映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

人魚伝説(1984年)

2017-02-09 | 【に】



 とある漁村。海女としてアワビ漁をしていた佐伯みぎわ(白都真理)と、夫の啓介(江藤潤)は、新婚で、喧嘩もするが仲の良い夫婦だった。

 ある晩、啓介は夜釣りしている男の乗った小舟が爆破され、男が殺されるところを目撃する。そして、数日後、爆破事件の真相を探ろうと、海に出ていた夫婦を何者かが襲い、啓介は殺され、みぎわも殺されそうになるが、負傷しながらも何とか逃れる。

 しかし、啓介殺しの犯人にされてしまったみぎわは、啓介の友人・宮本祥平(清水健太郎)を頼って、村から近い渡鹿野島に渡り潜伏することに。そこで、みぎわは啓介殺しの真相を知り、復讐鬼と化して村に戻ってくる、、、。

 本作の監督・池田敏春氏は、本作のロケ地で、2010年水死体となって発見されています。
 
 
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 知る人ぞ知る、という本作。レンタルでもレアものらしく、しばらく上位に置いておいたんですが、このほど送られてきました。まあ、B級ではありますが、かなりの力作だと私は思います。いろんな意味で「根性が伝わってくる映画」です。


◆余談~大河ドラマの話。

 白都真理さんと言えば、私は、大河ドラマ「草燃える」なんですよねぇ、、、。郷ひろみ演じる源頼家の妻(比企能員の娘)を演じておられました。北条政子に疎まれる頼家を慕い、実力者の政子に堂々と刃向う、なかなか気骨のある女性を演じておられた記憶があります。頼家の死後、北条軍に攻め込まれた際(比企能員の変)の、白装束で敵を見下ろす姿が印象的でした。

 ちなみに、どーでもよいけど、そのとき、実朝を演じていたのが、篠田三郎だったのですよねぇ。小学生だった私は、実朝が鶴岡八幡宮で暗殺されるシーンを、胸がつぶれる思いで見ておりましたヨ、、、。

 そうそう、どーでもよいついでに、そのとき、義経を演じてたのは、国広富之でした。当時は、美青年で、子ども心に「ハマリ役だぁ~~」と見惚れておりました。でも、静御前が友里千賀子で、なんか、合わないなぁ、、、と残念にも思いましたねぇ。懐かしいわぁ。

 思えば、「草燃える」は、かなりの美男美女揃いだったような気がします。北条義時を、まだ顔が四角くなっていなかった頃の松平健、その恋人茜を、まだ細くて可憐だった松坂慶子、頼朝は若かった石坂浩二、北条政子は当時から泣く子も黙る岩下志麻、政子に片思いする下級武士を眼光鋭い滝田栄、、、すげぇ~~、豪華キャスト!! 今の大河とは重みが違ったよなぁ、当時の大河は。出ている人も、作りも。

 大河ドラマは子どものころから熱心に見ていたけれど、「草燃える」は、中でも記憶に強く残っている作品の一つですねぇ。中島丈博脚本だから(この人のドラマは当たり外れが激しい気がするけど)、やはり、骨のある大した作品だったのでしょう。ホント、懐かしい。

 思うに、大河ドラマは、恐らく1986年の「いのち」が分岐点でしたね、多分。あれは、大河ドラマとしては非常に邪道で、内容も酷かった。その後、「独眼竜政宗」「武田信玄」で軌道修正を図ったものの、一度狂ったものは元には戻らないものです。緒形直人の「信長」で再び崩れ、「毛利元就」で完全にホームコメディドラマ路線に陥ってしまいました。

 極め付けは「利家とまつ」ですかねぇ。もう、大河も終わったな、、、と思ったものです。主役の俳優が、思いっ切り軽くなったのもここからのような……。


◆木綿のパンツと白いソックス

 、、、と、脱線が過ぎました。白都真理さんの話。

 「草燃える」の後は、2時間ドラマとかでよく見たような、、、。あんましハッキリは憶えていませんが、天知茂演じる明智小五郎の「美女シリーズ」とかにも出ていたような。その後は、セクシー写真集とかで時々話題になっていたのを覚えています。

