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「江戸繁昌記 三編」を読む 2

(蓮華寺池公園の葉ボタンの花/4月16日撮影)

花の少ないお正月を華やかにする葉牡丹。アブラナ科の植物だから、花の咲くのは想像出来たが、意識して見るのはおそらく初めてである。こんなに咲き揃うとは、予想外であった。

午後、「古文書に親しむ(経験者)」講座の、令和元年度の初回である。この講座の教授を受けてから、4年目に入る。今年も興味深い古文書を読んでいきたい。何と言っても、古文書をもっとも読みたいと思っているのは自分だから。

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「江戸繁昌記 三編」の解読を続ける。

頃者は、繁昌記二編成る。米に易(か)え、銭にまた換え、数月の飢えを支(ささ)う。十日の、遽(にわか)に病むに至らず。居士喜んで寝ず。嗚呼(ああ)、数月の支え、喜んで寝ざる。これ貧人處士の一小命分なるのみ。
※ 頃者(けいしゃ)- このごろ。近ごろ。
※ 霖(りん)- 長々と降り続く雨。ながあめ。
※ 處士(しょし)- 仕官しない人。在野の人。
※ 命分(みょうぶん)- 一生涯の寿命の長さの限度。


貧人数月支う糧(かて)、富人よりこれを視れば、何如(いかん)ぞや。處士一時の戯文大儒これを視れば何如(いかん)ぞや。然るといえども、の如何(いかん)とも末なり。また将(まさ)に数月の糧を営(いとな)ませんとす。
※ 戯文(ぎぶん)- たわむれに書いた文章。また、こっけいな味わいの文章。
※ 大儒(だいじゅ)- すぐれた儒学者。また、大学者。
※ 命(めい)- 寿命。


凹硯禿筆倉卒に草を起こす。一夕、者(人)筆を擲(なげう)って、大いに哭(な)きし。還(ま)た筆を拾いて大いに笑う。且つ笑い、且つ(こく)
※ 凹硯(おうけん)- 墨をすり込んで凹んだ硯。
※ 禿筆(とくひつ)- 穂先の擦り切れた筆。ちびた筆。また、自分の文章や筆力を謙遜していう語。
※ 倉卒に(そうそつに)- 急に。突然に。にわかに。
※ 一夕(いっせき)- ある晩。ある夜。
※ 哭す(こくす)- 哭(な)く。声を出して泣き叫ぶこと。(「泣く」は、肉体的や精神的な刺激に堪えられず涙を流すこと。)


終に幡然として、改めて曰く、命を知らざれば、以って君子と為ること無きなり。平生、学ぶ所、それこれのみ。これを哭(こく)する、また命を知らざるなり。これを笑うもまた命を知らざるなり。聖人の道、笑うべくしてこれを笑い、哭くべくしてこれを哭(こく)す。則ち吾がこれを哭する、今を省みざるなり。吾がこれを笑う、命を畏れざるなり。乃(すなわ)ち、分を守り、命を安んじ、天を楽しみて記す。
※ 幡然(はんぜん)-さらりと変わるさま。心をひるがえすさま。
※ 聖人の道(せいじんのみち)- 儒家で、孔子の教えをいう。孔子が説いた人間としての道。
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