くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「誤認逮捕」久保博司

2012-01-08 06:52:57 | 社会科学・教育
警視庁所属の刑事さんにお会いしました。
といっても、東京で何かあったわけではなくて、同級会で会った教え子が刑事になっていただけなんですが。
「今度推理小説を読むときには、彼をイメージして読もう~」と思っていたんですが……。その前にこれを読んでしまいました。
久保博司「誤認逮捕 冤罪は、ここから始まる」(幻冬舎新書)。
警察官の方は大変なんですね。捜査情報に間違いがあったときなど、真犯人ではない人を逮捕してしまうことも少なくないようです。自白の強要による冤罪事件などが問題になりますが、たしかに取り調べている間はその人を犯人だと信じていますから、どうやって「落とす」かになっていきがちなんでしょう。
ずいぶん前に痴漢の冤罪にあった人の手記を読みましたが、間違われて不当な目にあった「怒り」はなかなか消えないものだと感じました。
本書には誤認で逮捕された例が、様々なパターンに分けて紹介されていきます。
目撃証言の誤り、捜査の判断ミス、勘違いや思い込み、虚偽の供述……。
中でも驚愕は、犯人とよく似ていたという容疑者でしょうか。あるスーパーで万引きをした女性。警備員が追い掛けると、自転車を置いて逃走。持ち主に連絡したところ、妻が盗まれたと言っていたとの返事。しかし、顔を知っているからとある女性を逮捕したら、絶対に自分ではないと主張され、念のために自転車の持ち主に会ってみると……。
もうお分かりですね。二人はびっくりするほどよく似ていたのです。
この本は新聞の書評で見て興味をもち、横浜で購入しました。結構地元でも探したんですが見つからなくて。探す過程で「加害者家族」を買ったんですけど、根っこが似ているからでしょうか。二冊に共通するキーワードがいくつかあるように思います。
その一つが、「世間」。外国にはないこの概念が、どちらにも紹介されていました。また、たとえ冤罪であっても、加害者の家族は苦汁をなめることになると書かれていたこともありました。
誤認逮捕というと、最近では足利事件で犯人と目された菅谷さんが思い出されますね。ある曲面では犯人の可能性がある。しかし、別の角度から見るとそうは思えない。一方的な尺度で、決めつけるわけにはいかないのですね。
「警察無敗神話」にやっきになって現場を締め付けるのはやめるべきだと筆者は語ります。外国と日本では「逮捕」の概念がかなり異なるのだそうです。「任意同行」に近い状況なら、まだ警察には余裕がもてるのではないかということですね。
間違いを許さないのではなく、どういう対応をとれるかなのだと思います。一般人としては、自分はやっていないのだから、話せば分かってくれると思うのに、自白を強要されて「犯人」になってしまうのは、やはり問題ですよね。