 別に、好きとかじゃないけど、とても印象に残る女優さんだったんですよねぇ。演技が上手い、とは言い難いけど、一度見たら忘れられない人です。

 本作では、そんな彼女が、まさしく文字通り“体当たり”の演技をしています。もう、この役を演じたその根性だけでもアッパレだと思います。今時の若い女優さんで、こんな根性のある人、そうそういないでしょう。

 夫殺しの濡れ衣を着せられ、逃げた先の渡鹿野島では、宮下順子さま演じるママのバーで働くんですが、そこの住み込みの部屋で、清水健太郎演じる金持ちのボンと激しいセックスシーンが展開されます。

 このシーンがね、結構、面白いんです。長回しで(多分)ワンカットで撮っているんですが、その間、アクロバティックに体位を変える変える、、、。真理さん演じるみぎわは、ゼンゼン気持ち良さそうじゃない。これは、監督の池田敏春氏がロマンポルノを撮っていた人であることも大きいでしょう。そうでないと、こんな濡場の撮り方しないような気がします。まったく官能的ではないけど、切迫した何かが伝わってきます。

 しかも、ここでの清水健太郎は、全裸なのに、なぜか白いソックスだけ履いている!! これが結構ウケる。なんだよー、そのソックス!!

 おまけに、みぎわの履いているパンツなんですが、パンティーじゃなくて、パンツなんですな、これが。木綿の。ヘソまであるような白いの。ううむ、まったくセクシーじゃないのが、なぜか切実感を演出している。

 決して生々しくはないのです。私は、生々しいセックスシーンは超苦手で、しかも長いとうへぇ、、、ってなってくるんですが、本作の場合、そういうのがないの、長いのに、激しいのに。何かこう、、、痛々しいというか、哀しいというか。ストーリー上、決して悦びを感じるセックスじゃないので、当たり前かもしれませんけど。

 この監督さんは、セックスを美しいものとして撮ろうとはゼンゼン思っていないのでしょう。実際、セックスなんて現実には美しいもんじゃありませんしねぇ。美しく撮っている映画は、それはそれでステキなものもありますが、こういう、男と女の現実的な肉体のぶつかり合いとしてのセックスの描き方も、なかなか良いものだなぁ、と本作を見て思いました。


◆白都真理in全裸殺戮シーン

 その後も、ヤクザ者にほとんど強姦されるようなシーンもあるんですが、このヤクザが、清水健太郎演じる宮本祥平(地元土建屋社長で、事件の黒幕・宮本輝正の息子)が刺客として送り込んだヤツなんですね。祥平は、みぎわのことが好きだったけれども、簡単に好きな女を売ることもできる性根の腐ったどうしようもない男なんです。

 でも、みぎわは、そんな刺客に簡単に殺されるようなタマじゃなかった! ヤクザ者を返り討ちにして、自らも返り血を浴びて真っ赤になります。このシーンがなかなかスゴイ。血飛沫バーーッて感じなんですが、わざとらし過ぎるので、あんましグロさはないですね。でも、グロくはないけど、真理さん演じるみぎわは全裸で逃げ惑い、ヤクザ者と格闘し、時には大股開きまでして、ドスでヤクザ者をメッタ刺し!!! すげぇ迫力の真理さんを存分に堪能することができます。

 とはいえ、これは、みぎわの復讐劇のほんの序章。本編は、これから。

 そもそも、何でみぎわの夫は殺されたのか。彼が見た小舟の爆破による男の死の背景には、この漁村近くに持ち上がったレジャーランド計画があります。この計画、レジャーランドは表向き。実際は、「原発建設」だったのです。近畿電力(関電のモデル?)の、いかにもな社員と、土建屋社長の宮本輝正らが、それこそ、頭の黒い鼠よろしく会合しているシーンとかありまして、宮本社長「俺が動けば、何でもすぐに解決するんや!!」と豪語しております。この原発建設に難色を示していた土建屋の社員を殺したのが社長だったというわけ。

 みぎわは、前述のヤクザ者に“冥途の土産”として、その話を聞かされることで、夫の死の真実を知ります。本当は、自分も殺されるはずだったけれど、殺しそびれたので、夫殺しの濡れ衣を着せられたことも知らされます。

