河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

PC版に一覧等リンクあり。
OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

447- 贖罪のタンホイザー 2007.10.21オペラパレス

2007-10-21 22:30:00 | オペラ

昨日はダニエル・バレンボイム、シュターツカペレ・ベルリン2007年来日公演の千秋楽。
シェーンベルクのモーゼとアロン。
めったに観れないものを観ました。
興味のある方は昨日のブログをご覧くださいませ。

それで、きょうは、新国立劇場改名してオペラパレスでのタンホイザー。
こんな感じ。

2007年10月21日(日)2:00pm
新国立劇場、初台

ワーグナー/タンホイザー

演出/ハンス=ペーター・レーマン
指揮/フィリップ・オーギャン

ヘルマン/ハンス・チャマー
タンホイザー/アルベルト・ボンネマ
ヴォルフラム/マーティン・ガントナー
ヴァルター/リチャード・ブルンナー
ビーテロルフ/大島幾雄
ハインリッヒ/高橋淳
ラインマル/小鉄和広
エリザベート/リカルダ・メルベート
ヴェーヌス/リンダ・ワトソン
牧童/吉原圭子

牧阿佐美バレエ団
新国立劇場バレエ団

新国立劇場合唱団
東京フィル


たしかに、パルジファルに比べればオペレッタみたいなもんだ。
でも音の鳴りはいい。
音楽の流れも豪放磊落とまではいかないが、無造作能天気とさえ思えるような箇所もある。
これはこれで、昔、くさるほど、でもないが、わりと観ている。

それでと、
第2幕で、いざ、ローマへ、旅立ったわけであるが、第3幕では失意のうちに戻る。
もうタンホイザーに価値はなくなっていると思われるのだが、早い話、ヴェーヌスがもう一度出てきて誘惑するに値する人間的価値、商品的価値がなくなっていると思われるのに、なぜわざわざ誘惑の舞台となるのだろうか。
それは、ひとえに40日も祈りをささげたリズ、エリザベートがそこにいるからであり、彼女リズにより高められたタンホイザーの価値なのである。
だから、リズが力尽きて死ぬのは何となくわかるが、タンホイザーまで死んでしまったら、もともこもなくなってしまう。
なんでこうなるのだろうか。
贖罪が死ならそれはむしろ楽である。
タンホイザーはこの後生き続け、ヴェーヌスとリズの間を一生さまよい続けるべき。
煩悩にとらわれの身となったタンホイザーは生きて地獄の苦しみを味わい続けなければならないのだ。
しかし、このプロダクションではリズの死は見えない。
タンホイザーの死だけである。これは逆だろう。
いずれにしろ、
ワーグナーのタンホイザーは、
終わる、
のである。

タンホイザーは歌が出てくるまでがやたらと長い。
第1幕序曲、バッカナールからはじめて見事なバレエの踊りをへて、約25分たたないと声がでてこない。
ここまでで第1幕の三分の一を使ってしまう。だからそれは演出の腕の見せ所でもあるわけだ。
メトでは40年前からある舞台の上下運動を新国立ではいま実現したわけで、それを効果的に使う。最初だけであるが。。
あとは静止に近い舞台。
バレエの振り付けは快楽の踊りであり、いやらしい。
タンホイザーはこんなところで夜な夜ないやらしくも安穏な日々をおくっているのだ。
これは罪で、なぜそこから逃れなければならないのか。
これはこれでわからないもうひとつの?だ。
いったいこのエロスな世界に浸ることの何が悪いのか、何が罪なのか、ワーグナー自身わかっていないのではないか。

ということで、いつもよくわからないタンホイザーではあるが、次のローエングリンなどとは違った脂ぎった面白さがあり、これはこれで真正面から向き合う価値のあるオペラである。


第1幕は歌が出るまで時間がかかるが、出てきてしまえばあっという間に終わる感じ。結構時間はかかっているのだが、ストーリー展開としてはしりつぼみの感があり、ヴェーヌスな世界のあと、ヴォルフラムが、リズのところへ、などと言っても、それはそれでいいなりになるタンホイザーではあるが、聴衆を説得させる力には至っていない。
きっとまた快楽の世界に浸るよね、思わずそう感じさせる。わりと浅はかな世界なのだ。

第2幕の歌合戦は、マイスタージンガーを思い浮かべてはいけない。
あれほど深みのある歌、音楽ではない。
エキサイトして切れてしまったタンホイザーは歌合戦の場を冒涜したが、それが罪なのではない。
ヴェーヌスの世界を賛美したのがいけなかったのだ。
あすこに自分は行っていた、としゃべってしまったことの何が問題なのだろうか。
劇的な舞台はワーグナーの面白さがよく出てはいる。

第3幕はもっと枯れた味わいが欲しい。
第1,2幕と同じ舞台だとどうも、心象風景のようなものがうまく表現できず、全幕のイメージがモノトーン的であり、もう少し変化が欲しい。

歌い手は、充実。
新国立劇場ではどこの席でもいい音で聴けるが、それにしても、みんな素晴らしい声をしている。
タンホイザーのボンネマは、芯のあるテノールだが、まだ少し固い気がする。
もっと歌いこんで、もっと素晴らしい歌い手になってもらいたいものだ。
リズのメルベートはでかい声、それと見事な安定感。歌が強すぎてややもすると陰影がなくなることもあるが、そんなことはこれからなおしていけばいい。
総じていい舞台。8重奏も素晴らしかった。

指揮のオーギャンは確信犯的伸縮解釈で、リズミックなところはやたらと早く、スローな所はさらにスローにしディテールを分解して見せる。
スロー部分は最近の流行であるからいいとしても、アップな箇所は音楽が硬直しておりこなれていない。
オケとの練習が少なかったのか、ほかに問題があったのか、いずれにしてもちょっと硬かったなぁ。
おわり


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。