書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

上里賢一 「毛有慶『竹蔭詩稿抄』 (資料紹介)」

2011年06月24日 | 文学
 〈http://ir.lib.u-ryukyu.ac.jp/bitstream/123456789/383/1/uezato_k02.pdf

 毛有慶は、沖縄人である。和名は亀川盛棟。脱清人 (だっしんにん)であった。
 僧侶が担った五山文学と俗人の毛の漢詩文とをくらべるのはあまりうまい比較とはいえないが、すくなくともこちらには和習はしないということは言える。あくまで私が見て判断するかぎりにおいてだが、それから、字句の選択も自在で、作者の個性が表されている。作品世界の色彩感の差は、それこそ作者が身を置く世界――僧と俗と――の違いではあるだろう。しかし一歩ふみこんで言えば、これはまた風土の違いでもあるかもしれない。

(『日本東洋文化論集(5): 43-72』1999-03)

入矢義高校注 『五山文学集』

2011年06月24日 | 文学
 『新日本古典文学大系』48。鎌倉・室町時代の五山十刹に住した禅僧たちの手になる漢詩文のアンソロジー。
 『懐風藻』のような「平仄まちがえたらどうしよう」的なぺっぴり腰はもう見られないが、外国語でという悲しさ、どうしてもネイティブの後を慕う月並みな発想と言葉づかい。入矢氏の注釈文を素直によむかぎり、和習(倭臭)もときにするらしい。

(岩波書店 1990年7月第1刷 1999年6月第3刷)

「Nothing new under heaven」 を読んで

2011年06月23日 | 政治
▲「Economist.com」Jun 16th 2011, from the print edition.
 〈http://www.economist.com/node/18836024

 2010年12月09日「『中国、独自に「孔子平和賞」創設 ノーベル平和賞に対抗』 から」より続き。
 やはり中国の保守派のなかには本気で紀元前11世紀に全世界を退行させようとしている者がいるらしい。
 正確にいえば、紀元前11世紀は上限。下限は紀元前221年の始皇帝による中国統一、つまり西周の初めから春秋戦国時代の終わりまで、中国式にいえば西周・東周時代である。私も周代の初めという意味で紀元前11世紀といったのだから、互いにまったく違うことをいっているわけではない。もっとも私は、これらの主張をなす人々は自分の行為が何を意味しているのかを自覚しているかどうか分からないと考えていたが(『新日本学』第20号「ガリレオ以前の中国人の思考形式」参照)、どうやら確信犯もいるようだ。彼らは、本気で国際法を華夷秩序に換え、国民国家を解体して、普天率土に「天下」を再興するつもりでいるらしい。ならば、周代の「天下」となれば、当然ながらその実現に当たっては「天に二日無し、土に二王無し」となるだろう。ならざるをえない。

YouTube 「[Great Movie Scenes] Scent of a Woman - Ending Speech」

2011年06月22日 | 映画
 〈http://www.youtube.com/watch?v=-OszHUW1YFk&feature=related

 アル・パチーノ主演映画でむろん5本の指に入る1本。演技そのものは、横綱相撲というか、自分の土俵に引きこんでの余裕の演技だが(近頃のミラクルひかるさんの宇多田ひかるさんの真似のように)、しかし、特殊なコンタクトも着けず見えたまま盲目の演技をこなしたうえでということであれば、文句のつけようもない。凄い。
 
 Harry, Jimmy, Trent, where you are, out there? Fuck you, too!

 この台詞を、野沢那智さんはどう言っていたかな? あとでDVDを借りて確かめてみよう。校正という辛い作業が終わった、その自分へのご褒美に。
 それにしても、ガブリエル・アンウォーの吹き替えは、沢海陽子さんだったんだ。昔、初めてビデオカセットで観て聴いたとき、もとの声にそっくりで(言葉が違うのにしゃべり方の雰囲気まで!)、その自然さに感嘆したのを、いまに憶えている。沢海さんといえば、『スタートレック ネクストジェネレーション』のターシャ・ヤー大尉や、『スタートレック ヴォイジャー』のセブン・オブ・ナインの低くて堅い声の印象が強くて、言われてもすぐには信じられなかった、正直なところ。

