くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「てるてるあした」加納朋子

2012-01-30 05:38:06 | ミステリ・サスペンス・ホラー
早速図書館で加納さんの本を借りてきました。「てるてるあした」(幻冬舎)。
佐々良という町にやってきた「私」(照代)は十五歳。両親が享楽的な生活をした揚句、夜逃げを決行。照代だけが、母の遠縁にあたる鈴木久代さんに預けられることになります。
久代さんは「魔女」とも「閻魔大王」とも言われる厳しい女性で、元は小学校の先生。しぶしぶ同居させてはくれますが、働くことを求められます。
久代さんの友達のお夏さんと珠子さん、みんなが自然に集まるサヤさんの家、その友人のエリカさん。子供のユウスケとダイヤ。電気屋の松ちゃん。市場の大木さん。
小さい町。全く知り合いのいない第一歩から、次第に親しい人が増えていくのです。
高校生のエラ子(本当は「偉子」で「よりこ」)と知り合い、数学の問題を解いてやったことで、勉強に対する思いに気づく照代。勉強がしたいのか、高校に行きたいのか。久代さんに言われた言葉を噛み締めながら、次第に視野を広げていきます。
照代と久代さんは共同生活を続けますが、ある日、家に幽霊が出現。腰を抜かしそうになる照代をよそに、久代さんは淡々としている。どうやら心あたりがあるらしいのですが……。
テーマに据えられるのは、虐待の連鎖でもあります。照代も母も、久代さんに向き合ってもらったからこそ生きていける。
やたらと早く最終章にたどり着いたなと思ったら、なぜか、途中の二編をとばしていて、意味不明の登場人物や出来事があって頭を抱えてしまいました。いつの間にカセットをあげてしまったの? 冷蔵庫の絵って何? 等々。いや、なんでとばしてしまったのか、記憶が曖昧です。「幽霊とガラスの林檎」を読み終わったところで、用事があったんでしょうね。(娘にピアノを買ったので、その手続きかと)
で、買い物してから「花が咲いたら」を読み、夕ご飯を作って「実りと終わりの季節」を読んだんです。
でも、まあ、事情がクリアーになってから「ゾンビ自転車」と「ぺったんゴリラ」を読むと、伏線がはっきりしますね。
夏の暑い日、エアコンも扇風機もないし、家電は旧式であると語る照代は、久代さんの言葉を紹介します。
「あたしが死ぬまでもってくれりゃあもうけもん」
それに対して、
「家電は普通、百年ももちませんよ」と返したら、久代さんは笑ったというのですよね。
読んだからわかるのは、久代さんは自分の死期を知っているということ。
とても、重い。
この話は、視点が照代でありながらも、根本のところは久代さんの物語であるように思います。
前作の「ささら さや」を読んでいないのですが、おそらくそこでも、久代さんは堅苦しくて背筋をぴんと伸ばしたおばあさんなのでしょう。
最後に一人だけ特別に受け持った女の子のことが、今でも不憫でならず心にひっかかっているような。厳しいけれど、いつも誰かを気にかけている久代さん。ワカッテルヨ、キイテルヨ、シッテルヨ、ヤッテルヨと答えた沢井やす子。彼女が何者なのかを告げずに、何気なく「慶子さん」(けいこ、とふりがなが!)と言ってくれるやさしさ。
壊れてしまっても、またかたちを変えて誰かの役に立てる。そんなメッセージも伝わってくる物語でした。