2017年11月13日(月) 7:00-8:30pm NHKホール
ブラームス ドイツ・レクイエムop.45 10+13-10-6-7-12-11
ソプラノ、ハンナ・モリソン
バリトン、ミヒャエル・ナジ
合唱、ウィーン楽友協会合唱団
ヘルベルト・ブロムシュテット 指揮 ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
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ここ何年かでゲヴァハウを聴いたのは2014年2回、2011年1回、ともにシャイーの棒。今日の演目はその時のものと曲種も違えば、ブロムシュテットでもない。比べるような話ではない。また、ブロムシュテットとの組み合わせでブルックナーのライブもでているがそれともだいぶ異なる。今日の演奏は飽くまでも合唱の伴奏という色彩の濃いものとなった。
バックに最強布陣のウィーン楽友協会合唱団を配したオーケストラは、14-14-12-9-6の対向配置で、左から、cb-vc-1vln-va-2vln-hrp2-organ。下てコントラバス、NHKホールのオルガンは右サイドなのでバランスが優れていて両翼に囲まれた音場が殊の外気持ちの良いものとなった。
気の利かないNHKは字幕の用意が無い。対訳リブレットを手に入れるには有料プログラムを買わないとならない。この音楽祭はだいたいこのような調子で自分たちの都合で進めていく。もちろん、予約チケットはお金を払ってからでないと席を教えてくれないという至れり尽くせりの自分本位のご都合主義ここに極まる。素晴らしい。
詩句の引用は色々なのでやはり字幕が欲しい。冒頭の、マタイによる福音書5:4、
哀しむひとは幸いである。そのひとたちは慰められている。
宗教感を持ち合わせていない自分なりにこの冒頭句はストンと落ちる。理解共感する。
哀しむことを言える相手がいるひとはまだいい、と見えるのだがどうだろうか。
これら書物を読んでいないので短い引用の理解には十分な注意配慮が必要と思う。けれどもブラームスは相応な考えで持ち出してきたのだろうとも思うし。とりあえずこの程度の理解でリブレットの文字を探しながら聴く。
味わい深い合唱、コクのあるもの、刺激は抑え、歌詞の中身を、その意味を訴えかけるように伝播させる。手に取るようにわかる。この実感。歌詞のリアリティー。厳かだ。
大波小波、ブラームスの波動、比較的サラリと進めていくブロムシュテット、彼も一緒に歌っているように見える。彼はいつごろからか棒を持たなくなったが、それと並行してかどうか知らぬが、ここ何年か観ていても、昔の癖、3拍目を早めに切り上げて4拍目のアウフタクトを大きめにとるあの癖のようなものが全く消えているので、音楽の呼吸はどう変化したのか、より自然な呼吸となっているのではないのだろうか。流れがとても自然で、サラリあっさりというのは帰結のような具合でもある。ささくれ立つようなところは微塵もない。
オーケストラの呼吸の合い具合はザッツもさることながら、パッセージの終わりの閉め具合が、アンサンブルがまるで一つの楽器のように見事な呼吸で悉く一致。このアンサンブルは凄い。音色は艶やかというほどではないが、この鮮やかアンサンブルの極意、これはブロムシュテットのものだろう。
ブロムシュテット90才だという。1977年に初めて聴いてから40年も経つのか。あのときは50才だったという話しですな。今振り返るあの時代の手応え。そしてこの日の演奏。
しみじみと味わい尽くしました。ありがとうございました。
おわり
NHK音楽祭2017