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宗祇終焉記7 文亀二年八月 追悼

(裏の畑のボケの花)

朝から一日雨降りであった。宗祇終焉記も明日で終りになる。解読を続けよう。

同じ夜、侍りし一続の中に、「寄月恋旧人」という題にて、
※ 寄月恋旧人 - 月に寄せ旧人を恋う。
※ 旧人(古人、ふるひと)- すでに死んだ人。故人。


                           氏親
   ともに見ん 月の今宵を 残し置きて ふる人となる 秋をしぞ思う

宗祇を心待ち給いしも、そのかい無きという心にや。

また、ありし山路の朝露を思い出でて、

   消えし夜の 朝露わくる 山路かな     宗長

という上の句をつかうまつ(仕)りしに、下の句に

   名残過ぐ憂き 宿の秋風         宗碩

これを宵居のたび/\に、百句に連ねて、せめてなぐさむ。燈し火の元にて、かれこれ、去年今年の物語し侍るを、ものに記し付け侍るものならじ。
※ 宵居(よいい)- 夜遅くまで起きていること。


この月の晦日は月忌の初めなれば、草庵にして素純など来り、あわれあい、とぶらわれし。
※月忌(がっき)- 毎月の、故人の命日にあたる日。月命日。

次に連歌あり。発句、

   虫の音に 夕露おつる 草葉かな      宗長

この発句を案じ侍りし暁、夢中に宗祇に対して談じせしに、朝露分くると申す発句をつかうまつりて、又夕露はいかがと尋ね侍りしかば、吟じて幾度も苦しからざる由ありしも、あわれにぞ覚え侍る。

同じ日の一続のうちに、「寄道述懐」という題にて、
※ 寄道述懐 - 道に寄せ思いを述べる。

   たらちねの 跡いかさまに 分けも見ん おくれて遠き 道の芝草

東野州より古今集伝受の聞き書き、並び切紙など残す所なく、この度今際の折りに、素純口伝付属ありし事なるべし。
※ 東野州(とうやしゅう)- 東常縁(とうつねより)。室町中期の歌人。美濃国郡上の領主。
※ 切紙(きりかみ)- 奉書紙・鳥の子紙などを折り目どおり二つに切ったもの。
※ 切紙伝授 - 古今伝授で、奥義とする秘説を切り紙に記して伝授する形式。東常縁が宗祇に行ったものを最初とする。
※ 付属(ふぞく)- 師が弟子に教えを授け、さらに後世に伝えるよう託すること。


同じ頃、素純の方より、初鳫(雁)を聞きて、宗祇の事を思い出でて、など言い送られし、
 
  ながらえて ありし越路の 空ならば つてとや君も 初雁の声
※ つて(伝)- 相手に伝えるための手段や方法。

かえし                  
                               宗長
   三とせ経し 越路の空の 初雁は なき世にしもぞ つてと覚ゆる

宗祇北国の住い三ヶ年の程、たよりにつけて、文などありしを思い出て、かくぞ侍りし。
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