河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

PC版に一覧等リンクあり。
OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

682-ミスターS 涼しげにブルゼロを振る。読響。2008.9.22

2008-09-24 00:10:00 | コンサート・オペラ



2008年9月22日(月)7:00pm
サントリーホール

ブラームス/ピアノ協奏曲第1番
 ピアノ、ジョン・キムラ・パーカー

ブルックナー/交響曲第0番

スタニスラフ・スクロヴァチェフスキー指揮
読売日響


一見すると、前半にウェイトを置いたようなプログラミングだが、結果的にはやっぱり後半のブルックナーだった。
はっきりとわけのわからない曲。いくら後期の名作の萌芽がみられるとはいえ、それは後期を知っているからのセリフ。
しかし、この曲を譜面なしで、特に第2楽章などかなりの愛着がないと振れないであろうと思うのだが、うっすらと感動させてくれるあたり、さすがはミスターS、大したものだ。
この曲の形式感なんて作った本人が、作っていた時だけしかわからなかったようなものだろうと思ってしまうのだが、これだけ説得力のある棒を振られてしまうと有無を言わせぬ指揮者の力を感じる。後期の曲のように下手をすると曲に助けられながら振ったりする指揮者がいたりするなか、ミスターSには力、本当の実力を感じる。

第1楽章と第4楽章はソナタ形式であろう。
第1楽章はよく聴くとかろうじてブルックナーの特徴である三主題構成で作られているような気がする。かろうじて主題らしきものが三つ。それらを並べ終わったところですぐに展開部へ。といっても展開しているのかどうかかなり怪しいが、何となく7番的サウンドのそれこそ萌芽を感じなくもない。
どこからか再現部になるようだが三つ目あたりの主題は不明確。コーダで少し盛り上がりを見せながらそれらしく終わる。響きが全体に薄いのが印象的。透けて見えるような感じだ。

第4楽章もソナタ形式なんだろうが、もしかして提示部の前は序奏かな。序奏付きだと第5番的な空中分解?
主題を追っても追ってもうどん状態。かなり追いづらいがかろうじて主題の断片のようなものが三個ほどあるのかもしれない。
展開、再現、最後のコーダは実に短く、なんだか小爆弾がボッと爆発して湯気が舞いあがり、ハイ終わりっていう感じで終わる。

この曲を完全に掌握しているミスターSは快適に、第1楽章アレグロ、第4楽章モデラートを振る。見ていて気持ちがよくなるぐらい不明確な部分を残さずひたすらインテンポを目指して引っ張る。
崩れそうなフレーズのところでインテンポにもっていく、メロディーラインのよくわからない箇所でのクリアな棒、軽い曲にしては圧倒的な棒さばきと言わざるをえない。
それにこの読響だが、妙に息が合っているというか呼吸が合っているというか、ミスターSの思いのままに音をだしてくれる絶妙のコンビ。

圧倒的にわけがわからないのに結果的に素晴らしかった第2楽章アンダンテ。なんともいいようがない。これは二部形式なのだろうか。よくわからない。なにしろ‘ふし’がない。。
第1主題は明確ながら、第2主題あたりから行方不明。たぶん作曲者本人の頭の中にはあるのだろうが、同じ位相まで追い付かない。ミスターSはしっかりと追体験しているようだ。完全なる共感。
響きが薄く息の短い主題、深み高みを追求するわけではないが、そのドライで真摯な棒はある種崇高なものを感じさせる。この楽章のピアニシモの弦によるエンディングはまわりを静かにさせる見事なものであった。

だけに、第3楽章にはアタッカではいって欲しくなかった。しばらく第2楽章の余韻を楽しみたかったというのが本音だ。第3楽章のスケルツォ、トリオ、スケルツォは規模はだいぶ小さいながらこれはよくわかる。読響の息のあった合奏が一層の響きの美しさをもたらす。

結局、この第0番、ミスターSの路線以外考えられない。明確でクリア、簡潔にしてインテンポ。
ひとつ書き忘れたが、チェロとコントラバス、特にチェロの充実度がすごい。これは前半のブラームスでもいきなり感じたことだが、音圧がものすごく、また動きがそろっており、この厚みがブルックナー0番の薄い管弦楽を支えている。

前半のブラームスの1番。交響曲と変わらないフル編成のオケ。
ティンパニーに導かれた弦の深みは秋深しといったところか。チェロの響きが素晴らしい。
ピアノが出る前に主題が並べられるが、ベートーヴェンの3番のピアノ協奏曲以上の展開だ。
ミスターSは第二主題でぐっとテンポを落とし、その下降するフレーズを落とせるところまで落とす。今までに聴いたことのないミスターSの解釈だ。彼のブラームス感はこんな感じなのだろうか。はたまた、今日のソリストの解釈に合わせたテンポなのだろうか。とにかくいたるところぐっと落とす。味わい深い演奏だ。
それでピアノであるが、一言で言って普段あまり練習をしていないのではないか。才能にまかせて弾いていれば、第2楽章あたりから音楽は充実してきていいものになってはくる。第1楽章は流れないというか、ひと区切りごとの束が細い糸でつながっているような雰囲気で、盛り上がっては盛り下がる、の繰り返し。
でも、自分の音を思い出したのか、しり上がりに音楽が滑らかになる。第2楽章の後半の静けさはホールを支配した。
ただ、どうも特徴のようなものが見えてこない。この交響曲のようなオケの音に飲み込まれてしまうことのない鋭いタッチで迫ってくるが、音のうねりみたいなものがない。何かうるさい演奏というわけでもないのだが、どうもインパクトがあまり感じられない。
この曲は協奏曲ではなくて、半分はシンフォニーのようなものだ。シンフォニーの流れの中で単楽器としてのピアノを表現するのは全体が見えてなければできない。このオケとの合わせが少なかったのか。前日も演奏しているわけで、普通ならずいぶんとこなれてきていいはずだがオーケストラの表現の豊かさ、雄弁さのほうが圧倒的であり、ピアノのほうは自分の出番であまりぱっとしない。
結局、ブラームスのシンフォニーのような本格的な響きは堪能した。
おわり



 

 


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。