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書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

屈大均 『広東新語』

2014年02月02日 | 地域研究
 1700年刊の筆記
 この書に、マイクロスコープ即ち顕微鏡の、その「顕微鏡」という漢字訳語の、文献で徴せられる限り最初の例が見いだされる。

 有顕微鏡,見花鬚之蛆,背負其子,子有三四。見蟣虱毛黒色、長至寸許,若可数。 (「巻二 地語 澳門」)

 「花の雄しべ雌しべの上にいる蛆が子供を三匹か四匹背負っている。虱の毛が黒々として、一寸ばかりに見える。数えることもできそうだ」。虱云々はまだいいとして、前半分は何を言っているのかわからない。花鬚とは花蕊、雄しべと雌しべの総称である。これしか指す詞がないから雄しべと雌しべの区別ができないのはまだしも、何かの幼虫をハエの「蛆」と呼ぶのも、ずいぶん粗雑な認識であるし、まして蛆と称んだ以上、それ自体が成虫に対する“子”であるのに、背中にさらにその子供を背負っていると言うのは論理的に破綻している。