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大石寺の五重塔

(大石寺三門と富士山)

静岡県でまだ見ていない塔として、最後に残った塔が大石寺の五重塔であった。何となく入り難いお寺として最後に残っていた。秋晴れの土曜日、思い立って出かけてきた。S学会のパワーで巨大寺院となった大石寺であったが、S学会は決別したと聞いていた。かつての賑わいは無くなったが、部外者にとっては敷居が低くなっただろうと思った。

日本の神社仏閣は来る人を拒まず、参拝者は誰でも自由に出入りできる。その大らかさの中で日本人の宗教に対するこだわりの無さが培われてきたともいえる。神社にお参りした直後にお寺にお参りしても、日本人は何ら違和感を感じない。宗教側も神仏習合という発想転換で垣根を取っ払っていた。明治になって廃仏毀釈の嵐が吹き荒れた後も、形は変えながら現代に伝わっている。

だから、新興宗教などで閉鎖的な宗教施設ができると、周辺の住民は胡散臭く感じる。時々内情が外へ漏れて来るとき、人々の胡散臭さが現実のものとなったりする。

大石寺には20年も前、取引銀行の案内で中へ入ったことがある。お参りした記憶はないが、富士美術館を鑑賞した。

巨大な三門を前に、少し迷った。境内の右側の道路を車で登って行くと、すぐ左の林の中に隠れるように五重塔が見えた。そばに臙脂のブレーザーを着た係員がいた。五重塔を見たいのだがというと、今日、明日と登山会(参詣することを登山というようだ)があって部外者は入場は遠慮して頂いている。正面にまわってことわればワッペンのようなものをくれると思うという。お寺の駐車場には停めれないが、周りに停めれば良いともいう。回ってみるとタクシーが待機するそばに、それらしい駐車場があったので車を停めた。

緊張しながら進んだが、広大な三門の周りにも遠くで草取りをしている人が一人見えるだけで人っ子一人居ない。案内を請うような事務所も無い。正面の広い参道の両側に宿坊が並んでいる。その宿坊各々が一つのお寺のようだ。何棟か現在建替えの工事中であった。工事場所を通知した地図が立ち、おおよその五重塔の位置がわかった。巨大な奉安堂の右手の方の林の中にある。長い参道に人影は無く、静まり返っていた。


(林間に見える大石寺五重塔)

大石寺五重塔は、少し石段を登った簡単な塀に囲まれた中に、林に隠れるように建っていた。案内板によると、江戸時代の中期、寛延二年(1749)に総工費四千両で建てられたという。建設費が解って面白い。間口6.4メートル、高さ34.3メートルの大きな塔であった。林に囲まれて良いアングルが見つけられず、木の間隠れの写真だが、これが気に入った。ここでも誰にも会わず、ゆっくりと五重塔を鑑賞できた。

帰る道で宿坊から花嫁花婿が前触れ無く出て来て驚かされた。カップルもあとから続く少人数の参会者も、当然のこと皆笑顔だった。入山していた間、何時、誰何されるかと続いていた緊張がふっとほぐれた。
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