映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

苦い涙(2022年)

2023-07-09 | 【に】

作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv80744/


以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。

=====ここから。
 
 助手のカール(ステファン・クレポン)をしもべのように扱いながら、事務所も兼ねたアパルトマンで暮らす著名な映画監督ピーター・フォン・カント(ドゥニ・メノーシェ)。恋人と別れて激しく落ち込んでいたある日、3年ぶりに親友で大女優のシドニー(イザベル・アジャーニ)がアミール(ハリル・ガルビア)という青年を連れてやって来る。艶やかな美しさのアミールに、一目で恋に落ちるピーター。彼はアミールに才能を見出し、自分のアパルトマンに住まわせ、彼が映画の世界で活躍できるように手助けをするのだが……。

=====ここまで。

 
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 そんなに大ファンでもないのに、とりあえずオゾン監督の新作と聞くと、割と見に行ってしまうのであります。このお方、ほぼ年に1作品は撮っているのではない?? そんだけ資金も人も集められるのがすごいのだけど、何より、そんだけの創作意欲が湧き続けるってのが凄過ぎる、、、と思う。普通、1本撮ったら休みたくならない? まあ、そうならないところが、凡人じゃない所以なのでしょうが。

 ……というわけで、ファスビンダーの映画をリメイクしたと聞けば、なおさら見たいと思って、見に行ってまいりました(ファスビンダー監督作の感想もあります)。


◆ファスビンダー版『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』

 まずは、ファスビンダー版の感想から。あらすじは、、、

 “二度目の結婚に失敗して落ち込むファッションデザイナーのペトラ(マーギット・カーステンゼン)は、アトリエ兼アパルトマンの部屋で暮らしている。助手のマレーネ(イルム・ヘルマン)を下僕のように扱う一方、友人が連れてきた若くて美しい女性カーリン(ハンナ・シグラ)に惹かれ同棲をはじめるが……。”

 見たのは、オゾン版鑑賞後で、オゾン版のがメチャクチャ軽く感じるくらいに、ねっとり・じっとりの濃密愛憎劇で、見終わってお腹いっぱい、、、、という感じになってしまった。

 ワンシチュエーションのセリフ劇で、主人公ペトラ・フォン・カント出ずっぱりなので、若干退屈といえば退屈だけど、ペトラがかなりヤバいので私は見入ってしまった。隣で見ていた60代くらいの女性はほぼ全編爆睡していらっしゃいましたが、何かそれも分かる気がする。

 ペトラは、自身の人生の上手く行かなさを母親との関係とか、とにかく自分以外の所に原因があると思っていて、だからとことんネガティブなんだが、気位と自意識だけはめっちゃ高いので、そのアンバランスさがまんま彼女のルックスにも表れている感じ。典型的な自己愛肥大型人間。

 ペトラの部屋が何とも異様。壁一面の絵は、プッサンの「ミダス王とバッカス」だそう。終盤になると、マネキンが3体意味ありげに重なっている。また、ペトラの衣装も独特で、途中、足元がすぼまっているドレスはめっちゃ歩きにくそうである。その上半身は、それこそ、ミダス王かというような神話から出て来たよう。

 ……まぁ、終始、ペトラの自分語りみたいなセリフが延々続き、正直、ウンザリしないでもない。


◆オゾン版では、、、

 もうちょっとドロドロした感じなのかと思っていたのだけど、実に軽~いブラックコメディでござんした。結構笑えるし、あんまり考えずに見られるので、疲れている時なんかにはちょうど良いかも。

 ファスビンダー版での主人公ペトラ・フォン・カントは女性だが、本作は男性になっていて、その名もピーター・フォン・カント。このピーターを演じていたのが、「ジュリアン」で激ヤバDV男を演じていたドゥニ・メノーシェだったのだけど、本作では弾けていて面白かった。演じている本人も楽しそうだった。

