書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

加藤周一/M. ライシュ/R.J. リフトン著 矢島翠訳 『日本人の死生観』 上下

2006年08月23日 | 人文科学
 日本の社会は集団主義的で個人に対する圧迫がきつい、だから日本人は生きるのが辛い、日本人はこの世から逃げ出したいと心の底で思っている、だから日本人は死を恐れない、と著者の爾云。

  え?

(岩波書店 1986年4月第11刷ほか)

▲「Sankei Web」2006年8月21日、「重要文化財、秀吉の陣羽織を復元 京都・高台寺」
 →http://www.sankei.co.jp/news/060821/bun080.htm

 かぶいてますねえ。

ジェームズ・ファローズ著 大前正臣訳 『日本封じ込め 強い日本vs.巻き返すアメリカ』

2006年08月23日 | 政治
 日本異質論。その内訳は西洋代表としての米国中華思想と異文化蔑視。日本異質論は、とりもなおさず日本脅威論である。
 日本異質論=日本脅威論の根底にあるのは「非西洋文明」「有色人種」に対する蔑視と恐怖である。要するに黄禍論である。この本でおかしいのは、単民族国家日本と比較して多民族国家アメリカを顕彰しながら黄禍論なところである。
 ちなみに、それよりももっとおかしなことがあって、それは、元来日本人とともに黄禍論の対象として迫害された過去を持つ中国人が、たとえ一部分にせよ、この本の著者のようなこれも一部の米国人と同様、日本異質論を唱えていることだ。いずれ日本の国連安保理常任理事国入り反対と同じく日米の離間に最も効果的と判断しての戦略行動なのだろうが、長い目で見れば自分で自分の首を絞めるに等しい行為である。

(TBSブリタニカ 1990年1月初版第6刷)