子役ベイビー・ジェーン・ハドソンは大の人気者。彼女の等身大の人形が飛ぶように売れるほど。ステージパパはジェーンの機嫌を取る始末で、その反動か、ジェーンの姉・ブランチにはやけに辛く当たる。ブランチは屈辱的な扱いに理不尽な思いを募らせ「一生忘れない!!」と心に誓う。
大人になった2人は女優になり、方やジェーンは大根役者、ブランチは銀幕のスター。2人の立場は幼い頃と完全に逆転していた。
それからウン十年。老いてアル中のジェーン(ベティ・デイヴィス)は、脚が不自由になって車椅子生活を送るブランチ(ジョーン・クローフォード)の世話をしている。大きな屋敷に姉妹2人暮らし。その大きな屋敷は、かつて大スター時代にブランチが購入したもので、姉妹はブランチの過去の稼ぎで食いつないでいたのだ。
ブランチが車椅子生活になったのは、スターとして絶頂だったある日、車の事故で脊椎を損傷したから。以来、2人の姉妹は世間から忘れ去られ、互いに忌み嫌い合いながら共に暮らしていたのだ。
しかし、そんな負の感情に支配された閉ざされた共同生活に、遂に限界が訪れる。ジェーンは遙か昔の子役時代の栄光が忘れられず、舞台復帰を目指すのだが……。
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少し前にBSでオンエアしたのを録画してあったので、久しぶりの鑑賞。何度見ても怖ろしい映画だ……。
◆姉と妹。
あまりにも有名な本作。内容の説明はするまでもないので、感じたことをつらつらと。
初めて本作を見たとき、ジェーンは、あの歳までブツブツ言いながらも、よくぞ介護生活を何十年も続けてきたものだと、かなり違和感を覚えた。だって、あんなに忌み嫌っている姉をだよ? いくらブランチの身体を不自由にした負い目があるからと言って、私だったら1年、いえ数か月でもムリ。ましてや、彼女は、今一度スポットライトを!! と妄想しているわけで、老婆になって、実際にピアノ伴奏者を雇って復帰準備を始めたりなんかして、、、。そこまでのバイタリティがあるのなら、もっと昔に、ブランチには世話する人を付けて、自分は仕事に復帰するべく動きそうなものじゃない? と思ったわけ。
で、今回、改めて本作を見て、ちょっと見方が変わった。彼女は、ラストの浜辺のシーンで、ブランチに真相を聞かされた直後、こう言っている。
「だったら私たち、本当は仲良くなれたのね」
これを聞いて、私は、実はジェーンはブランチのことが好きだったのかな、と感じたのであります。子役時代は見下していたし、女優になってからは嫉妬や恨み辛み、醜い感情も渦巻いたに違いない。それでも、ブランチは女優としては明らかに自分より才能があったし売れていた、憧れもあったのではないか。スターが実の姉であることは、重荷でもあり誇りでもあったのかな、と。
私にも、私より遙かに優秀な(とにかくお勉強がメチャクチャ出来た)姉がいて、私の場合、ジェーンのように姉を見下すほどの“過去の実績”は何一つなかったけれども、とかく周囲に姉と比べられるのは鬱陶しいことこの上なく、姉のこと自体は嫌いではなかったものの、そういう状況を疎ましく感じたことはしばしばあった。大人になり、お勉強云々を言われなくなってからは、性格や嗜好があまり合わないこともあり、仲が良くも悪くもないフツーの姉妹だった。けれども、その後の母親のいらぬ介入により、私と姉との間には決定的な溝が出来てしまい、以来、姉のことは正直言って好きではない(例えて言えば、同じクラスにいてもイヤじゃないけど仲良くなりたい人でもない)ので疎遠になっていた。かといって、嫌いとも言い切れず、少し前に、子育てで何年間も現場を離れていたハンディを克服し、一念発起して開業したという知らせを聞いたときは心底嬉しかったし、確かに誇らしいと感じた。開業祝いも送っちゃったもんね。
ジェーンのブランチに対する感情も、だから、少し分かる様な気がしたのだ。ちょっと誇らしい気持ちがね、、、。ジェーンは私の感情よりもっと激しいものをブランチに抱いていたわけだけど、だからこそ、奥底にあったブランチに対する思いも、かなりのものだったのかも知れない、、、と。愛憎は表裏一体ですからね。
そんなふうに見てみると、あの歳まで、悪態つきながら姉の世話をしていたのも、何となくアリなのかなぁ、、、と思えてきて。いや……、実際は、虐げられているように見えたブランチ自身が、ジェーンを縛り付けていたんじゃないか、、、と思えてきたのよね。
自分はこんな身体になって、もう、女優として復帰する可能性はゼロ。引き換え、ジェーンはいくら大根とはいえ、私の妹として、例え売れなくても仕事はいくらかはあるだろう。そうすれば、例えわずかであっても誰かの注目を浴びることになる。そんなこと、絶対に許せない!! この私を差し置いて!!! ……とでも思ったんじゃないかしらん、と。
そうでなきゃ、自分を嫌っている妹に世話される生活を敢えて続けるかね? 自分の過去の稼ぎで“食わせてやっている”と恩に着せることで、辛うじて精神的な優位性を保つことも出来るし。
実際、あの浜辺のシーンで、ブランチは死にそうになりながら「私が死んだら独りぼっちになるわよ」などとジェーンに脅迫めいたことを言っている。これが彼女のホンネじゃないか?