 呆然となるみぎわは、血染めの部屋で、ヤクザ者の死体と共に朝を迎えるのです。


◆本作のラスボスは、、、

 こういう復讐劇で、黒幕張本人ってのは、いわゆる“ラスボス”として、最後に殺られるのが定石っちゃあ定石ですが、本作には、定石なんぞありません。いきなり、黒幕張本人であるオッサン宮本輝正を殺っちゃいます。しかも、宮本家のプールで(プール付きの豪邸なのよ、宮本さんチは)。海女さんに水の中に引きずり込まれちゃ、さしもの極悪人の土建屋社長も形無しです。勝ち目なんぞありません。結構、水中格闘シーンが長いんですが、当然、オッサンは水面にうつ伏せで浮かび上がります。

 あ、ちなみに、この水中格闘シーンでは、みぎわさんは全裸じゃありませんヨ。ちゃんと、海女の着る白装束をお召しです。この後の、大殺戮シーンも、この白装束で行われます。

 その後、みぎわは海女らしく、2本の銛を研いで“武器”を準備し、いざ、原発誘致パーティーの会場へ乗り込みます。

 まずは、警備員の男性を問答無用で瞬殺したかと思うと、次に社長の息子で自分を売った宮本祥平を銛で躊躇なくブスリ、、、。海へ落下する祥平、、、ドボーン。その後はもう、、、とりあえず、手当たり次第にブスリ、ブスリ、ブスリ、、、、夫殺しに関係あろうがなかろうが、自分を止めようとする者たちをお構いなしに殺しまくります。

 彼女が、何で無差別殺人に及んだのか、、、。それは、このセリフに答えがあると思います。

 「原発いうんはどこや。ウチんひと殺した原発いうんは、どこにおるんや!」

 結局、彼女にとってのラスボスは、宮本社長なんぞではなく、原発そのものだったということ。だから、それにまつわる人々は誰であれ、皆、夫の仇、というわけ。だから、原発誘致の旗振り役だった、地元選出の国会議員なんかはもう、メッタ刺し、、、。

 白装束だったみぎわですが、返り血で頭の先から足の先まで真っ赤っか。顔も真っ赤。そのアップは、まるで赤鬼のよう、、、。復讐鬼とはよくぞ言ったものです。

 その後、今頃おせーよ的に、三重県警のパトカーが大挙してやって来たり、機動隊が盾を並べてバリケード作ったりするけど、それもみぎわが念じた海の神のおかげで、突如、嵐が巻き起こり、みぎわ以外、一人残らず吹っ飛ばされます。

 そして、復讐を一応遂げたみぎわは、真っ赤に染まった海女の衣装のまま海へ、、、。そして、海面に上がると、愛しい夫が船上で彼女を迎える、、、。

 そう、ここに至り、本作のタイトルが「伝説」となっている所以が分かります。

 ……にしても、あんな細っちぃ銛2本だけで、何十人も殺せませんね、現実には。それに、大の男があんなに大勢いて、あそこまでみぎわを止められないのは、やっぱし不自然。、、、でも、本作では、そんなことはどーでもよいことなのです。あそこは、みぎわの怒り=海の神の怒り、と思って見れば、これくらいのあり得なさがあって当然なんです。

 本作のラスボスである原発。震災を経験した今見ると、まさに、今の社会にとってのラスボスこそが原発、という気もしてきます。


◆その他もろもろ

 脚本が西岡琢也、水中撮影の中村征夫、音楽は本多俊之、、、という、かなりの豪華スタッフ。……の割には、音楽がイマイチ印象に残らなかったかも。水中シーンは確かに美しいです。ラストは特に印象的。

 あと、みぎわが途中で逃げる“渡鹿野島”が、その昔はかなり怪しい島だったってことを、本作を見て初めて知りました。昨年、伊勢志摩サミットなんぞではしゃいでいましたけれど、そのお膝元にこんな島があったのですねぇ、、、。

 でもって、清水健太郎、、、。彼が、その昔、もの凄い人気があったことは、幼かった私でも、うっすら覚えています。本作を見て、まあ、いかにも、、、って感じではあるけど、シャブ中になんぞならなければ、結構イイ俳優さんになっていたのではないか、という気がします。もったいないですね、ホントに。まあ、自分で勝手に堕ちて行ったのだからどーしようもありませんけれど、、、。






本作自体が半ば“伝説”になっています。




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