映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

永い言い訳(2016年)

2017-07-26 | 【な】




以下、上記リンクよりストーリーのコピペです。

=====ここから。

 “津村啓”というペンネームでテレビのバラエティなどでも活躍する人気小説家の衣笠幸夫(本木雅弘)は、ある日、長年連れ添った妻・夏子(深津絵里)が旅先で突然のバス事故に遭い、親友とともに亡くなったと知らせを受ける。

 だが夏子とは既に冷え切った関係であった幸夫は、その時不倫相手と密会中。世間に対しても悲劇の主人公を装い、涙を流すことすらできなかった。

 そんなある日、夏子の親友で同じ事故で亡くなったゆき(堀内敬子)の遺族であるトラック運転手の大宮陽一(竹原ピストル)とその子供たちに出会った幸夫は、ふとした思いつきから幼い兄妹の世話を買って出る。

 保育園に通う灯(白鳥玉季)と、妹の世話のため中学受験を諦めようとしていた兄の真平(藤田健心)。子供を持たない幸夫は、誰かのために生きる幸せを初めて知り、虚しかった毎日が輝き出すのだが……。
 
=====ここまで。

 「鉄人衣笠」と同姓同名であることで生き辛さを感じているという津村、、、。そんなもんかねぇ、、、。山本浩二、と同姓同名でも、別に何とも感じない人の方が多くない? 実際、同姓同名の有名人、いらっしゃいますし。

   
☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜


 楽しかった旅の帰りの飛行機で見た作品。眠くなるだろうと思って見始めたけど、ならなかった。

 西川美和監督・脚本作品を見るのは、これが『ゆれる』に続いて2作目。『ゆれる』は、面白かったし、インパクトもあったけど、あんまり好きじゃないなぁ、、、と思ってしまった。本作も、公開時に話題になっていたけれど、まあ、少なくとも劇場まで行って見たいとは思えなかったので、今回、機内で見られるってことで、見てみました。


◆似たもの夫婦

 ネットの感想等をザッと拾い読みしたところ、結構、モックン演ずる津村について、あんな深津絵里演ずる夏子みたいな素敵な奥さんがいるのに“クズ”だの“ゲス”だの、かなりヒドイ言われ様なのが目についたんだけど……。

 夏子の出番は冒頭だけだから、彼女がどういう人なのかは、その後、津村が少し語るエピソードくらいからしか分からない。分からないが、私は、津村がそこまでクズでもゲスでもないと思うのよねぇ。

 夫婦なんてのは、良くも悪くも相乗効果なわけで、津村があんななのは、夏子の影響も少なからずあるってこと。夏子の何がどう影響して、津村がああなったのか、詳細はもちろん分からない。でも、間違いなく、夏子の何かが影響し、津村の一部を形成しているわけで、夫婦のどちらかが上等でどちらかがゲスなんてことはあり得ない。

 実際、私は、冒頭の夏子が津村の髪を切るシーンを見て、夏子に対し好感を持てなかった。なんかイヤな女だなぁ、というのが第一印象だったもの。なんというか、夫に対する上から目線的なものを感じたのよね。

 津村は、自分が二浪して入った大学に夏子は現役で入ったというエピソードに始まり、結婚に至るまでのいきさつを語るシーンがあるんだけど、そこで、夏子が亡くなった今に及んで夏子に対してすごく劣等感を抱いていることが分かる。ホントに良い夫婦関係が築けていたら、そんな分かりやすい部分の劣等感なんか克服できるはずで、つまり、夏子は津村と一緒にいることで彼の劣等感を肥大させる妻だったのよね。そして、それはあの上から目線に表れていたと思う。

 そして、夫が嫌がること(自分の出演しているTV番組を大音量で見たり、本名で呼んだり、、、)を敢えてしているところも、イヤだなぁ、と。「それはイヤだからやめてくれ」と言っていることを敢えてする配偶者、、、。ムカツクわぁ~~、私なら。張り倒したくなるかも。

 ……だから、こういう女が妻だと、夫がああなるのも分かる気がする、というかね。

 でも、ネット上の感想だと、夏子は良き妻、というのが多数派な感じなのよねぇ。……どこが?? と思ってしまう私は、やっぱし男に甘いのか?

 別に、夫が不倫に走るのは、妻に非があるから、ということを言いたいのではありません、念のため。

 津村って男は、自信がないくせにプライドばっかし高くて、自己愛が過剰な男で、まあ、ハッキリ言って魅力的とは言いがたい。でも、物書き(特に小説家)なんかになる男は、例外なく“自意識過剰のナル男”だと思うので、そういうところがカワイイと思う女も、まあいるだろう。そしてそういう女もまた、自尊心をくすぐられるんだろうと思う、そういう男が自分の伴侶であることに。だから、似たもの夫婦だと思うわけ。


