映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

パブリック 図書館の奇跡(2018年)

2021-05-05 | 【は】

作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv71288/


以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 米オハイオ州シンシナティ。公共図書館の実直な図書館員スチュアート(エミリオ・エステヴェス)は、常連の利用者であるホームレスから「今夜は帰らない。ここを占拠する」と告げられる。大寒波の影響により路上で凍死者が続出しているのに、市の緊急シェルターがいっぱいで行き場がないというのだ。

 スチュアートは約70人のホームレスの苦境を察して、3階に立てこもった彼らと行動を共にし、出入り口を封鎖する。

 その行動は“代わりの避難場所”を求める平和的なデモだったが、政治的なイメージアップを目論む検察官の偏った主張や、メディアのセンセーショナルな報道によって、スチュアートは心に問題を抱えた“アブない容疑者”に仕立てられる。

 やがて警察の機動隊が出動し、追い詰められたスチュアートとホームレスたちは驚愕の行動に出る……。

=====ここまで。


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 5連休もあっという間。スーパー変異株が猛威を振るっているらしいインドからの人の流入は制限付きながら続いている様で、しかも連休中のこの人出。来週以降、日本もカオスになるんじゃないですかね。もう、医療現場でコロナ対応されている方々が気の毒で仕方がないです。政府からは丸腰のタダ働きを強いられ、おまけに差別までされる。どーなってんですか、我が国は。……と、コロナの愚痴は書きだすとキリがないのでこのくらいにしておきます。

 本作は、昨年、劇場公開されていたんだけど、コロナもあって劇場までは行く気になれませんでした。平時なら多分見に行っていたと思いますが、、、。図書館が舞台というだけで、何だかそそられるんですよね~。で、このほどDVDでようやく見てみた次第です。


◆ちょっと余談。

 本作は、ホームレスの人々がメインで活躍するオハナシなんだが、ちょうど先日NHKで女性ホームレスが殴られて殺害された事件について取り上げていたのを見た。亡くなった女性の半生を辿る内容だったが、生活保護を申請すると、遠方に暮らす身内に迷惑がかかると思って申請しなかったんだろうと思われる。折角のセーフティネットが「扶養照会」があるばかりに機能しないという、、、。

 生活保護もだけど、眞子さんの結婚話のゴタゴタでも感じるが、日本人って(というか、外国の例は知らんが)、すぐに「税金!」「税金!」って言うんだね、、、。原資は税金なんだから、お前ごときが勝手に使うな!という趣旨で。なのに、選挙の投票率は異様に低い。国政選挙でも50%切ったりするし、地方選挙なんか30%切ったりとか、、、。それ、選挙として有効なんですかレベルなのも結構ある。一方では有権者としての権利を(というか、義務に近いと思うが)放棄しておいて、税金税金ってさあ、、、。税金をどう使うかを決めているのは、選挙で我々が選ぶ人たちなんですけど? 使い方が気に入らないのなら、きちんと投票して意思表示すべきやないの?? 

 税金税金大合唱している人たちには、三木義一著『日本の納税者』(岩波新書)をお読みになることをお勧めするわ。一納税者として、目から鱗が100枚くらい落ちるかも。生活保護やら眞子さんの持参金(1億4千万円らしい)なんて目くじらを立てる話じゃないと思い知ることになるのでは。

 それはともかく、、、。生活保護にシビアな目線を向ける人って、何なんでしょう? 不正受給に腹を立てているのか? でも不正受給率って1%にも満たない。あるいは、自分だけはお世話にならんと思ってるのかな。予測不能な事態が起きて困窮してしまうことが、自分の身の上に起きない保証などどこにもないのにね。あんな悲惨な震災やコロナを経験してもなお、そう思えるって凄いよなぁ。「自己責任論」ってやつですかね。

 その自己責任論が、アメリカでは日本よりも支配的だと聞くけれども、実態はどうなんでしょう? コロナ禍では、日本より遥かにマシな補償がされているようだけど。……まぁ、よく知らないが、本作を見ると、なかなか厳しい状況には違いないらしい。


◆ユーモアに満ちた“コメディ”

 ホームレス用のシェルターはあるけれど、寒い日はやっぱり一杯になってしまうらしい。あぶれた人たちが図書館に暖をとりに来るわけだ。でも、図書館は、毎日閉館時に全員を退館させる。ホームレスの宿泊はさせない。

