映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

秘密の花園(1993年)

2021-05-09 | 【ひ】

作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv10254


 大勢の召使にかしずかれながらも、両親には愛されることなくインドのお屋敷に暮らしていた少女メアリー。ある日、インドを襲った大地震により、突然両親を失い、イギリスにいる伯父クレイヴン伯爵の下へ引き取られることに。

 海を渡り、汽車に乗り、馬車に揺られてようやくたどり着いたクレイヴン伯爵の屋敷は、荒れ野にたたずむ寂しい屋敷だった。高慢で誰にも心を許さないメアリーだったが、召使のマーサの大らかさに少しずつ心を開くようになる。

 屋敷には10年前に封印され、誰も入ってはならない花園があり、メアリーは花園の入り口と鍵を見つけてその花園へと足を踏み入れる。荒れ果てた花園をマーサの弟ディコンと共に再生させようとするメアリー。退屈に思えた屋敷での生活が楽しくなって来たある日、屋敷内のどこからか、子供の泣き声が聞こえてきて、気になったメアリーは泣き声の正体を探しに行くのだが、、、。


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 ご存じ、バーネット原作の映画化。アグニェシカ・ホランドがファンタジー??という意外な組合せに興味を引かれてレンタルしてみました。


◆「少年少女世界の名作文学」(小学館)

 メアリーが孤児になった原因が、インドを襲った大地震、、、となっていて、大地震??と疑問になり、本作を見終わった後、原作を読み直してみたら、やっぱり地震じゃなかった。コレラの大流行だった。

 原作と言っても、子ども時代に読んだ、小学館の「少年少女世界の名作文学」シリーズに収録されているもの。『モンテ・クリスト-巌窟王-』(2002)の感想文で、やはりこのシリーズのことを書いたんだけど、勘違いでゼンゼン別のリンクを貼っておりました、、、。

 それはともかく、このシリーズは全50巻で小学生時代にハマっていた。全巻読破してはいないけど、まあまあ読んだ記憶があり、愛着もあったのでいずれは親から譲ってもらおうと思っていた。が、大学進学で上京して何年かしたら、親から電話で「あの文学全集、場所とるで近所の小学校に寄付したわ。喜んでもらって良かったわ」という衝撃の事実を聞かされた。がーん、、、、「私、欲しかったのに……」とは言えなかった、、、。

 もう手元には置けないと思うと、無性に欲しくなり、、、と思いながらウン十年。ネットオークションなどがない時代は、古本屋で見かけても、全巻揃って十万円以上の値がついていることもしばしばで、到底手が出なかった。ネットオークションがメジャーになってからは時折見かけていたものの、アナログ人間にとってはどうもイマイチ信用ならん、、、という精神的なハードルが災いして、なかなか入手に至らなかった。そもそも、全巻そろって出品されていることはあまりなかったしね。

 でも、昨年の巣篭りで時間もあったので、ヤフオクを漁っていたら、なんと全50巻を24巻にまとめたものがあるのを発見! しかも値段もかなりの格安。画像を見ると少し傷みもあるけれど、十分キレイ。何しろ、50年前の本ですからね、、、。意を決し、入札に参加し、無事落札 長年の願望、、、「棚に全巻並べたい」をようやく実現いたしました。

 全50巻でも1冊ずつはそれなりの厚みがあったのに、全24巻て、内容を端折っているのでは?と思ったけれど、どうやら全部網羅されている。装丁も記憶のまま。唯一違うのは、1冊ごとのカバーがないこと。でもまあ、それは仕方がない。内容も装丁も、おまけに状態もかなり良いものを入手でき、やっと手元に“取り戻せた”気分。“手元にあって、手に取りたいときに手に取れる”ことが大事なのよ、本は。

 ランダムに読み直しているけど、子供用にリライトされているとはいえ、大人が読んでも十分耐えられる内容で、やっぱり素晴らしい。「秘密の花園」が収録されている巻には、ほかに、バーネットの「小公子」「小公女」も収録されており、村岡花子が解説を書いている。
 
 40年ぶりくらいに読み直してみて、本作は割と原作に忠実に映像化されていると分かりました。


◆子供は最強。

 原作では、メアリーは「醜い子」とされているけれど、それは顔が不細工という意味ではなく、性格がねじくれていて、それが顔に出ているということなんだと思う。演ずるケイト・メイバリーは最初からすごく可愛い。インドからイギリスに来てマーサと仲良くなるまでは仏頂面だったけど、仏頂面も可愛かった。

