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「壺石文」 中 6 (旧)八月五日(つづき)、六日

(散歩道のアジサイ2)

散歩道のアジサイが次々に花を咲かせている。この後、しばらく、アジサイの花が続く。

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「壺石文 中」の解読を続ける。

忘れにたり。昨日、重麿神主、早く大宮詣での帰りさに、大井川にて拾い得てけるなりけりとて、ちさき石の面白きを遠出て見せければ、詠みける長歌、
※ 大宮詣で(おおみやもうで)- ここで、大宮は伊勢神宮のことであろう。

  打ち寄する、駿河の国の、空数う、大井川原の、
  玉堅磐
(かたしわ)を、旅路の(つと)と、手遊びに、袖に拾(ひり)いて、
  持て来たる、石とし告
(の)らす、この石を、見ればおむがし
  この石を、見れば懐かし、国遠く、隔りきにける、旅人我れは

※ 打ち寄する(うちよする)-(枕詞)「うちよする」の「する」と同音であることから、地名「駿河( するが)」にかかる。
※ 空数う(そらかぞう)-(枕詞)地名の「大津」「大坂」など「おほ」を語頭にもつ語にかかる。
※ 玉堅磐(かたしわ)- 堅い岩の美称。
※ 苞(つと)- その土地の産物。また、旅のみやげ。
※ 手遊び(てすさび)に - 手先で何気なく、また、気晴らしでする遊び。
※ おむがし -「うむがし」とも。よろこばしい。めでたい。
※ 隔る(へなる)- へだたる。また、遠く離れている。


菅雄さんは、陸奥の地で、思い掛けなく、大井川の石に出会って、第二の故郷、島田を偲んで、思い出ずるままに長歌を詠んだ。

こゝの殿人、下河辺の某郡奉行より、町奉行という役に移ろい進みけるよし聞いて、詠みてやりける。

   蔭高き 里の名に負う 二本(ふたもと)
        松の常葉
(ときわ)に 人の仰(あう)がん

六日、罷り申して発ち出でんとするに、主の詠みて出だせりける歌の返しに、

   旅衣 恵みの露の 深見草
        花咲く宿は 着つゝ訪わまし

※ 深見草(ふかみぐさ)- 牡丹(ぼたん)の別名。

牡丹を好みて、前栽に多く植えたりければなりけり。また、康英若子(わくご)に、
※ 若子(わくご)- 若い男子。また、若者をほめていう語。

   旅衣 今日別れても 阿武(逢う)隈の
        変わ
(川)らず訪わん 立ち帰りつゝ

福島の駅まで来て宿る。
※ 福島の駅 - 福島宿。奥州街道の宿場で、現、福島県福島市の中心部にあった。
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