河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2790- ダニエル・バレンボイム リサイタル 第1夜 2021.6.3

2021-06-03 23:55:25 | リサイタル
2021年6月3日(木) 7時 サントリー

オール・ベートーヴェン プログラム

ピアノ・ソナタ第1番ヘ短調OP.2-1
ピアノ・ソナタ第2番イ長調OP.2-2
Int
ピアノ・ソナタ第3番ハ長調OP.2-3
ピアノ・ソナタ第4番変ホ長調OP.7

のはずが、以下のプログラムが奏でられた。

ピアノ・ソナタ第30番ホ長調op.109  4+4-14
ピアノ・ソナタ第31番変イ長調op.110   8+2+12
Int
ピアノ・ソナタ第32番ハ短調op.111  10+19

バレンボイムピアノ、ダニエル・バレンボイム


昔読んだビリーバスゲイトのどこだったか、地下鉄の階段を駆け上がると明るい空が、みたいなちょっと物語とはあまりそぐわないけれども印象的な一文があって、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第1番の冒頭の駆け上がっていくオタマジャクシを聴くといつもそのビリーバスゲイトを思い出すし、今日も気持ちは準備万端、さてどうなるか。

念のため、始まる前に係の方に、休憩はどこで入りますかと訊ねたところ、2番の後です、と明快なお答え、で、みんなそのつもりのプロだった。

と気持ちを整えたその耳に聴こえてきたのは終楽章に素晴らしき変奏曲が展開されるその第1楽章のソフトでマイルドな響きが、なんと30番が、耳に聴こえてきたのであった。あれ、自分の耳壊れたか、と、プログラムをめくりなおす。はたまた、翌日に24時間瞬間移動したか。

この、演奏が奏でられている中で気持ちの切り替えを行うのは容易ではない。まあ、前代未聞、バレンボイム一世一代の勘違いプログラムは、結局30番31番32番とそのまま最後まで進んでいった。最後に勘違いアイムソーリーのスピーチ。

あとでSNSだったかなにかで次の文を見た。
「松田暁子さんは過去、バレンボイムのオペラ公演すべてのドイツ語通訳を務めた方で当日たまたま、聴きにいらしていたのです。休憩で事態を知り、スピーチを発案したマエストロは客席にもわかる人が多いとの理由で英語を主張しました。あまりに緊急な事態で松田さんに無理をお願い、お守り代わりでした。」

まあ、自分としては、ガチのソナタ4楽章構成の1番2番3番、それにガチガチの4番、この初期4つは大変に好み。で、録音だとバレンボイムが弾く4番のラルゴは29番ハンマークラヴィーアのアダージョを思わせ奮える、この期待感ではあったけれどもね。

二日続けて30-31-32聴くのも、いいか。なんせ、2016年驚天動地のブルックナー全集をやって来の日本にだしね。彼のピアノリサイタルは今や、接すること自体がひとつの僥倖といったところもあるし。


エポックメイキングな日となった歴史的6月3日、好物の31番終楽章入りの音の粒、ダニエルバレンボイムピアノで奏でられたその粒が、嘆きの歌を経て、一粒ずつがどんどん離れていって、何を弾いているのかどんどんわからなくなっていって、ふと浮かんだのは、これはブーレーズ作品の流れのプレイだな、と軽くよぎった。
ピアノとチェンバロを足して2掛けたような美しいピュアな響きのバレンボイムピアノ、効きましたね、タップリと堪能できました。

最初の曲30番は、ピアニッシモで繋いでいく終楽章の変奏曲が破格の美しさ。でしたが、最後まで気持ちを切り替えることがやや難しかった。好物31番で自分なりに救われた。32番は宇宙。

鮮やかに、さえざえとした宇宙の響きはバレンボイムの脳なのだろう。彼の隅々までさえざえとした脳の一端を垣間見るような32番の弱音美音に昇天、まあ、こちらはもんどりをうつのみですよ。
さて、明日は。


休憩時間に瞬間的に吐いたツイッターが、
「びっくり、ちょっと、鼻血でそ。30番から始まった」
「ヒャプニングかしらら」

おわり