映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

去年の夏突然に(1959年)

2021-12-25 | 【き】

作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv2301/


  以下、Amazonよりあらすじのコピペです(青字は筆者加筆)。

=====ここから。

 1973年。南部ニューオリンズの州立病院外科医クックロウィッツ(モンゴメリー・クリフト)は、ビネブル夫人(キャサリン・ヘプバーン)から莫大な資金の提供を条件に、夫人の姪であるキャサリン(エリザベス・テーラー)にロボトミー手術を施すことを依頼される。

 キャサリンは、ビネブル夫人の息子セバスチャンが“謎の死”を遂げて以来、記憶をなくしてしまったというのだ。

 しかし、クックロウイッツは彼女と接していくうちに手術の必要がないと判断し、そして次第に彼女の忘れ去った記憶を甦らせることに成功するが・・・。
 
=====ここまで。
 

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 もう年末。オミクロン株とやらは市中感染しまくっている模様で、しかも年末年始の民族大移動により、きっと年明けはまた感染爆発……なんでしょうねぇ。あとどのくらい続くのやら。

 さて、本作は、あのテネシー・ウィリアムズの戯曲が原作の映画です。なぜ本作を見る気になったかというと、先日、岡田将生主演の舞台「ガラスの動物園」を見たときに購入したパンフのコラムで、本作について“ロボトミー手術”つながりでチラッと触れていたからです。

 テネシー・ウィリアムズというと、私の中では『欲望という名の電車』なんですが、私、この『欲望~』が嫌いでして。嫌いな理由は、ストーリーとか何とかよりも、マーロン・ブランドに負うところが大きいのですが、、、。なので、テネシー・ウィリアムズ作品にはあまり食指が動かないのですよね。ただ、「ガラスの動物園」は、戯曲を本で読んでいて、歪んだ母子関係の話が他人事とは思えず、、、。

 テネシー・ウィリアムズの実姉ローラもロボトミー手術を受けて、術後は亡くなるまで施設で過ごしたとのことですが、この手術には問題が多くて、短い期間で廃止になっている、、、というようなことを、BSの「フランケンシュタインの誘惑」でも紹介されていましたね。

 「ガラスの動物園」は、ローラをモデルにしたといわれるローズの話が縦糸となっています。今回初めて舞台を見たのですが、文字で読んでも十分痛い話なんだけれど、演劇として見せられるとさらに痛い、、、というより、心臓を掴まれるような苦しさを覚えるものでした。

 本作も、そういう系の映画だろうとは想像していましたが、想像をはるかに超えるエグくてグロい、怖ろしい映画でした。


◆タブー事項満載

 本作は、ジャンルでいえばサスペンスになるのかな。セバスチャンが何で亡くなったのかが明かされていくという。みんシネでもサスペンスになっている。みんシネでの評価は低くて、レビューもごもっともな意見なんだけど、私は割と面白く見た次第。

 とにかく、キャサリン・ヘプバーン演ずるビネブル夫人が登場シーンからもう異様過ぎで、一見してヤバい人だと知れる。そして、案の定、息子のセバスチャンとの関係がマザコンを超えた、疑似近親相姦ではないかと思わせるものであることが徐々に分かってくる。