 このマーサが実に良い子。大らかで優しく思いやりのある子で、こんな子と四六時中一緒にいれば、メアリーの性格もだんだん真っ直ぐになっていくというもの。徐々に、荒れ野での生活に馴染んで行くメアリーもまた可愛い。

 メアリーが花園を見つけるときに出会うのが、マーサの弟ディコンなんだが、このディコンも実に良い子なんだよねぇ。おまけに優しくて賢い。原作では、マーサとディコンの母親が非常に賢い人だと書いてあった。……納得。で、そのディコンとメアリーは仲良くなって、花園を再生させていくのだけれど、さすがイギリス、実に美しく変貌していくので、これだけでも目の保養になる。

 屋敷で聞こえる泣き声の主は、クレイヴン伯爵の長男コリン。病弱でベッドで寝たきり、部屋から一歩も外に出ない少年。メアリーと出会って、外の世界に興味を持ち、部屋から出て花園へ行き、歩けるようになる。ついでに、せなかにこぶのある(原作では“せむし”とされている)クレイヴン伯爵も、元気になる。めでたしめでたし、、、。

 というわけで、ストーリーとしてはたわいないお話でほとんどファンタジー。病弱で歩けない子が、外気を吸って元気になり歩けるようになるというのは、ハイジとも似ている。ハイジは1880年に発表されているようなので、本作の原作(1911年)より大分前になる。

 ただ、親の愛情を受けられない子供が、思いがけない環境の激変によって、人との交わりに歓びを感じ、人を愛することを知って行くというお話は、定番とは言え、いつの時代も人の心に響くものなのだと思う。


◆原作より良いラスト。

 で、原作を読んでみて、本作のラストは良い方に補正され、作品としてむしろ原作より完成度が高くなっているかも知れないと感じた。

 というのも、原作のラストはメアリーの存在がまったく無視されているのだ。コリンが歩けるようになり、長旅に出ていたクレイヴン伯爵が屋敷に戻って来てからは、ほとんどメアリーは話に出て来なくなってしまう。

 けれども本作は、ラストまできちんとメアリーの存在感をクレイヴン伯爵とのシーンで見せていて、今後のクレイヴン伯爵とコリン、メアリーの幸せな関係性を予感させるエンディングになっている。見ている者としては、このラストの方が遥かに救われるし幸福感を感じられると思う。

 原作より映画の方が優れているというケースは少ないと思うが、本作は、原作よりも鑑賞後感(読後感)は大分良い。リライトされていない原作を読んでみなくては。

 家政婦長とされているメドロックさんだが、彼女は多分ガバネスだったんではないかなぁ。そのまま屋敷に居ついて家政婦長になっているのではないか。あのクレイヴン伯爵への態度を見ていると、ガバネス独特のものを感じたのだけれども、、、。そのメドロックさんを演じていたのは、あのマギー・スミスさまでございます。彼女が出てくるだけで画面が引き締まる感じがしたわ。

 メアリーも可愛かったが、私が一番気に入ったのは、ディコン♪ ホントに可愛い。動物たちとも仲良しという設定で、小鹿やウサギ、小鳥などいっぱい出てきて、それも楽しい。あんなシークレットガーデン、あったら私も毎日入り浸りたい、、、。

 背中に瘤があり、めったに屋敷に帰って来ないクレイヴン伯爵だが、実際はフツーにジェントルマンである。原作でもほぼ同じような描写だった。コリンを産んですぐに愛する妻が亡くなったから、コリンと向き合うのが辛い、、、という理由で旅ばかりしているという設定なんだが、コリンが歩けるようになったら、父親の自覚が芽生える、、、って随分勝手なお父さんだなー、と思ってしまった。まあ、気持ちは分からんじゃないけど、放っておかれたコリンが気の毒過ぎる。

 コリンも可愛かった。……けど、やっぱり私がメアリーだったら、ディコンのこと好きになっちゃうなー、多分。……てか、この3人の少年少女は、成長したらかなりマズい三角関係に発展しそうな気がするゾ。『執事の人生』みたい!(時代背景がゼンゼン違うけど) それはそれでロマチック映画になりそうだ。二次創作とかしたら面白いかも、……しないけど。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

原作の世界観を美しく再現した逸品。

 

 


 

 


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