2018年2月11日(日) 11:00am-1:50pm 小劇場、国立劇場、半蔵門
第一部(午前11時開演)人形浄瑠璃文楽
近松門左衛門 作
心中宵庚申
上田村の段 56
Int 30
八百屋の段 42
道行思ひの短夜 30
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私は西洋音楽をただ楽しむだけのアマチュアクラヲタですが、最近、日本の昔のことに色々と興味が湧くようになって、それは、やっぱり日本人だからといった使命感、半ば義務感といった意識からの行動とはまるで違っていて、本能的といえるかどうかわからないが渇きの潤しが要る、喉を潤すのはこの水だったのかと、ごく自然に能動的になった自分に自分が驚いている始末で、いや、始末でもない、見向きもしなかった世界に気張ることなくごく自然に入り込める今の自分を大切に始と末の間の別の線を探索してみようかと思うところあり、気持ちは大変にリラックスしていて我ながら不思議と心地よく、新たな楽しみが出来たことがうれしい。
ということで、人形浄瑠璃文楽、お初で観ます。
1日3部構成を一気に観劇。朝11時から夜9時までの長丁場、オペラで慣れているせいか、長いものどんと来い、です。
第一部は3つの場面からなる心中宵庚申。
心底楽しみました。わからないことは沢山あれども、舞台への集中、大夫の語りと暗譜の三味線のミラクルな素晴らしさ。驚きの連続。字幕が付いているとはいえ、人形の動き全てを見逃すわけにはいくまいという気持ちにフツフツとなってきて、床本の事前読み込みも必須と反省を大いに混ぜながら人形の精緻な動きにびっくり仰天。大夫と人形のシンクロも誠に素晴らしく舞台に集中していると人形が声を発して動いているかのよう。大夫のお隣の割と涼しげに見える三味線、日本的単旋律の妙技、恐るべき暗譜、一体どうなっているんだろうと、もはや、驚きの連続。
といった具合で、物語もそこそこに妙技絶技の虜となった観劇で、大感激。
3つの場からなる物語はうまく場面が切り取られていてつながりが良くて、カツ、一つ一つの小さなやりとりが味わい深い。そこで立ち止まってみて色々と考えさせる意味深さ。展開の流れと彫の深さが同居して進行する物語のあや。
平家物語は自分にとってはまだ先の話だけれども、この語りが入り込むコクの深さ。
西念坊のテイストも味なもの。
クライマックスは正面突破のリアルガチ。全く隙間のない展開にうなずくばかりなり。勧進所前での短夜は圧巻。上田村、八百屋、それぞれのことが交錯しながら一つの結末に向かうこの凝縮緻密。人形より先にこちらが涙する。素晴らしすぎてため息も出ない。
あらすじの再読はもちろんのこと。600円プログラムに付いている床本も読みて、今回の一連の公演が終わる前にぜひとももう一度、観なくてはならない。
おわり