 けれど、本作のおぞましいのは、実はセバスチャンは、そんな母親との関係を、自分のある目的のために利用していただけであり、それが結果的に彼を陰惨な死に追いやる原因となっていた、、、ということ。これが終盤に明かされる。

~~~以下ネタバレです。~~~

 本作が制作されたのは1959年だけど、よくこの時代に、こんな内容の映画が作れたな、、、と思う。今でもちょっと描き方を考えてしまう内容だろう。

 つまり、セバスチャンは(はっきりとは明かされないが)同性愛者であり、その死因は、旅先の男達に“食い殺された”(つまりカニバリ=人肉食)のである。

 これが、終盤、リズ演ずるキャサリンの告白で明かされる。そのものズバリではなく、匂わせるセリフと描写なので、理解するのに少々時間を要する。

 セバスチャンがそれまで母親のビネブル夫人と母子密着で度々外国に旅行していたのは、美しいビネブル夫人に釣られて寄ってくる男たちを狩るのが目的だったから。今回は、もはや中年になったビネブル夫人ではその役割を期待できなくなり、セバスチャンは、姪の若い女性キャサリンをお供に選んだというわけだ。

 当の夫人は、息子のそんな性癖には気付いておらず、クックロウィッツの問いかけにも、セバスチャンについて「あの子は童貞だった」などと言う。ヘプバーンの異様な外見とエキセントリックな演技が、セバスチャンがキャサリンと旅行に出たのは、母親である夫人との距離が近すぎて逃れたくなったからだ、、、と観客をミスリードする。

 さらに、ビネブル夫人がキャサリンにロボトミー手術をするようクックロウィッツに頼んだのは、キャサリンがセバスチャンの死に接したショックで精神に異常を来したからであり、あくまでキャサリンのためと思わせる。

 ……が。

 夫人はセバスチャンの性癖に、実は気付いていたのでしょ。まさか息子がカニバリで殺されたとは知らなかったけれど、ゲイであることが死の遠因であることは察しており、それをキャサリンに知られたことを夫人は分かっていた。息子が同性愛者であることが公になるのを恐れていたのだろう。だから、ロボトミーでキャサリンを廃人にしたかった、、、と私は見た。

 けれど、さしものビネブル夫人にとっても、我が息子が、男たちに食い殺されたことの衝撃が大きすぎたのか、夫人の方が本当に発狂してしまう。

 ……なんと怖ろしい話だ。


◆その他もろもろ

 終盤、おぞましい告白をするキャサリン役のリズは頑張っているんだろうけど、演技は単調で芝居がかっており、正直なところ怖さは半減。その告白シーンに、リズが透け透けの水着を着せられ海から上がって来たり、セバスチャンが男たちに襲われたりする回想シーンが被るという演出がなされており、リズの肉感的な映像とあまりにえげつない話の内容に鼻白む感じもありつつ、おぞましさにウゲゲ、、、となって、正直なところ、鑑賞後感はかなり悪い。

 セバスチャンが襲われるシーンはあのオカルト映画『ザ・チャイルド』を思い出してしまった、、、。

 一方、医師クックロウィッツを演ずるモンゴメリー・クリフトも、病んだキャサリンを救う有能な精神科医(脳外科医?)という感じには見えず、これは演出がイマイチなのではないかという気がする。

 とはいえ、ヘプバーンの演ずるイッちゃっているビネブル夫人は圧巻。屋敷内のエレベーターに乗って現れる冒頭の登場シーンからして異様だが、あまりに異様でむしろ笑える。

 キーパーソンであるセバスチャンは後ろ姿とか、足だけしか映らず、顔は映らない。でも、私のイメージするセバスチャンより、ちょっとゴツそうな感じだった。すね毛が結構モジャモジャやったし、、、。

 テネシー・ウィリアムズ自身が同性愛者であり、実の姉がロボトミー手術を受けることを止められなかったことを生涯悔やんでいたというが、本作を見ると、そのことが彼自身の創作活動にいかに大きく影響しているかが分かる。

 

 

 

 

 


本作の邦訳戯曲は出ていないみたい、、、残念。

 

 

 

 

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2 コメント

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ゆく年くる年 (松たけ子)
2021-12-31 00:19:37
すねこすりさん、こんばんは!
明日で2021年も終わりですね!
岡マのガラスの動物園、詳しいご感想を早く拝聴したいです(^^♪岡マ、どうでしたか?彼、美しいだけでなく年々いい役者になってきてますよね~。こないだ駆け込みで観た「ドライブ・マイ・カー」の彼もすごくよかったです。私も新年、大阪まで岡マに会いにいきます(^^♪
去年の夏、ゲロゲロなおぞましい内容ですね!そういうの好きかも(笑)好きな俳優でリメイク映画化、または日本でも舞台してほしいかも。モンゴメリークリフトの役は誰がいいでしょうか。
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Unknown (すねこすり)
2021-12-31 17:48:32
たけ子さん、こんばんは!
あと数時間で今年も終わり…。年賀状書かなくちゃ(^^;
岡マくんの「ガラスの動物園」の感想文は書く予定ないので、ここでザックリ書いちゃいます。
とにかく、見ていて心臓が痛くなる、苦しくなるような舞台でした。特に後半のローラとジム・オコナーの2人のシーンはキツかったです。ストーリーを知っていても、実際に俳優さんたちの演技で間近に見せられると、ヒリヒリして来ました。
4人の俳優さんたちは皆さん熱演だったけど、特に凄かったのは麻実れい。もう、圧倒的でした。彼女のいるシーンでは、痛いシーンながらも笑いも起きてました。
意外に倉科カナが上手いなぁと思いました。
岡マくんは狂言回しな役なので一番難しいかもですが、膨大なセリフでちょっと噛んでましたね。回を重ねて上手くなって行くんだと思います。私が見たのは2日目だったので。
大阪での感想、是非お聞かせください♪
去年の夏、舞台化したら、これまたキツい舞台になりそう……。配役、日本人俳優で考えてみました。
キャサリン・ヘプバーン→大竹しのぶ(ベタ過ぎ?)。いや、これこそ麻美れい様かも。
リズ→(引退撤回したら)沢尻エリカ。二階堂ふみもよいかも。エキセントリックな演技がハマる人でないと…
モンティ→岡マ(若すぎるかな)。堤真一か内野聖陽が良いなぁ。舞台出身の芸達者が良いです。
たけ子さんならどんな配役にします?
来年こそ旅行に行けますように! 良いお年をお迎えください♪♪
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