書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

蘭千壽/外山みどり編 『帰属過程の心理学』

2016年09月23日 | 人文科学
 帰属過程attribution、あるいはさらに溯って因果関係の認識が、人類普遍の思考様式であるのかどうか。またそうであるとして、ここでの”原因”がもっぱら作用因であることについて、なぜそうであるのかの説明はない。
 前者についてはNisbettによる反証井筒俊彦による反論(こちらは近代以前の非西洋文化圏における)があるし、後者においては中村元の通時的な全否定がある(インド仏教論理学においては作用因ではなく質料因もしくは形相因が原因として認められていること等)。

(ナカニシヤ出版 1991年3月)

高梨素子 『古今伝受の周辺 』 

2016年09月23日 | 日本史
 出版社による紹介

  古今伝受(伝授)の内容(記録を「聞書」とよぶらしい)は、字の読み方あり、発音あり、字義の解釈ありと、漢籍の注疏をおもわせる。個人的に連想したのは朱子の新注、また次いで『資治通鑑』の胡三省注である。歌そのものの解釈になると、「こう読むべきだ」という信念の吐露と、「こう読むのだ」という強制になる。

(おうふう 2016年5月)

張洋 『新疆漢語方言与維吾爾語比較研究』

2016年09月23日 | 人文科学
 原書名:张洋『新疆汉语方言与维吾尔语比较研究』
 百度百科の説明

 「第二章 新疆语言大观园中的奇葩——汉语方言」の、”第一节 新疆汉语的历史足迹”および、”第二节 新疆汉语方言的形成及分片”を、もっぱら読む。  

 第一節の要旨:前漢時代から新疆では漢語が話されるようになり、南北朝をへて唐宋時代には彼の地の藩王ですら漢語を使用するようになった。元明時代になるとこの傾向はますます拡大深化の傾向を進めるが、それを受けた清朝はこの地方での言語政策に意を用い、統治者の言語の通用と同時に現地語の存在にも留意した。この過程において、現地の漢語にウイグル語からの影響(借用語)が見られるようになった。
 第二節の要旨:こうして現在、新疆地域で話される漢語は①蘭銀官話北疆片、②中原官話南疆片、③北京官話片の三種に分類できる由。新疆における漢語話者は867.88万人、全人口の44.03%。最も話者が多いのは①である。

(乌鲁木齐 : 新疆人民出版社 2009年8月)