2018年3月19日(月) 7:00pm トリフォニー
ショパン 2つの夜想曲op. 27(ナショナル・エディション) 4-6-
スクリャービン ピアノソナタ第3番op. 23(ベリャーエフ版) -5-3-5-5
ショパン 子守歌op. 57 (ナショナル・エディション) 4-
ドビュッシー 2つのアラベスク第1番(デュラン社) -4-
ドビュッシー 前奏曲集第1巻より第8曲「亜麻色の髪の乙女」(デュラン社) -3-
ドビュッシー 喜びの島(デュラン社) -5
Int
ショパン 前奏曲op.45 (ナショナル・エディション) 4-
ショパン ピアノソナタ第2番op.35 (ナショナル・エディション) -7-7-5-2
ショパン スケルツォ第3番op.39 (ナショナル・エディション) 8
(encore)
ショパン 幻想即興曲 4
ラフマニノフ 楽興の時op.16より第4番 3
バッハ 平均律クラヴィーア曲集 第1巻第1番ハ長調 5
ピアノ、上岡敏之
●
新日フィル定期会員向けのスペシャルリサイタル。指揮者でありピアニストである上岡さんのピアノの夕べ。現在、新日フィルを率いて絶好調、佳演、美演を連発している上岡、瞠目すべきは、自身の指揮のみにとどまらず、このオーケストラに何か忘れていたものを思い出させ、招聘指揮者達による定期公演も軒並み素晴らしい演奏を繰り広げることとなり、この指揮者の存在の大きさにはうなるばかり。ここでさらにひとつ、自身のピアノリサイタルを開くという、いやはや絶好調とはまさにこういうことを言うのであろう。才能というのもおこがましいがそういったものを目の当たりにできる聴衆は幸せと言わなければならない。
かぶりつきの席で思う存分楽しませてもらいました。
ショパンが葬送付きを含む5曲、ドビュッシーが3曲、スクリャービンのソナタ、それにアンコールが3曲。満喫しました。脂のノリがいい演奏で細からず太からず、いつもの指揮とはやや異なるおもむきで、波風の立て具合もほどほどに、一緒にエンジョイできました。客同士の一体感というか垣根がうまく取り払われたいいリサイタルでしたね。
ピアノ・ソナタとしてはスクリャービン3番、ショパンの2番葬送付き。スクリャービンの堅い様式、ショパンの自在な形、わけても葬送から音を切らずにフィナーレに突入するパッション。様式感であれ自在さであれ、それぞれのフォルムの良いところをさらに味付けして押し出していくプレイで、音楽がとまらない。両者4楽章構成のソナタをプログラムに配した意図があるのかとも思ったのだが、それぞれの特徴を押し進めるプレイにそちらのほうに強く興味がいった。
プログラムはこの二つのソナタのフィナーレが済んだところでポーズがあるだけで、他はすべて連続演奏。音を切らずにそのまま次のピースに移るような気配が濃厚でプログラミングの妙がうまく生かされている。周到な並べ方なのだろう。
ですので、前半プログラム、ショパンの子守歌が済んだところで間髪入れずドビュッシー3曲につながっていく。実に自然、語り口のうまさもありますけれども、こういった周到で自然さを感じさせてくれる流れ、気持ちが先につながっていくし、なんだか落ち着くところもある。
ドビュッシーの3ピースはスクリャービンのやや濁ったその上澄みを掬って濾したような贅沢な響き。ソフトでキラキラと透明、あまり聴くことのないドビュッシーサウンドに舌鼓、おいしかったですね。
●
この日のスミトリは3階席を閉じていたようですがほかの席は沢山入っていたと思う、最前列を頂きましたのであまり確認は出来なかったけれど。
ホールの照明を落として、ピアノだけにスポットライト。シックで落ち着いたリサイタル、上岡さんは指揮のときと同じスーツ。指揮でもリサイタルでも声を発することはないのだけれども、目と手、雄弁ですね。音楽の使徒という気がする。弾きが進むにつれて鍵盤に吸い込まれていくように上からかぶさっていく。
アンコールは3曲。バッハで締めてくれました。いいリサイタルでした。ありがとうございました。
おわり