書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

鈴木亘『経済学者 日本の最貧困地域に挑む あいりん改革 3年8カ月の全記録』

2017年01月16日 | 政治
 誰もが自分のことで手一杯、それ以上は勘弁、全体や社会のことなど考える余裕などない、できれば自分のやるべきこともやらずしかし代金だけはもらいたいというのが普通の人の普通のあり方だということを、いまさらながらに想わされる内容。だがそのような、閉塞し凝滞した情況のなかで、事態を改善せんと現実に執着(としか形容のしようのない)し、絶えずあれこれの方法を見いだしてはそれをてこに少しでも動かそうとする著者の言動の壮絶な軌跡は、まさに“志のある人”のそれと評するべきであろうか。

(東洋経済新報社 2016年10月)