなくて…調べるほどのことではないしとここまで放ってきたのですが、ちょっと気になったのでこの機会に書いてみました。
 くわしい方がいましたらご教示いただきたく…

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