河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

1353-  レコ芸読まず開かず。

2012-04-10 02:22:38 | 本と雑誌

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レコ芸を読まなくなってから10年ぐらい経つ。読まないといっても宣伝、広告ページは割と見ていて情報を得ていた。でもここ2年ぐらいはそれも含め読まなどころか開かない。開くことが無くなってしまった。唯一、付録のCDを燃えないゴミに捨てる為に取り出す行為だけは毎月一回する。
もう、買わなければいいのかもしれないのだが、何十年もお世話になっているし、昔のレコ芸は今でいうポータルサイトと詳細情報の両方載っているそれこそ総花的な万能音楽雑誌だったのだ。情報発信と知識発信が旨くブレンドされていて影響力の大きい雑誌だった。
宇野コウホウ、三浦淳史、福永陽一郎、吉田秀和、石井観に雰囲気似ていた大木正興、思わず出を外したくなる出谷啓、畑中良輔、黒田恭一、最初から難しかった吉井亜彦、・・・・、
みんな自分の字を持っていて、音楽の中身のことだけでなく書き方のスタイルとかそういったものにも影響された時代もありましたね。途中から、なんとかあまって憎さ百倍、みたいになっちまった人もおりましたが、それもこれも今は昔。今となってみれば全て、昔の話しよ。最後の一人以外は文面も惹きつけるものがありましたね。この方の初出版の本を買って読みましたがわかりませんでした。
大木さんはメディアによく出ておりました。アナログ的な評はフルヴェンの表現に対する妙な理論形成までいっちまったこともありましたが、基本的には好きな評論家でした。60前に早すぎる旅立ちとなってしまったのは残念。
吉田さんは例の全集の第1版初稿(ブルックナーみたいな表現ですね)を第1冊目から丹念に買いむさぼるように読みました。第10冊まで。そのあと確か時間をおいて11,12,13あたりが出た記憶がありそこまでは読み続けましたが、それ以降は編集が切り貼り的な要素が大きくなり、まぁ、ご本人は悪くないとは思いますけれど、脈絡のないショートな文と、何度も同じ話が出てきて、そろそろ賞味期限かなと思って、関心が薄らいでいきました。全集自体は本棚に不死鳥のように鎮座してます。
宇野さんはいまだ現役ですが、三浦さんとは180度ぐらい違ってどちらも面白かったですね。自分の皮膚感覚を大事にする宇野、かたや欧米紙を訳しまくって情報を発信、この太平洋の海原ごとき異なるアンプリチュードの広さ、これらが一冊の本の中に並列掲載。御両名ともに妄想といったら身もふたもありませんが、とにかくおもしろかったなぁ。
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もうひとつ昔話。
河童ステューディオは57丁目にあって同じ通りに日本クラブとか東京書店とかありました。
東京書店ではレコ芸を毎月、日本から取り寄せてもらってました。レコ芸の価格は、たしか、800円台ぐらいと記憶します。東京書店には日本人向け現地向け両方の本をひょろ長い店舗の中に結構たくさんおいてあって重宝していた記憶があります。値段は例えば日本で1,000円の本だと10ドル強、つまり100円を1ドル感覚で販売していたと思います、たしか。それに8.25%のタックスが付きますので、1,000円の本は10ドル82セントです。いま10ドルで1000円の本を買えるなら80円換算で200円ほど得した気持ちになりますけれど、当時はプラザ合意の前後ですので1ドル230円ぐらいの頃なんですね、だから当時10ドルの支払いだと2300円感覚。800円のレコ芸だと8ドルで1840円。今より高い。
それでも取り寄せて買って読まなければという催眠術にかかっていたんですね、最初の頃は。でもよく考えると、エンタメの街マンハッタンに音楽雑誌は溢れておりました。
Ovation, Keynote, opera news, stereo review, New York times Sunday版、・・・・
因みにOvationにはWQXRの番組表、KeynoteにはWNCNの番組表が載っておりました。
Opera newsはメトの毎週の公演情報を乗せて週一で。オフシーズンは月一。
それからもうひとつそれますが、例の日本クラブには床屋がありました。男のヘアカットがたしか30ドルぐらい。一回だけ行ったことがありますが、高すぎでした。30ドルあれば、河童ステューディオの隣のダゴスティーノで2週間分の買いだめが出来た時代。
床屋も現地調達、「ジャスト・ア・トリム」これでチップ込で5ドル。古き良きマンハッタンかもしれないけれど、昔の現実。
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それでレコ芸を読まなくなってしまったのは、透けて見えるようになってしまったということのような気がする。
おわり

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4 コメント

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河童さま、ご無沙汰しております。またも懐かしい... (naniwanonagori)
2012-04-11 07:55:05
河童さま、ご無沙汰しております。またも懐かしいネタをありがとうございました。うちの実家に、親父が読んでいたレコ芸が生き残っております。確か1970年のもの。表紙が、ベームとベルリンドイツオペラのフィガロ。バーンスタインのマーラーについての小論Mahler: His Time Has Comeを三浦淳史さんが訳されたものが載っておりました。装丁も素晴らしかったですね。もうコスト的にもあんな雑誌を作るのは不可能でしょう。第一、書き手がいない。

その代わり、今では河童さまのエッセイを無料でネットで読めるようになりました… ありがたいことです。
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naniwanonagoriさま (河童メソッド)
2012-04-11 19:45:19
naniwanonagoriさま
ご無沙汰しております。最近ブログの更新が、演奏会があればアップという雰囲気であまり多くありません。実はほかの重要テーマ(もちクラシックなんですが)に特化してまして停滞気味です。いつもみてくださりありがとうございます。
昔のレコ芸は分厚くて、表紙なんか段ボールみたいな頑丈なしろもので、私もまだ多少は残っているのですが、あの重量感はやっぱり中身相応と言えたと思います。文章を味わって読めました。
こうやって昔の記憶をたどる文をたまに書いてますけれど、記憶で書いていてネットとか検索、ググる、といったことを全くせず書いてます(脳みその滑りが悪くなるのでそういったことはしていない)ので間違いとかもあるかもしれません。昔のことをそれなりにイメージしてもらえれば幸せです。今後ともよろしくお願いします。

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おはようございます。さすがに、鏡のような記憶力... (naniwanonagori)
2012-04-12 08:10:34
おはようございます。さすがに、鏡のような記憶力の河童さまならではの方法論ですね(これが河童メソッド?)。
その記憶力のおかげで30年以上前の上野や渋谷のホールの中の空気と音を思い出すとができます。サヴァリッシュ、レークナー、ヴァント、ムラヴィンスキー、バーンスタイン… 
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naniwanonagoriさま (河童メソッド)
2012-04-12 20:12:03
naniwanonagoriさま
ありがとうございます。昔の記憶の文章化は精神が安定していないと書けません(笑)。
点で観たり聴いたりしていたことが、この年頃になってようやく線になってきた感じです。これからもよろしくお願いします。
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