 本作で、ホームレスの集団が大挙して図書館に宿泊を求めたのは、図書館の役割を踏まえてのこと。日本の図書館よりも公共性が高く認識されており、大寒波で凍死のリスクがある屋外からの避難所として機能してくれてもいいんじゃないの? ということだろう。だから、タイトルに「パブリック」と入っているんだろう。原題はまんま“The Public”である。

 エミリオ・エステヴェス演ずるスチュアート自身も、過去にホームレスの経験があり(アル中だったらしい)、ホームレスの要求も理解できる立場。穏当なデモだったのに、なぜか「立てこもり事件」にされてしまい、スチュアートが首謀者扱いになる。この辺、メディアの横暴ぶりが描かれる。

 テーマはシリアスなんだけれど、本作の持つ雰囲気は概ねコメディと言っても良いくらいユーモアもある。ホームレスの一人ビッグ・ジョージ(チェ・“ライムフェスト”・スミス。この方、有名なラッパーだそうな)が、話をするときに相手の目を見ようとしないのが不審で、スチュアートが「何で下ばっかり見てるんだ?」と聞くと、「オレが見るとビームで相手を殺してしまう」とジョージは大真面目に言うシーンなど、思わず噴き出した。ホームレスたちの中には、精神疾患を持っていると思しき人も結構いるのだ。

 あと、スチュアートとホームレスたちが籠城している部屋にピザ屋がピザを届けに来るシーンでは、警察が来たんじゃないかとホームレスたちが身構えるんだけど、ここでスチュアートはピザ屋にピザの値段を質問することで、警察官ではないと確かめる。これに繋がる伏線は、序盤でちゃんと張られている。伏線と言えば、冒頭で巨大なシロクマの剥製が出てくるんだけど、それが「行き場のないシロクマを預る」という理由からで、まさに行き場のないホームレスを預るという本作のテーマの伏線になっているとも言える。

 ……という具合に、結構細部まで気配りのされた、なかなか気の利いたシナリオだと思う。


◆女性問題とかもろもろ、、、

 ネット上では、女性の扱いがマズい、、、という論評も散見され、確かにそれは一理あるなぁと思う。籠城するホームレスの中に女性が一人もいないし、出てくる女性たちも完全に脇だからね。ただ、ラストのオチから言って、女性のホームレスを入れられなかったんだよね、多分。そもそも、男しか頭にないからああいうオチになった、、、という意地悪な見方もできるが。

 とはいえ、スチュアートと交渉する警察官や検察官を女性にすると、それはそれでまた叩かれる要因になりそうではあるし、ここは難しいところだろう。エミリオ・エステヴェスがそこに無頓着だったとは思えないので、分かった上で敢えてこのシナリオになったんだと思われる。スチュアートと序盤で寝る女性や、図書館職員の同僚女性などをもっと上手く使えなかったのか、という指摘もあったが、まあ、一応彼女たちをシナリオ上ではちゃんと使ってはいるんだよね。解決の直截的な糸口にはなっていないだけで。

 前述したとおり、東京では女性のホームレスが殺害されるという事件も実際起きているわけで、女性のホームレスの存在が無視されていいはずはない。そういう意味では、女性キャラたちがメインに絡んでこないことより、女性ホームレスが一人もいなかったことの方がマズいだろう。必然的にあのオチもやや難ありということになる。

 それを踏まえても、私はエステヴェスが描きたかったことを考えると、あれはあれで良いのではないかと思う。深刻さを笑いに包んで表現するには、格好のオチではあるからね。女性のホームレスだけ例外、、、ってことにすると、それはそれでまた火種になるだろう。

 今回、エステヴェス監督作を多分初めて見たんだけど、彼は才能もあり、とても頭の良い人だと感じた。描き方を間違えるとマズいテーマを、ユーモアを忘れず、しかし、ツボはきちんと押さえたシナリオを書き、かつ監督してエンタメ映画に仕上げている。どうも弟の問題児イメージが強いので、その兄も、、、というイメージを勝手に持っていたが、もの凄い偏見だった。反省、、、。彼の監督作、他にも見てみたい。

 

 

 

 

 

 

 

スチュアートの部屋(ラフカディオ・ハーンの全身写真が飾ってある)がイイ!!

 

 


 

 


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