映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

金の糸(2019年)

2022-03-10 | 【き】

作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv75624/


以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 ジョージア・トビリシの旧市街の片隅。作家のエレネ(ナナ・ジョルジャゼ)は、生まれた時からの古い家で娘夫婦と暮らしている。今日は彼女の79歳の誕生日だが、家族の誰もが忘れていた。

 そんななか、娘婿の母ミランダ(グランダ・ガブニア)にアルツハイマーの症状が出始めたので、この家に引っ越しさせると娘が言う。ミランダはソヴィエト時代、政府の高官だった。

 そこへエレネのかつての恋人アルチル(ズラ・キプシゼ)から数十年ぶりに電話がかかってくる。やがて彼らの過去が明らかになり、ミランダは姿を消す……。

=====ここまで。

 ちなみに本作のタイトルは、日本の伝統的な技術“金継ぎ”から着想を得たそう。


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 閉館が決まった岩波ホール。閉館までなるべく見に行こう、、、と思っていたのに、前回のジョージア映画祭は行けずじまい。

 本作もジョージア映画。老いて、身体の自由も利かなくなり、死を嫌でも意識する日々を送る人々を描いているんだけど、暗くなく淡々とした映画でした。

 79歳の自分の誕生日を誰も覚えていない、、、というのは、そんなに寂しいものなのか。一緒に暮らしている人がいるのに忘れられているのは、やっぱり寂しいのかな。寂しがっていたところへ、かつての恋人から久しぶりに電話がかかってきて、寂しさも吹っ飛んでいたエレナさん。どういう経緯で別れたのかは詳しく分からないけど、いがみ合って別れたのではない様子。

 でも、私はこのエレナさんの反応が、あんましピンと来なかった。私も、似たような経験があるので……。エレナさんが嬉しそうだったので、別に良いのだけど。それに、それこそ死を身近に感じる歳になると、愛憎も浄化されて、たとえ修羅場を経て別れた男でも昔懐かしい人に昇華され、枯れた会話がしたくなるものなのかもなぁ、、、なんて思いながら見ていました。

 ストーリー自体は特にどうということもないのだけど、やはりこれは旧ソ連の国の映画だ、、、と思ったのが、エレナの娘婿の母ミランダの存在。

 この方は、今はアルツハイマーで記憶も怪しいけど、昔はソ連の政府高官だったという設定で、何となくそんな感じがする役者さんなのよね。背筋がピンとしているというか。ソ連じゃないけど、『僕たちは希望という名の列車に乗った』(2018)に出てきた旧東独シュタージの女性・ケスラーと、雰囲気がちょっと似ている。ミランダさんは現役じゃないから大分丸くなっていらっしゃるが、きっと現役時代は、ケスラーみたいだったんじゃないかな、、、。

 しかも、エレナがソ連時代に著した小説を発禁処分にする判断をしたのが、ミランダその人だったのだ。エレナはその後20年、著作物を発表することができなかったわけだから、ものすごい因縁。ちょっと出来過ぎではないかという気がするが、いや、ソ連時代なら十分あり得るのかもしれないとも思う。

 このミランダは、とにかくソ連時代は良かった、、、とノスタルジーに浸っており、認知症の症状も相まってか、現在とソ連時代が交錯している様子。終盤では徘徊に出て、今は廃墟となったソ連時代のものと思われる建物の中を雨傘を差してさまよう姿は、何とも痛々しい。

 エレナにしても、アルチルにしても、話すことは過去の思い出ばかり。現在は外出もしないで家の中で全てが完結している人生だから、そうなるのかも知れないが、これが歳をとるということだ、と言われると、これから歳をとっていく者としてみれば、あまり楽しい気持ちにはならないよなぁ。ただご本人たちは、まったく別々の人生を生きてきたけれど、それぞれが自分の来し方にそれなりに納得している(というか、納得させているのかもだが)様なので、こういうのはその境地に達してみないと分からないことなのだろうね。

 ジョージアも、ソ連時代からロシアには何かと介入されている国だから、今のウクライナ情勢をどう見ているのだろう。今日の新聞を見ていたら、アフリカやアラブ諸国は、かなり冷ややからしい。アメリカがアフリカから距離を置いたところへ、抜け目なく中国・ロシアが食い込み、今や中国の食い物にされている現状で、ウクライナが侵攻されようがどうしようが知ったこっちゃない、というのも、背景を聞かされれば無理もないとも思う次第。

 ロシアも中国も、あまりにも国土が広すぎると統治が難しいから、ああいう独裁体制にしたがるのかな。抑え込んでいないと、あちこちで独立騒動になって収集つかないもんね、、、。だとしても、プーチンは今回のことで無傷ではいられまい。終結後も、侵攻以前と何も変わらなければ、それは地球の未来の敗北だ。

 話を本作に戻すと、エレナの部屋がとても素敵だった。古い集合住宅で、外観はかなりボロっちいけど、部屋の中はキレイで心地よさそうだった。本作は、ほぼエレナの部屋だけで話が進むし、展開もゆったりで、序盤はちょっと退屈だったけど、ミランダが登場してからは緊迫感があって面白かった。

 先日までのジョージア映画祭では、ゴゴベリゼ監督の若い頃の作品もかかっていたらしい。彼女の両親はスターリンに粛清されており、父親はそれで亡くなっているとのこと。母親は映画監督の芸術家だったが、強制収容所から生還した後は映画を撮らなかったという。監督自身は、ソ連時代に製作した映画が、ソ連映画祭で賞を何度かとっている。

 

 

 

 

 

 

 

 


いつの時代もどこの国でも、プロパガンダに真っ先に利用されるのが、メディアと芸術。

 

 

 

 

 

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