魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

珍しいトウザヨリ

2018年03月05日 12時33分31秒 | 魚紹介

最近はぶろぐ更新の頻度があがってきている。長い冬も終わって春が近いからだろうか。昨日はテッポウウオ水槽のろ材を交換した。1年もろ材を交換していなかったのでヘドロがたまっていた。

今回も定置網で漁獲された魚のご紹介。サヨリ科・トウザヨリ属のトウザヨリ。紅海・東アフリカからハワイ諸島を経て北米西海岸や南米エクアドルまで極めて広い分布域を持っているらしい。

トウザヨリはほかのサヨリ科魚類の大部分とは異なった特徴を有している。胸鰭が非常に長いのだ。この長い胸鰭でトビウオの仲間のように「滑空」をするらしい。実はこのトウザヨリは分子系統樹によればホシザヨリ属やサヨリトビウオ属などとともにトビウオ科に含められるべき種だという。なお、トウザヨリの含まれるトウザヨリ属は2種類が知られており、もう1種のEuleptorhamphus veloxは大西洋の熱帯域に分布しているが、その種の英語名はフライングハーフビーク、すなわち「空飛ぶサヨリ」である。なお、トウザヨリの英語名はリボンハーフビークという。体、あるいは胸鰭が長いのをリボンに見立てたのだろうか。

トウザヨリもサヨリ同様食用にできるようであるが、あまり漁獲されることがないため、市場に出まわることはほとんどないようだ。もちろんスーパーの鮮魚売場で出会える可能性はほとんど皆無である。こういう魚に出会えるのも定置網の漁師の方々とのお付き合いができたからである。ここで感謝申し上げたい。

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ミナミイケカツオ

2018年03月04日 10時11分50秒 | 魚紹介

前回、このぶろぐでノトイスズミについての記事を書いた。ノトイスズミの写真が入っている、定置網の魚のフォルダには定置網で漁獲された懐かしい魚の写真が色々と出てきたのであった。残念ながらこの定置網は廃業されたらしく、もう魚は手に入らない。これまでのご支援に感謝したい。このミナミイケカツオもその定置網で漁獲されたものである。

名前に「カツオ」とあるが、アジの仲間である。アジ科イケカツオ属。確かにほかのアジとは異なり稜鱗はなく、口が大きいのでサバ科の魚のようにも見える。南方系の魚で分布域は南東アフリカ~ハワイ諸島にかけてのインドー太平洋域。日本においては佐渡島以南の日本海岸と、関東地方以南の太平洋岸で、もちろん琉球列島にも分布している。本州沿岸では幼魚が多いが、愛媛ではたまに大きめの若魚サイズも出るようだ。成魚は全長50cmに達する。

イケカツオ属の魚の特徴は背鰭にある。背鰭の棘には鰭膜がなく、ひとつひとつが独立している。ちなみにこの背鰭の棘には毒がある可能性もあるという。そのためなるべく触らないように注意したい。

なお、先ほども述べたように、アジの仲間であるが稜鱗はない。本種は口がやや小さく、体側の斑紋が一列に並ぶことにより、ほかのイケカツオ属魚類と見分けられる。

ミナミイケカツオの口は瞳孔の後縁直下までにしか達しないことと、体側の斑紋が一列しかないことにより、口が眼の後縁下にまで達し、体側の斑紋が2列のイケカツオと区別できるとされている。しかし稚魚はどうだろう。この口の特徴は体長20cmを超えるサイズの個体でなければ同定形質としては使うことができないようだ。

本種を含むイケカツオ属の魚は世界に4種が分布し、わが国にはそのうち3種が知られている。近縁の属には南西大西洋に固有で1属1種のスジイケガツオや、北米~南米の両沿岸に生息するオオクチアジ属が知られている。これらは新大陸周辺の産であり、インドー中央太平洋ではイケカツオ属のみが見られる。この3属でScomberoidinaeというひとつの亜科(およそ10種)を形成するが、同じく稜鱗と第1背鰭棘の鰭膜のないコバンアジ科と近縁かもしれない。

イケカツオの仲間はゲームフィッシュとしてよく知られている。とくに「クイーンフィッシュ」の英名で知られるオオクチイケカツオは全長1m近くになり、ルアー釣りの対象魚として有名である。味も良いらしいので食べてみたい魚たちである。

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ノトイスズミ

2018年03月02日 12時23分38秒 | 魚紹介

最近理由があってイスズミ科の勉強をしている。その理由は残念ながらまだお話できないのだが、とにかくイスズミの仲間をいろいろ見比べているのである。

しかしなぜかイスズミ科の魚の画像をほとんどもっていない。フォルダにあったイスズミ科の魚はほとんどすべてがテンジクイサキであった。なぜかはわからないがテンジクイサキばかりであった。

その中で唯一テンジクイサキ以外に画像があったのがこのノトイスズミであった。これは自分で採集したものではなく愛媛県南部・愛南町の西海にある定置網漁師の方からいただいた個体である。

ノトイスズミの「ノト」というのは「能登」のことだという。これはこの仲間を研究していた酒井恵一氏により1991年に種の標準和名が提唱された。このときに学名はつけられていなかったがのちにKyphosus bigibbusとされ、従来この学名が使用されていたミナミイスズミは2004年に新種記載された。

ノトイスズミとミナミイスズミはそっくりであるが、胸鰭の形は若干異なっているようである。たしかに写真などで見るミナミイスズミは胸鰭がやや長めで先端が少し伸びているのに対し、ノトイスズミの胸鰭はやや短く先端は丸みをおびている感じである。ただ最も見分けやすい形質は計数形質、つまり数値で表せるもので、ノトイスズミは鰓耙数が21~24なのに対し、ミナミイスズミでは26~29とやや多めである。

背鰭軟条数は12。おそらく背鰭軟条数12であるミナミイスズミとはこの特徴では区別できないのだが、背鰭軟条数が14あるイスズミとはこの形質で区別できる。ただし個体がのこっている、または背鰭軟条部を数えることができるような写真を残しておく必要があるのだが。

また生時の色彩はイスズミが銀色で体側の線が黄色っぽく鮮やかなのに対し、本種の体は大変失礼ながら汚い茶褐色で、真っ黒になっていたりすることもある。頭部の線も残念ながらイスズミほどきれいなものではない。ただしこの写真の個体は一度冷凍したものであり、本来の色彩ではない。一方、ミナミイスズミの色は青みをおびた灰色の色彩で、頭部の線も灰色っぽいことが多いのだが、この種の中には前進が黄色でお腹が白っぽいものや、体全体が白っぽい個体が出現することが知られている。この色彩変異の理由は不明ではあるが、黄色い個体を1か月飼育していると元の色彩に戻ってしまったということで、別種ではなく色彩変異らしい。

ノトイスズミは本州~九州にも多く分布する種で、東北地方太平洋岸や日本海にも出現するお馴染みの魚である。イスズミ科の魚は内臓は臭く、釣りあげてすぐ糞をするのであまり食用としては人気はないのだが、このノトイスズミは美味しいとされる。ただしまだ私は食べたことがないので、今後の課題といえるだろう。

●文献

酒井恵一,1991.日本のイスズミ属魚類は4種.I.O.P. Diving News. 2(8):2-5.

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