◆もう愛してない、ひとかけらも。

 津村は、亡き妻のスマホに、未送信の自分宛のメールを見つけるんだけど、その文面が「もう愛してない、ひとかけらも」。、、、なんだかイヤな感じ。

 これを見て、津村はカッとなってスマホを壊しちゃうんだけれども、、、。このメッセージについて、どう解釈するかというのが、ネットのレビューでも色々書かれていました。

 私は、割とそのまんまじゃないかなぁ、と思ったクチです。あんな上から目線の妻に、夫への愛情があるようには思えなかったから。そして、そういうメールを書く一方で、ホントは「オレにはまだ愛は残っている」と夫に言って欲しがっているんだと思う。そういう女な気がする。

 自分が愛してないのはアリでも、相手が自分を愛していないのはナシ、ってやつ。

 そして、これは夏子だけじゃなくて津村も同じなわけでしょ。やっぱり、夫婦は合わせ鏡とはよく言ったモノです。

 こんな夫婦、イヤだねぇ。何で一緒にいるのよ、と思う。私が夏子なら、さっさと離婚するわ。離婚しないってことは、まだ未練があるから、、、という解釈もアリだろうけど、離婚するのもメンドクサイってやつだったんじゃないのかな、という気がする、この夫婦については。


◆また、子どもの有る無しか、、、。

 津村は、子どもを欲しくなかった。自分の遺伝子を受け継ぐ存在を世に送り出すなんてイヤだ、という感覚、私にはよく分かる。私もそうだから。子どもを欲しくない、という人間は、まあほとんどの場合、自己チューだろうね。子どもを欲しがる人が自己チューじゃないとも思わないけど。

 酔っ払って、それを、よりにもよって灯の誕生会の席でぶちまける津村。まあ、サイテーなんだけど、もっとサイテーなのがその後の展開。

 竹原ピストル演ずる陽一が、あの調子で言うわけ。「なっちゃんはさ、子ども、欲しかったんじゃねーの? 欲しかったと思うよ!!」って。

 このシーンで、私はげんなりしました。夫婦の問題に、どうして子どもが絡まなきゃいけないのかね。大体、そんなデリケートな問題に、第三者が意見すること自体、おこがましいだろ、って思う。つまり、陽一に、夏子が子どもについてどう思っていたのかなんてコメントする資格はないのよ。それは津村と夏子の夫婦にしか分からないんだから。こういうことにズカズカ踏み込む辺りは、陽一らしいけれども。

 シナリオ的に、そこに触れずにいられなかったのかなぁ? そんなことないと思うんだよなぁ。ギクシャクしている夫婦で、子がいないという設定。そして、ギクシャクの遠因の一つが、子がいないこと。まあ、分かりやすいけど、分かりやすすぎでつまんないよなぁ。そういう次元じゃない部分でギクシャクさせたら?

 いい加減、女は子作りマシーンっていう固定観念から脱却したシナリオがあってもいいんじゃないの?? 子どもの有る無しを超越した夫婦=一組の男女の物語じゃダメなのか??


◆「転」「結」が、、、残念。

 灯の誕生パーティの一件後、陽一親子との関わりが断たれて、津村は、また孤独で自堕落になるんだけど、そんなこじれた人間関係を一気にラストへ向けて解決するために起きたことは、、、。

 陽一の睡眠不足から来た自損事故。

 なんだかなぁ、、、。事故で全部一発解決させちゃうなんて。ある意味、禁じ手だよね。しかも、陽一の怪我は大したことない、みんながちょっとずつ反省するには、ちょうどいい加減の事故。

 そうなる予感はあったけど、その通りに展開させるなんて、シナリオとしてはかなり残念。やっぱり観客を裏切る展開にしてくれなくちゃ。これで本作は一気に凡庸になったと思います。

 事故後、陽一親子の関係も修復、陽一と津村の関係も修復、津村は書けなかった小説が書ける様になる、、、。あー、はいはい、よござんしたね。


◆印象に残るセリフ

 タイトルの『永い言い訳』というのは、なかなか良いなぁと思います。余所の家庭の子守をして、罪滅ぼししている様に見える津村が切ない。自分のマネージャーにも言われちゃうしね。「子育ては男の免罪符」なんて。上手いセリフ。

 津村が行き着いた「人生は他者である」だけれど、、、。なるほどな、が半分、どういう意味? が半分、、、という感じ。

 確かに、他者との関わりがあって初めて、人生と言える自分の物語は形成されると言えるだろう。けれども、自分の存在は、他者とは関係なく既に絶対的なモノであることも真理なわけで。人は一人では生きていけない、ってことを哲学的フレーズにするとこうなるのかしらん。

 でも、本当に人は、、、一人では生きていけない、、、んでしょうか?? 津村が夏子とあのまま夫婦を継続していて、互いに心は全く通わなくて、一緒にいても孤独で、それは、一人で生きていることにはならない、、、んでしょうね。夏子とは関わらなくても、愛人やら、編集者やら、マネージャーやらとは関わって生活するんだもんね。

 ま、とにかく、陽一が事故るまでは、結構イイな、と思って見ていたので、終盤は尻すぼみでガッカリでした。

 
 






灯を演じた白鳥玉季ちゃんに助演女優賞!!




 ★★ランキング参加中★★

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 湯を沸かすほどの熱い愛(201... | トップ | 愛する映画の舞台を巡る旅Ⅰ ... »

コメントを投稿

【な】」カテゴリの最新記事