くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「生き延びるための作文教室」石原千秋

2015-09-25 04:58:56 | 言語
 ラストの「坊っちゃん」の読書感想文を書く章がおもしろかった! 論文の視点は細部に宿ることがよくわかりました。わたしも学生のころにもっと考えを深めておくべきだったと思います。
 石原千秋「生き延びるための作文教室」(河出書房新社)。14歳の世渡りシリーズですが、これをすんなり理解する中学生は恐るべし。
 大まかにいえば、ふたつの作文指南をされています。「プロット型作文」と「審査員特別賞狙いの読書感想文」。
 まず、「プロット型」とは「ふつうは~しかし~」の構文で主張を書くもの。二項対立ですね。わたしは「確かに~しかし~」で書かせることが多いです。批判をそのまま相手に投げ返す「クオーター制」など参考になりました。
 で、読書感想文の方はというと、国語の教科書に採用されている「坊っちゃん」を俎上に、細部に目を向けて新しい解釈をする方法が描かれます。
 例えば、「佐幕派の文学」と唱えた平岡敏夫さんの視点。また、実は学歴のある「坊っちゃん」の立身出世を願う清が、将来麹町に家をもつのだと語る一貫性。
 そういえば、清水義範さんが教育実習でこの作品のテーマが「清への愛」だなんて納得いかないと憤慨していましたね。
 わたしは「坊っちゃん」は読書クイズ+文庫読みをしますが。(あんまり主題にはこだわらないので)

 「ふつう」であること。違う視点をもつこと。それでも、状況に合わないような考えはうまく隠すこと。
 中学高校で書くような「道徳的視点」や「みんな同じような読み方しかできない」ことから脱却させるために、石原先生は苦労されているようです。
 基本的には、文学を読み取るときにはある共通したストーリーがあるわけですが、作品の細部を読むことで違う物語が浮き上がるということだと思います。表面的に読んだだけではつかめない。
 わたしは学生時代、「春琴抄」の佐助犯人説に非常に感銘を受けたのですが、そういうことではないかと思いました。
 

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