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「竹下村誌稿」を読む 316 産業 12

(散歩道のツマグロヒョウモンのメス)

快晴、散歩道でツマグロヒョウモンがカンナの葉に止まっていた。気付けば、周囲にオスも飛んでいた。

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「竹下村誌稿」の解読を続ける。

        牧野原開墾起源       従二位 勝海舟

明治元年、官軍、我が江戸に逼(せま)る。終に城地を致し去る。この時、君ら我に告げて曰く、時勢ここに到る。今また何をか陳ぜん。然りといえども、我輩同士五百名、辱(はじ)を忍び声を呑んで、脱走、暴挙せざるは、君命を守ればなり。今や喪家の狗の如く、空しく故国を捨て去る。その心中勃如として言うに忍びざるものあり。同志中、その純を選抜し、壱百名従容、義に因(よ)り城内に入り、屠腹、一死を以って、主家数百年の恩に答えん。君また機を失せしむるなかれと、慷慨悲憤涙血襟を湿(しめ)らす。余その心程の忍ぶべからざるを察し、深くその言に感動す。

※ 致す(いたす)- 差し出す。
※ 陳ず(ちんず)- 申し開きをする。弁明する。釈明する。
※ 喪家の狗(そうかのいぬ)- 不幸のあった家で、家人が悲しみのあまりえさをやるのを忘れ、元気のなくなった犬。転じて、ひどくやつれて元気のない人。
※ 勃如(ぼつじょ)- むっとして顔色を変えるさま。
※ 従容(しょうよう)- ゆったりと落ち着いているさま。危急の場合にも、慌てて騒いだり焦ったりしないさま。
※ 屠腹(とふく)- 切腹。
※ 慷慨悲憤(こうがいひふん)- 世情や自分の運命などについて、憤慨し、嘆き悲しむこと。
※ 涙血(るいけつ)- 血涙。激しい怒りや悲しみのために流す涙。


後、答えて曰く、君らのこの挙、可は則ち可なり。余が考えは反せり。今や天下新たに定まると言えども、人心の不測知るべからず。この時にして空死(そらじに)す。何の益あらん。我、君らを以って駿河久能山に據(よ)らしむべし。君ら精を養い、約を堅くし、一朝不測の変あらば、死を以って時に報いば如何(いかん)。宜しく熟慮を以ってその去就を決せよと。
※ 可は則ち可なり - 良いには良い。間違ってはいない。
※ 空死(そらじに)- 死んだふりをすること。


後、君らこの義を可なりとし、終に去りて久能山に入る。後、国家益々無事、君ら再び余に告げて曰く、今や形勢かくの如く、空しく久能山に在り徒食老死せんは誠に我輩の本意にあらざるなり。聞く、遠江国金谷原は磽确不毛、水路に乏しく、民捨てゝ顧みざること数百年、若し我輩をしてこの地を有せしめられなば、死を誓いて開墾を事とし、力食一生を終らんと。
※ 徒食(としょく)- 働かないで遊び暮らすこと。⇔力食
※ 磽确(こうかく)- 小石などが多く、地味がやせた土地。


(「牧野原開墾起源」明日へつづく)
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