1983年10月29日(土) 8:00pm メトロポリタン・オペラハウス
ベンジャミン・ブリテン/ピーター・グライムズ MET第36回公演
ジョン・プリッチャード指揮
ティロン・ガスリー、プロダクション
ホブソン/エツィオ・フラゲルロ
スウォロー/モーレイ・メレディス
ピーター・グライムズ/ジョン・ヴィッカース
セドリー夫人/バトヤー・ゴッドフライ
エレン・オーフォード/
エリザベート・ゼーデルシュトレーム
漁師/パウル・デ・パオラ
おばちゃん/リリー・クーカシアン
ボブ・ボールズ/ロバート・ナギー
船長バルストロード/トマス・スチュワート
女漁師/バーバラ・バイストローム
ホレス・アダムス司祭/マイケル・ベスト
二人の姪/ルイス・ウオァフカ
ベッツイ・ノーデン
ネド・キーン/ジョン・ダーレンカンプ
弁護士/ケント・コッタム
少年/カーク・ピーターソン
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何も前提知識なし、聴いたこともなければ観たこともなし、ヴァイニル・レコードの音すら聴いたことがないかもしれない、オペラ読本も読んでいない、だからストーリーも知らない、まして当時のこと、字幕もなければ椅子にテロップなんてあるわけなし。
そんな状態で観に行けば次のような感想となる。
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「英語で歌われるわけであるから、何となくわかるようなところもあるが、やっぱりオペラのすじを追いながら聴くのは多少つらいところもある。
音楽自体は幕間の間奏曲が次の場への重要なモチーフを必ず示しているといった感じで、それなりに分かりやすいところもあるが、それが直ちに感動に結びつくわけではない。
なにか現代の庶民劇といった雰囲気そのものであり、素朴で派手さはまるでなく、これがオペラである必然性をあまり感じさせてくれない。
どこに音楽の山があるのかまるでわからず、フラット、プレインのオペラである。しいていえば、第3幕第2場で音楽がやみ、独白となったところに最高の緊張感を感じた。
どうしても、オペラを聴く場合には、前提知識が前提条件であり、またこのようなめったに繰り返して聴くチャンスのないオペラにおいてはなおのこと前提知識が重要となる。つまり勉強してからいかないと今回のようにあまり楽しくない結果となってしまうのです。」
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当時の駄文とはいえ、あまりにも素直というか、こんなまっすぐな不浄でないハートを持っていた時代もあったのかと、自分の昔の文章に感動。。
「たしかにきれいな長方形の舞台に大きくとられた空間、ただでさえばかでかい空間がこれみよがしにことさら大きい。おしなべて薄いブラックな色調の色合いが、むしろスコットランドの空を想わせる。
音楽のイメージは、非常に気品にあふれ、グレイなロングヘアが上質の油で束ねられたような音のクラスターがうねり、これまた気品のあるヴォイスと絡み合う。決してオーケストラの音のうねりをじゃましてはいけない声、そしてそのように歌われる歌。ヴィッカースの声は激しく荒いのでいくらおさえても少しアクセントがききすぎかもしれない。トマス・スチュワートはもう少し前の時代に聴きたかった。でもこのオペラの特質をよくとらえたものだ。ゼーデルシュトレームは非常に味のある歌で、いつぞやのルサルカの歌声が忘れられないが、魅力的なキャストで生きるオペラだ。」
今、同じような条件で聴いたらこんな感想かもしれない。
おわり
パリ・オペラを聴き、ようやく「メリー・ウィドウ・ワルツ」が二六時中、頭の中で鳴っている状態から脱しました。
ピーター・グライムズは二三度観た様な気がしますが、記憶が定かでなく、これからまた少しずつ書いていくうちに出てくるかもしれません。
パリ国立オペラについてはPilgrim様が既にアップしているようですので読まさせていただきます