……ということに、ようやく気付いたのでありました。だからブランチは、事故をジェーンのせいにしたのであり、それをエサに、彼女に世話をさせ、彼女の人生を奪ったのだ。自分の女優人生だけが終わりになるのはイヤだったから。彼女を道連れにしたのだわね。そんなこと、この映画をきちんと見ていれば、最初から分かりそうなもんだけど。
というわけで、本作では、ベティ・デイビスの怪演もあって、ジェーンが怖い怖いと言われるけれど、本当に怖いのは、圧倒的にブランチだった、、、、ということでした。ごーん……。
◆ベティ・デイビス VS ジョーン・クロフォード
ベティ・デイビスとジョーン・クロフォードの、実際の仲の悪さはエピソードとして聞いてはいるけど、まぁ、そんな2人を起用した監督のロバート・アルドリッチは、勇気あるよなぁ、と感心する。
ベティ・デイビスは、本作撮影時54歳くらいのはずだけど、なんかもう、70過ぎの老婆に見える。そういうメイクをしているからなんだけど、、、。とにかく、顔が真っ白で、口紅は真っ赤(……ってモノクロだから赤くはないけど、赤く見えるほど)で、縦ロールの髪で、不気味そのもの。
ジョーン・クロフォード演じるブランチも、本来なら同情される立場なんだけど、どうもこう、いけ好かない感じを醸し出している。どこか偽善的な雰囲気。これが、演出なのか、彼女自身の持つ雰囲気なのか、その辺が分からないところもちょっと怖ろしい。
ジョーン・クロフォードについては、実生活でものすごい毒親だったことの方が、私にとってはイメージが強い。彼女の若かりしスター時代を知らないし、その頃の映画も見ていないので、どうしても彼女の女優としての華やかなイメージが湧かない。けれども、本作のブランチを見て、実生活における毒親ぶりが容易に想像できてしまうのだ。ああ、彼女ならアリだな、と。しかも、最初に本作を見た印象でそう感じたということは、実は、私は最初からブランチの怖ろしさを、何となく肌で感じていたのかも知れない……。
今回再見し、あのピアノ伴奏者に関するエピソードとか、すっかり記憶から抜け落ちていて、自分でもビックリした。しかも、その母親もなかなかのクセモノだったし。
あの後、ジェーンはどうなるのか。病院に送られるのか? まあ、司法の裁きを受けたところで、もう、彼女の心が真っ当になることはないだろうからな……。そしてブランチは? 病院で手当てされて回復して、退院後は思惑どおりにあの家を売って、そこそこの暮らしをしてくのだろうか? うぅむ、やはり、この姉妹、最初からブランチに軍配が上がっていた、ってことなのかも。
怖い女、その名はブランチ。
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私もBS放送でやってたのを録画しました!引きこもり予定のお正月休みに、まったり観まくる映画のリストに入ってます♪
姉妹…いろんな映画やドラマ、小説で恰好のネタになってますよね~。兄弟と違って、やっぱ女同士って陰湿、陰険な話になりがちですよね~。同性愛だって、BLは甘美で哀切な作品が多いけど、レズは何だか狂ってるヤバいのがほとんどだし…
私には妹がいますが、特に険悪でも仲良しでもない、かといって冷ややかな関係でもなく、みたいな感じです。懐かしのドラマ「想いでにかわるまで」みたいに、一人の男を奪い合ってみたかったです(笑)。
「欲望という名の電車」のヒロインもブランチでしたっけ?あのヴィヴィアン・リーも相当ヤバい怖い女でしたよね~。
今年ももうすぐ終わりますね~。すねこすりさんの映画おさめは、どんな作品になることでしょうか。
お、たけ子さんも録画されたんですね!
確かに姉妹のドロドロも多いですけど、兄弟も結構殺し合いしてますよ。カインとアベルとか…。
そもそも兄弟姉妹は他人の始まり、なんてことも言いますしね。女もめんどくさいけど、男もかなりヤバいと思います!!
まぁ、あんな性悪姉妹が閉ざされた家で2人で暮らしてたら、ああなるのも当然でしょうかね。
え! 想い出に変わるまで、懐かしい〜! あの姉妹もヘンでしたね。特に妹が…。松下由樹も、今じゃすっかりどすこい体型になってて、こないだドラマ「ハラスメントゲーム」見てびっくりしました。
今年もあと少しですね。多分劇場には年内は行けそうもないですが、冬休み中に、ボヘミアン〜見に行こうと思っています。あれはスクリーンで見るべきかな、と。
たけ子さんの年間ベスト発表、楽しみにしてます〜〜♪