この年、
ドレスデン・シュターツカペレ
Staatskapelle Dresden
が来日した。
指揮者は常任の若杉弘である。
快挙だと思うのだが、オペラ公演なし。
演奏会だけだったのであまりぱっとしなかった記憶がある。
4月3日から16日までの12回公演。
4月5日の公演に出かけた。
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1989年4月5日(水)
7:00pm
サントリー・ホール
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シュトラウス生誕125周年記念
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シュトラウス/ドン・ファン
シュトラウス/4つの最後の歌
ブラームス/交響曲第4番
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エディット・マティス、ソプラノ
若杉弘 指揮
ドレスデン・シュターツカペレ
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お目当ては当然、4つの最後の歌。
この驚異的に美しい曲をマティスの歌で、そしてこのオケ・トップのペーター・ダムのホルンソロが、たとえワンフレーズでもその美音を聴かせてくれるなら、もう、言うこと無し。
極上の音楽を極上の演奏で。
4つの最後の歌よりも美しい曲がこの世にあるものか。
この異常に美しい歌は是非、みなさんも聴いてほしい。
おすすめの一品 イーグレン
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ということで、全てのことがほぼ忘れかかっているが、このドレスデンといつも対になって想起するのが、オトマール・スイトナー&ベルリン・シュターツカペレ。
この黒光りするビロードのようなサウンドをもつオケもなにしろ極上。
違いは何か。ドレスデンの方が少しほこりっぽい、感じ。
ドレスデンにいぶし銀のような音、と宣伝されても実感がわかない。むしろベルリンにその感が強い。ドレスデンは直情的ではなく機能的だと思う。
腕はおんなじぐらいだ。
当夜のブラ4は、あまり彫が深くなく、撫でるような感じだった。
別の夜のプログラムは、モーツァルト29番、マーラー4番、というものであり、両方聴いてはじめて振幅の度合いが理解できたのかもしれない。
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結局、この若杉とドレスデンの組み合わせ、そんなに話題になることもなく通り過ぎたようだ。
なぜだかわからない。
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