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「壺石文」 中 32 (旧)九月十四日

(庭のデュランタ・タカラヅカ)

今年も庭のデュランタ・タカラヅカが花を付けている。剪定の時期を誤ると、花が見れないが、今年は何とか花が見られた。

今夜、将棋の藤井聡太四段、14歳が、プロデビュー以来、公式戦、負けなしの29連勝を上げて、神谷広志八段が1987年に達成した、公式戦連勝記録の28を30年ぶりに塗り替えた。将棋界は今や大フィーバーである。最近、スポーツ界を始めとして、10代の人達が大活躍している。彼らのどんな舞台でも物おじしない姿は、日本人のDNAが大きく進化を遂げたのではないかと、思われるほどである。注目して行こうと思う。

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「壺石文 中」の解読を続ける。

十四日、大原給分十八成(クグナリ)浜鮎川など云う浜を経て、山雉(ヤマドリ)渡に至る。青波騒ぐ切り岸に、唯一つの店ありて、物売るあり。すのこに尻掛けて、煙り吹きつゝ見れば、旅人一、二人来居たり。波風も立たで、いと良き折りなりけりな。今渡してんと、楫取りだつ男の言えば、いと嬉しくて暫し待つほどに、俄かに北風吹き出でゝ、浪立ち騒ぐ気色(様子)、見るも恐ろし。
※ 大原(おおはら)- 大原浜。現、石巻市大原浜。
※ 給分(きゅうぶん)- 給分浜。現、石巻市給分浜。
※ 十八成(くぐなり)浜 - 現、石巻市十八成浜。
※ 鮎川(あゆかわ)- 鮎川浜。現、石巻市鮎川浜。
※ 山雉(ヤマドリ)渡 - 牡鹿半島から金華山に渡る渡し場があった。
※ だつ(だつ)- そのようなようすを帯びる。


かくては不用なりと言い/\て、楫取りら三、四人団居(まどい)して酒のむめり。こゝにて宿すやと問えば、否とよ、鮎川まで帰りてよと教うれば、せんすべ無くて、立ち帰りて宿りにけり。浄瑠璃と云うもの語りて、浮き世渡らう京人、竹本の某と云う若人(わこうど)と、諸ともに物語りして宿る。この家も磯際にありて、砌のもとまで荒波寄せ来なり。

明かり障子の一重ばかりを隔てにて、戸も鎖(さ)さざりければ、そゞろ寒きに、薄きふすまの垢じみたる一つばかりを、添い臥しの妻と頼むも、あわれなりける旅寝なりけり。折々寝覚めせられて、ゆまりがてら月を見て、
※ 明かり障子(あかりしょうじ)- 木の枠の片面に和紙を 張った、採光のできる障子。今は「障子」と云えばこれを示す。
※ そぞろ寒し(そぞろさむし)- なんとなく寒い。
※ ふすま(衾)- 身体の上にかける寝具。木綿・麻などで縫い、普通は長方形であるが、袖や襟を付けたものもある。現在のかけぶとんの役割をした。
※ 添い臥し(そいぶし)- 添い寝。
※ ゆまり(尿)- 小便。


   網引き(あびき)する 海士(あま)の苫屋に 旅寝して
        波の寄る/\ 月を見るかな
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