「ダナン:ロシア人観光客の誘致に注力」

2011年06月22日 | 地域研究
▲「VIET JO ベトナムニュース」2011/06/21 20:02 JST配信。
 〈http://www.viet-jo.com/news/tourism/110620060557.html

 なぜロシア人なのだろう。しかも昨年ベトナムを訪れた外国人観光客約500万人のうちのたった6万人というではないか。
 そういえば、ハノイの街の酒屋をのぞくと、ロシア語で書かれた段ボールが山積みになっている。中はロシアから輸入されたウォッカである。反対に、ベトナム原産のスピリッツは、ラベルにベトナム語に添えて英語で"Vodka"と、書かれている(“ルアモイ”や“ネプモイ”)。さらに"Vodka Hanoi"(Hanoi Vodka の意?)という銘柄になると、名前も英語だし味はウォッカそのままだった。そしてドンスアン市場で買って帰ってきたハス茶は、裏は英語・ロシア語・日本語の順で淹れ方が書いてある。表の商品名は、ベトナム語と中国語(漢字)である。
 ロシアとは、旧ソ連時代からの特殊な関係というものがいまでもなんやかやとあるのだろうか、このこともまたそうか。もちろん、短期的にも長期的にも中国の存在が両国関係のありかたを決める大きなファクターなのであろうけれど。双方でその意義と重要性は、とくに短期的には、ずれてくるだろうが。

「US and Japan drop Okinawa transfer deadline」 から

2011年06月22日 | 政治
▲「Al Jazeera English」Last Modified: 22 Jun 2011 00:24
 〈http://english.aljazeera.net/news/asia-pacific/2011/06/201162116298199142.html

 写真とキャプション。これは沖縄住民ではなくて中国人ではないか。しかも香港の米国総領事館前である。ひどい間違い。これが本当なら、唐淳風氏は我が意を得たりと喜ぶだろう。沖縄の住民は中国人で、言語も文化も中国のそれと同じという我が説のなによりの証であると。呉懐中氏なども、「だから沖縄の主権は中国に属するのだ」と口を尖らせて言うに違いない。

増田彰久・写真 大田省一・文 『建築のハノイ ベトナムに誕生したパリ』

2011年06月22日 | 自然科学
 仏領インドシナ時代のコロニアルスタイルを、越仏様式と呼ぶらしい。
 素人目には、それらの建物は、ベトナムに持ち込まれたフランスの建築様式が、ベトナム土着の伝統様式と融合して生まれた何かのように見える。実際にこの目で見たこのうちのいくつかはまさにそうだったし、この書に収められた見事な写真の数々で初めて目にする建物群も、そうである。ベトナムはいまは漢字をつかわないのだが、“越仏様式”という名前と字面が、実にふさわしく思えた。
 なお、個人的にはちょっと残念なことに、一般の民家については触れられていない。以前にも名を挙げたハノイの旧市街(36街)では、古い町家がまだまだ残っているが、郊外は破壊が進んでいるところもあるらしい。たしかに市内と空港の間を見ただけでも、中心から遠くなるほど町並みの印象が乱雑になった。

(白揚社 2006年4月)

「『2位じゃダメ?』のスパコン、速度世界1位に 理研」 を読んで

2011年06月20日 | 思考の断片
▲「asahi.com」2011年6月20日19時34分。(部分)
 〈http://www.asahi.com/science/update/0620/TKY201106200323.html

 理化学研究所が富士通と共同で開発中のスーパーコンピューター「京」が、20日発表されたスパコンの計算速度世界ランキングで1位になった。日本勢の世界一は2004年の「地球シミュレータ」以来7年ぶり。2位で中国製の「天河1号A」の3倍を超えるダントツの性能だ。

 そもそもスーパーコンピュータって、何に使うのだろうか。それが分からない。「ウィキペディア」の「スーパーコンピュータ」項には、なるほど用途が書いてあるが、「2位じゃダメ?」の答えにはなっていない。