駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『アストル・ピアソラ没後30周年トリビュート公演』

2022年10月03日 | 観劇記/タイトルあ行
 イイノホール、2022年9月30日18時(初日)、10月2日13時。

 1982年に初来日し、92年にこの世を去った、タンゴの歴史に独立峰のごとくそびえ立つ、傑出した作曲家、バンドネオン奏者だったピアソラの追悼記念公演。
 演奏/フェデリコ・ペレイロ4重奏団、ダンサー/フェルナンド・ロドリゲス&エステファニア・ゴメス、カンタンテ/セシリア・カサード。ゲストアーティストは宝塚OGと藤本隆宏。全1幕。

 初日のOGゲストはマミちゃん、大空さん、ねねちゃんで3日目は大空さんとミズ。まあこれを目当てに行ったわけですが、なんと言ってもダンスが圧巻でした!
 幕が上がるとバンドは板付きで、奥のスクリーンにブエノスアイレスの光景が映り、日本の真裏であることやアルゼンチンタンゴの歴史が語られます。ナレーションは初日はマミちゃん、3日目は大空さんだったので座長(最上級生)が務めていたのでしょう。初日はまず「リベルタンゴ」の演奏から。そして2曲目に早くも白のレーシーなドレスのみっしょんがリーダーとともに現れたのですが、スマートで華やかで美しく、ステージ用のアクロバティックな振りをしっかりこなしていてはわわわわ!とアガりました。が、次に村野みりさんが踊ると、そのストライドの大きさにまた目をみはらされました。プロの現役の競技ダンス選手だそうですが、ジェンヌもかくやという頭の小ささで美しくシャープで、熱い。上手い!となりました。
 さらに本場のカップルが登場すると、もう全然違いました! 2019年の世界タンゴダンス選手権ステージ部門チャンピオンだそうです。しっかりした肉感があってお団子が大きなパートナーがまず素敵で(きっとゴージャスなロングヘアなのでは…!)、リーダーも要するに小太りのおじさまなんだけどその身体の厚みがいいのです! そういえば男性はみんなそこまで背が高すぎず、パートナーが高いヒールを履くとちょうど背の高さが同じになるくらいなのがとてもよかったです。アルタンは顔を寄せ合うかがっつり見つめ合って踊るものなので、目の高さが揃う方がいい気がしました。で、ひょろりと背が高い王子さまふうスタイルより、どしんと重心が低く胴に厚みがあり頼れる感じの方がイイわけですよ! で、このカップルはもう、テクニック的なことが素晴らしいのはもちろん、何かのドラマや物語、感情を踊っているタンゴで、その激しさ、せつなさに心揺さぶられました…!
 各カップル2曲ずつ踊り、なんと3組デュエダン(違)もありました。あんな狭いステージですれ違いすり抜け合いパートナーチェンジまでして、スリリングでエキサイティング! お衣装も1曲ずつ変えていましたが、ここは3組お揃なのも素敵でした。そうそう、パートナーのドレスに比べて地味になりがちなリーダーも、黒スーツの三つ揃えからタキシード、茶のスーツにノータイなどいろいろで渋くて素敵で、観ていて本当に楽しかったなー! パートナーのドレスは黒やラメラメの青やシックな緑や真紅などなどで美しく、機能としても美的にも本当に絶妙なところにスリットが入っていて、美しい脚がよく見えて、素晴らしかったです。
 ロドリゲス&ゴメス(しかし普通、女性名を先に出さないか?)の2曲目は、曲のラストにジャン!となってポーズ決めて暗転、明るくなってレベランス…というものではなく、曲が終わっても振りがありました。男と女が別れて静かに曲が終わり、男が手を差し伸べ、女はさらに拒絶する…みたいな。で、ふたり離れて、ステージでそれぞれの位置に立ち、ふっと笑って演技終了、お辞儀、拍手!となったのが初日でした。3日目は音楽の終わりにすぐ拍手が入ってしまって残念でした。観ていたらこれで終わりじゃないってわかると思うんだけどなー!(><)
 3日目のダンスの初っ端はミズの「リベルタンゴ」で、赤と黒のドレスに黒のスパッツ、赤い靴、フィギュアスケートのアイスダンスどころかペアみたいな大技リフトもあって、すごかったです! ラストに一拍合わなかったのはご愛敬。レベランスのあと落としたイヤリングをさっと拾って去るのがさすがでした。
 ともあれダンスはいずれも本当に素晴らしかったです。また演奏も素敵で、ジャジーな長いピアノ・ソロから始まる「アディオス・ノニーノ」もよかったし、ヴァイオリンのアレンジが素敵だった「ブエノスアイレスの冬」もとても印象的でした。コントラバスのソロから始まる曲もあり、珍しく、楽しかったです。
 カサードの歌はスペイン語だな、というだけでわりと普通に聞こえました、すみません。歌は意外にもねねちゃんがよかったわー! キーが合っていて地声がよく出て、ぱーん!と歌った「チェ・タンゴ・チェ」が華やかでことによかったです。ドレスは綺麗な青のあと、金。でも何故か肌色のインナーを下に着ていた…何故!?
 マミちゃんは赤のドレスのあと、黒地に青の模様…みたいなのだったかな? ミズは金のあと銀と青のシャラシャラ揺れるドレス。「いつもブエノスアイレスに帰る」も「ロコへのバラード」もとてもよかったです。今回のバンドとはブエノスアイレスでCD収録したときのメンバーだそうで、現地での彼らのライブにゲスト出演したときの話やスペイン語の勉強をしているけれど難しいという話を、それはそれは軽妙にトークし、笑いを取っていました。ホントいいキャラだよね、ミズさん。
 なので大空さんだけお色直しなしだったのはしょんぼりでした。サービス悪く見えるじゃん…藤本さんも1着だけだったけど2曲続けて歌ったからだろうしさー。でもボディスと長袖がレーシーな黒のドレスで、黒の手袋にゴージャスなゴツめのブレスレット姿が、路地裏のタンゴ酒場の気怠げなオーナーマダム…って感じで、それはそれは素晴らしかったです。また「わが死へのバラード」という選曲といい、ドラマチックが似合っちゃうんですよねー! 「迷子の小鳥たち」(大空さんは「失われし小鳥たち」という訳を選んでいましたが)も素敵でした。あと、曲のあとのその曲についてコメントする言葉のセレクトが的確で秀逸で美しく、さすがでした。
 ピアソラのタンゴは『La Vie』でも何曲か使っていましたよね、私もあれで覚えた曲がいくつかあります。VOL.2を気長に待っていますからね、大空さん…!

 ダンスが素敵だったので来年の『タンゴの魂』もチケット取ろうかなー、と思っていたら、大空さんのゲスト出演が発表されたのでより楽しみになりました。私も社交ダンスのお教室通い再開を、真剣に考えねば…ちょっとでもこうした世界に触れていたいのです。



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