2018年12月5日(水) 7:00pm 紀尾井ホール
マーラー(シェーンベルク編曲) さすらう若人の歌 4-4-4-6
バリトン、萩原潤
vn1, vn2, va, vc, cb, fl, cl, per, harm, pf
Int
ブルックナー(1,3アイスラー、2シュタイン、4ランクル編)
交響曲第7番ホ長調 22-24-9-13
vn1, vn2, va, vc, cb, hrn, cl, per, harm, pf1, pf2
出演者
vnアントン・バラホフスキー
(バイエルン放送交響楽団メンバー)
vnダフィト・ファン・ダイク
vaベン・ヘイムズ
hrnカーステン・ダフィン
(紀尾井ホール室内管弦楽団メンバー)
vc伊東裕、cb吉田秀、fl野口みお、cl金子平、per武藤 厚志
(客演)
harm西沢央子、pf1北村朋幹、pf2中桐 望
br萩原潤
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ブルックナー、交響曲第7番ホ長調
第1,3楽章 ハンス・アイスラー 編曲
第2楽章 エルヴィン・シュタイン 編曲
第4楽章 カール・ランクル 編曲
duration
1st mvt. 3-3-2-5-2-2-2-c3
2nd mvt. 4-4-6-1-7-c2
3rd mvt. 3-3-3
4th mvt. 1-2-2-2-1-2-2-c1
11人編成によるブルックナーの7番。このテンションの高さ。やっているほうも聴いているほうもこれ以上ないハイテンション。じっくりと構えて熟成のテンポ感。アンサンブルのポテンシャリティーの高さは個々の技量の見事なハイレヴェルリキからくるものだろう。それに、プレイヤー達が日常的にオーケストラル・パフォーマンスを夜な夜なやってる連中であり、シンフォニックな作品に対する絶対的強みがある。スキルと経験が万全。最高のブルックナーが奏でられました。
当時、小ぶり編成への編曲は手っ取り早く聴かせる等色々と理由があったのだろう。今やる意義、まあ、時代の多様性、求めるものがあればやるし、やってみたければ集まる。作品、演奏家、聴衆、それぞれの求心力のようなものが実現に向かわせる現代の波に乗ったのだろう。今この時代なら、聴くほうも半端ない連中と、やるほうも腹をくくるしかない。
前半のマーラーでは10人編成であったものが、フルートはホルンに替わって、ピアノは一人から連弾に。計11人の編成となった。
作品は一人の編曲ものでは無くて3人による編曲。まだら模様と言えなくもない。終楽章のクラリネットはやや安めの鳴りも耳に入ってくる。また、ブラスセクションの鳴りをピアノやハルモニウムでするだけではなくて割と低めの音域楽器をも代弁している音模様があったかと思います。
全体的にピアノは中桐さんがフメクラーで、弾くかめくるかの忙しさでしたね。
色々とそういったところもありましたが、作品全体の筋をきっちりと魅せてくれた最高のブルックナーで、これはここにいる演奏家たちのおかげ、様様、で間違いなし。
指揮者無しながらテンポが先走りしていく様子は無い。少しずつ速めになりそうな気が、最初はしたものの、こちらの杞憂。オーケストラに居る連中の凄さですな。つわもの達。
ゆっくりと始まったブルックナーは先を急がない。薄めの鳴りでも音楽の流れに隙間が出来ない。実音の余韻といった主題の変わり目の香りも香ばしい。透けて見えるディテールが一本ずつ波打つ。きれいだ。流れが美しい7番が一段と輝きを増す。転調で音色が変わらない味わいは、いつもオケでかぶれた身にはいいものかもしれない。味わい尽くしました。
70分に迫ろうという演奏、規模の大きな室内楽のイメージをはるかに越えたもので幽玄のブルックナー。いつもなら規模にアンバランス感が付きまとう終楽章なども惚れ惚れする造りと進行でしたね。あっという間のショートな展開部、そして3→2→1と出てくる再現部主題群。ここらあたり、展開部から再現部への動きは9番にみられる溶解の序奏か。明快な演奏に舌鼓を打ちながら改めて考えさせてくれる。
初楽章のソナタバランスと吹き上げるようなコーダと堂々とした余韻。丹念に掘り下げたため息のアダージョ楽章。きりりとしたスケルツォとトリオのメリハリの良さ。終楽章のコーダをむかえるところでフラッシュバックしましたね。お見事な演奏でした。堪能しました。
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前半のさすらう若人の歌。
気張った力が見えない歌唱。素晴らしく滑らかな歌い口でコクがあり深みがある。一つ一つのワードがよくわかる。よく見える。
ゆっくりとした進行の中、マーラーの明るさと暗さが綯い交ぜになった複雑さ、23才頃の作品は触ればうずくデリカシーに富んだもの、萩原さんの歌唱で丹念に掘り尽される。
ワーグナーの響きを感じさせる3曲目の燃える刃、ドラマチックでスッと終わる。終曲は一段とテンポを落としピアニシモにこめた思い。滑らかな質感がツボにはまり、なにやら、複雑なマーラーも解決したような心地となる。若いマーラーが透けてみるような歌でしたね。スバラシイ。
紀尾井室内管の伴奏がキラキラと花を添える。ゴージャスな響きは少人数ながらも比重を感じさせるもので、この時代から先のマーラーの予兆も思わせてくれた。
噛み締めて聴くマーラー。
素敵な一夜でした。ありがとうございました。
おわり