久しぶりに沖合底曳網で漁獲される魚の紹介でも。スズキ目・ネズッポ科・トンガリヌメリ属のソコヌメリ。一見浅い砂底の海にすむ普通種「ネズミゴチ」によく似ている種であるが顔つきはだいぶ異なり、体も太めのようである。トンガリヌメリ属の魚は、ネズミゴチなどを含むネズッポ属の魚によく似ているが、尾鰭の軟条のうち、中央部にある二つの軟条が不分岐であるという特徴を持っている。
このソコヌメリは雌である。雄は臀鰭の下半分が黄色で、雌は外縁が明瞭に黒っぽくなる。第1背鰭の第3膜には大きな黒い斑紋がある。この斑紋は円形に近いこと、第1背鰭の第1棘は第2棘とほぼ同じ長さであることから、斑紋がやや細長く、第1背鰭の第1棘が長いクジャクソコヌメリと区別することができる。
トンガリヌメリ属は本種、クジャクソコヌメリ、トンガリヌメリの3種が日本に分布している。分類については日本と海外では大きく異なっており、例えば比Fishbaseにおいては本種はCallionymus属の中に含めているが、日本産魚類検索ではBathycallionymusとされている。後者に従うのが妥当であるように思われる。
ネズッポ科のうちネズミゴチやヨメゴチなどは底曳網で多く漁獲され食用となっている。本種はやや深い水深150mくらいの場所に生息しているようで、沖合底曳網漁業でたまに漁獲される程度であり、食用になることはほとんどないように思われる。愛知県以南の太平洋岸に分布し、台湾にも生息しているようだ。