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野守の池の睡蓮

(野守の池の睡蓮)

龍門の滝へ道草の後、川根町家山の野守の池に向かう。池のそばに駐車したが睡蓮がどこにあるのか分からない。それなら池を一回りして来ようと、時計と反対周りに巡った。穏やかな日差しの中、ヘラブナ釣りの釣り人が池畔に作られた釣り人用の桟橋に等間隔を空けて陣取っていた。隣りとの干渉を避けて陣取る結果、2~3メートルの見事な等間隔になってしまう。人間心理の実験通りの結果である。

野守の池はかつては大井川が大きく蛇行していた時代の名残で、いわば三日月湖の一つである。周囲約1.2キロメートル。埋立てが進んだのか、昔の記憶より狭くなったように見えると女房がいう。昔の記憶というのは学校の頃だから、もう40年も前の話で、子供の頃見たよりも小さく見えることはよくあることだ。それだけ人間の視野が広くなったのであろう。

ブルーギルやブラックバスなどの外来種の魚を池に入れないようにと看板が立っていた。しかしもうすでにこれらの外来種が生息しているようで、およそ一回りしたところにいた釣り人が、目の前でブルーギルを釣り上げた。針から外して陸に放り投げると、待っていたように野良猫が跳んできて、くわえて茶畑の方に消えた。女房が残酷なと目を見張る。「ブルーギルですね」「ええけっこういます」釣り上げた外来種の魚はリリースしてはならないのが鉄則である。猫はそれを良く心得ているのだろう。

野守の池には池の名の由来に係る伝説がある。名僧・夢想国師がこの地に修行に来た。それを慕って京都の遊女・野守太夫がはるばる当地まで追いかけてきた。しかし国師は修行の身だからと会わなかった。悲観した野守太夫はそばの池に身を投げて死んだ。そんな悲恋の伝説である。以後村人たちは、その池を野守の池と呼び、今に至るまで供養している。名僧夢想国師にしても色を好んだのかな。など、幾つが疑問があるが、まあ伝説だから皆んな許そう。


(睡蓮一輪)

睡蓮は池を三分の一ほど周った池畔を埋めていて、淡いピンクの花をたくさん咲かせていた。野守の池の浄化作戦の一つとして植栽されたものだという。その先にはヒシやホテイアオイやコウホネなどの群落があった。一つがいのコブハクチョウがいて近づくと人を突付きに向かってきた。看板に「巣作りをしているから近づかないように」との表示があることに後から気付いた。

途中で、龍門の滝で会った老夫婦がバイクに二人乗りして通った。女房が気付いて声を掛けた。ヘルメットは被っているが、小さなバイクで長い距離を走って大丈夫かなあ。初夏の野守の池の池畔にはゆっくりとした時間が流れていた。
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