 恋人(女)に失恋してヤケになっていたかと思えば、アミールという美青年(?)を見た途端に失恋などすぐ忘れたかのように浮かれたり、アミールにつれなくされて落ち込んだり、暴れたりと、まあやりたい放題。旧知の仲の女優シドニーに八つ当たりするシーンも、おぉ、そこまでやるか!という感じの壊れっぷりで笑える。

 イザベル・アジャーニは思ったより普通に歳をとっていらしていて安心しました。何か、ムリに若作りしていたらどうしよう、、、とか若干心配していたのだけど、杞憂だった。化粧は濃かったけどね。出番もあまり多くはない。

 おおむね、ファスビンダー版のストーリーを踏襲しており、人物の設定が少し違う程度。ラスト、アミールにも、助手にも見限られて一人ぼっちになるのも、オリジナルと同じ。でも、私はオゾン版の方が気軽に見ていられて好きかな。あくまでオリジナルよりは、という意味だけど。


◆ピーターとペトラ

 オゾン版の終盤、ピーターは「アミールを所有したかった。完全支配したかった」みたいなことを言うんだけど、語るに落ちるというか、つまり彼はアミールに執着していただけで、それを愛だと思い込んでいただけでしょ。ファスビンダー版のペトラもそれは同じ。

 結局、こういう人って、誰かに依存していないと自身を保っていられないんだろうなと思う。依存=愛、だと本人は思っているけど、本来的には別物であるから苦しいのだよね。こんなに愛してるのにぃ~っ!!っていう、、、。でも、それ、愛じゃありませんから。こんなに依存しているのに!って本当のことを言えば、その異常さは明らか。

 このブログでも度々書いているけど、精神的に自律していない人の場合、本人もシンドイだろうけど、周囲はもの凄く迷惑なんだよね。

 ペトラにしても、ペーターにしても、離婚したり失恋したりして落ち込んでいるのに、直後にすぐ別の対象に恋に落ちることが出来ちゃう。……いやだから、それ恋じゃない、依存先を見つけただけなんだけど。言葉は悪いが、寄生先を目ざとく見つける寄生虫みたいなもんである。おー、こわっ。

 どちらの作品でも、秘書が打つタイプライターの音が部屋に響き渡るのが、主人公が愛だの恋だのと苦しんでいるのをあざ笑うかのようで、ある意味、その本質のメタファーであるとも言えるかもね。ペトラもペーターもその秘書に冷たく見限られているのがまさにそれではないか。

 こういう人は、ペットでも飼って、猫可愛がりしていてください。人間はペットじゃないんで。

 

 

 

 

 


ドゥニ・メノーシェはコメディの方が向いているような。

 

 

 

 

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2 コメント

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甘酸っぱい涙がいい (松たけ子)
2023-07-10 01:04:32
すねこすりさん、こんばんは!
待ってました!苦い涙のレビュウ!オリジナルのペトラは何だかイタくてヤバい女の話でしたが、ピーターはちょっと笑えるコメディ調なんですね。私もそっちのほうがいいわ。オゾン監督のブラックなコメディセンスが好きです。
イザベル・アジャーニの出演作が日本で劇場公開されるのって、かなり久々?心配(+ちょっと期待)してたほど妖怪化してないんですね。アミールがぜんぜん美青年じゃないような…ドゥニ、結構好きです。何かのインタビューで英語がペラペラ流暢すぎてびっくりしました。
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Unknown (すねこすり)
2023-07-10 22:54:28
たけ子さん、こんばんは。
ようやく感想書きました、、、(-_-;)
はい、オゾン版はブラックコメディと言って良いと思います。
ペトラ~みたいな重さは全く!!ありません。
ドゥニさんの弾けっぷりが見どころです(*^-^*)
アミール、私の目にもあんまし美青年には映りませんでした、、、。
アジャーニさま、妖怪化、していないです。ちょっと厚塗りな感じではありましたが、全然おキレイ。
こういう内容はこれくらい軽く演出してくれた方が見やすいですね。
ドゥニさん、面白そうなおじさまですよね。多彩というか多才なお方なんですな、、、。
たけ子さん、夏休みは何をごらんになる予定ですか?
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