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書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

王敏 『ほんとうは日本に憧れる中国人  「反日感情」の深層分析』

2005年02月23日 | 政治
 中国の歴史教育は反日教育ではなく、教える歴史事実が近現代中心のため、「反封建」「反帝国主義」がどうしても重視されてしまう結果だそうである。つまりこの筆者は中国の歴史教育では日本に関してまったく正確な事実を教えているのだと、こういう形で暗に言っているわけである。
 隠微な形の嘘である。そしてこれが嘘であることは例を挙げるまでもない。嘘であることは――少なくとも真実ではないことは――、専門家の本人が百も承知のはずであるから。

 一つ目。人は真実を語らなければならない。
 二つ目。だが真実を語りたくてもできない時は沈黙すべきである。
 三つ目。環境からの圧迫によって沈黙を守ることも不可能な時は、虚偽を語るほかはないが、他人に害をあたえることはあってはならない。
  (「曹長青評論邦訳集・正気歌」2003年7月12日「呉祖光氏の誠実、銭理群氏の原則――呉祖光氏追悼」参照)

 この人もまた銭理群氏の“三つの原則”の遵奉者なのだろう。筆者がいま二番目か三番目のどちらの段階にいるのかは微妙なところだが、いずれにせよ劉暁波氏の言葉を借りれば“人たるをやめるための”道をこの人が取っているということは、紛れもない。 
 昨年12月21日欄で取り上げた同じ著者の『なぜ噛み合わないのか 日中相互認識の誤作動』は素晴らしい本である。その評価を変えるつもりはない。しかしこの人ですらなお斯くの如きか。

(PHP研究所 2005年1月)