魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

喜界島のカエルウオたち

2016年05月04日 06時30分15秒 | 魚紹介

喜界島のカエルウオの仲間、ここまでスジギンポ、ケショウギンポの2種類をご紹介していたが、ほかにも多数のカエルウオの仲間が採集出来た。

タマギンポ

岩礁のタイドプールに生息する。干潮時には磯をはい回る。タネギンポと同じような行動をする種ではあるが、タネギンポは礁湖付近やそのほかあちこちにいるのに対して本種はイワサキスズメダイやスジギンポがいた場所の近くで見られた。同属の魚であるタネギンポの頭部には白い斑点がないが、このタマギンポでは白い斑点が多数みられる。2010年にも潮だまりでこの種をみたことがある。タネギンポも採集したのだが、残念ながらバケツの隙間から飛び出してしまった。タネギンポ属の魚は日本では3種が見られる。もう1種カブキギンポはまだ見たことがないが、屋久島や西表島にも分布しているので、喜界島でも見られると思われる。

ホホグロギンポ

ハナカエルウオ属の魚である。この属の魚は雌雄で斑紋に違いがあるものが多いが、この種もそうで、雄は体側に細かい線が入っているが、雌は細かい線がなく暗色の斑点がある。雄も採集していたのだが、採集後に水を変えるためにバケツの蓋を開けたらぴょーん、と飛び跳ねて逃げてしまったのである。大型個体は全長10cmほどあり、やや大きくなる種のようであった。喜界島のほか琉球列島に広く分布し、和歌山県から高知県、種子島、屋久島でも採集されている。

シマギンポ

ヤエヤマギンポ属の魚である。ヤエヤマギンポは全長12cmを超える大型種であるが、この種は小型で大きくても5cmほどらしい。ヤエヤマギンポとは胸部に大きな円形斑があることや、眼や項部の皮弁が分岐しないことで区別することができる。この種は6年まえにヤエヤマギンポを採集した礁湖の中で採集したものなのだが、その場所にはヤエヤマギンポは見られなかった。ヤエヤマギンポ属の魚は日本に3種が分布している。もう1種ヒレナガカエルウオはまだ観たことがないのだが、屋久島で採集できているので喜界島でも採集できる可能性が高い。なおシマギンポはこのなかでも北方に生息する種で和歌山県や高知県でも採集できる。

ヒナギンポ

体長4cmほどの小型種。岩礁域のタイドプールに生息していたもので、イワサキスズメダイとおなじような場所で採集出来た魚である。体側の後方に細かい模様があること、臀鰭に暗色の横線があることなどが特徴である。また雄は頭部の腹面に大きな黒色斑が1対あることが特徴というがこの個体にはそれがなくおそらく雌なのだろうと思われる。分布は屋久島、琉球列島。海外では西太平洋~サモア、トンガのサンゴ礁域、インド洋のクリスマス島。ヒナギンポ属は現在のところ、1属1種。

ロウソクギンポ

ロウソクギンポは項部の皮弁を欠くこと、眼の上方に分岐しない細長い皮弁を持つことが特徴である。体は緑色っぽく、しみのような黒い斑紋と、短い線のような青白い小斑点がある。生息地はやはり岩礁域のタイドプールのような場所で、数多く見られた。これは無事に持ち帰ることができ、現在も飼育中である。餌はもうすでに配合飼料を食している。ロウソクギンポ属は5種がしられて居るが、日本に生息するのはロウソクギンポのみ。

ここで紹介した5種のほかに、今回同行した方はヨダレカケを目撃されていた。さらに写真はないのだが、ニセカエルウオとタネギンポも採集できた。喜界島は河川がなく隆起サンゴ礁の島であるため、ハゼの類は少ないがこういうカエルウオの仲間はほかにも多数みられるのだと思われる。

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シビレエイ

2016年05月02日 10時44分30秒 | 魚紹介

これから1週間ほど行方をくらまします。休暇です。携帯は持っていきますが、PCやタブレットなどは残念ながらおいていきますのでお返事が遅れることになると思います。

足摺沖のシビレエイ

このぶろぐでは板鰓類の登場は少ない。サメの仲間も驚くほど少なかった。ドチザメ科のサメもエイラクブカとホシザメしか出てこなかった。サメの仲間は背鰭に見える鰭条がなく同定が厳しい。エイも過去に5種しかこのぶろぐに登場していない。

今回はエイの仲間でもちょっと異端な種、シビレエイを紹介。検索図鑑第二版ではエイ目シビレエイ科となっているが、2013年の第三版では目がかわり、シビレエイ目・シビレエイ科となっていた。魚類検索第三版ではシビレエイ・ハクテンシビレエイ・ネムリシビレエイ・ヤマトシビレエイ・ゴマフシビレエイ・タイワンシビレエイの6種がシビレエイ科として掲載されているが、海外の文献や国内でもまた別の図鑑(日本の海水魚)では最初の3種をシビレエイ科Narkidae(シビレエイ属、ネムリシビレエイ属など6種)、ヤマトシビレエイやゴマフシビレエイをヤマトシビレエイ科Torpedinidae(1属)、タイワンシビレエイの仲間をタイワンシビレエイ科Narcinidae(4属)と分けている。このほかにオーストラリア近海に特有のHypnidaeという科もある。これはゴウシュウシビレエイと呼ばれる1種のみをふくむ科で、見た目もほかのシビレエイの仲間とは大きく異なるユニークな種類である。

尾鷲のシビレエイの黒い模様

日本に生息しているシビレエイの仲間は2種。シビレエイとハクテンシビレエイ。ハクテンシビレエイはシビレエイに似ているが体盤の背面に大きな白色斑があることや腹鰭の縁辺が凹むのが特徴とされている。シビレエイは腹鰭前縁は凹まず体の背面には白色斑はない。ただしシビレエイには体盤背面に黒い点が出ることがある。

標準和名や別名の「デンキエイ」は本種が発電を行うことに由来。体盤の前のほうにハチの巣のような形の発電機をもち、50~60ボルトの電気を出す。温和な種で自分から攻撃することはまずないのだが、網にかかったときなどに注意する必要がある。食べることも可能なようだが、普通は水揚げされていない。沖合底曳網漁業では水深150mほどの海底でよく漁獲されているが、もっと浅い場所でも定置網などで漁獲されている。

シビレエイの背鰭

なお沖合底曳網漁業ではほかにヤマトシビレエイも見ているのだが、この種はもっと深い場所に多いようだ。なおヤマトシビレエイは背鰭が二つあるので一つしかないシビレエイとの区別は容易。

シビレエイの稚魚

なおエイの仲間はガンギエイの仲間をのぞきすべて胎生で仔魚を産む。この個体もトップ画像の個体と同じ網で採集された。

 

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ゲンコ

2016年05月01日 09時50分46秒 | 魚紹介

カレイ目・ウシノシタ科・イヌノシタ属のゲンコ。

ゲンコは千葉県銚子・京都~九州までの日本近海と台湾に生息する普通種。

本種の特徴は有眼側に側線が2列あること、無眼側には有孔側線がないこと、吻がやや丸みをおびること、背鰭と臀鰭の鰭条に小さな斑点があること、背鰭と臀鰭の鰭条数がそれぞれ105~114、および81~91であることなどがあげられる。これらの特徴によりほかの日本産イヌノシタ属魚類と見分けることができる。


ゲンコによく似た種にはオキゲンコや、オタフクゲンコなどがいる。オキゲンコは背鰭と臀鰭軟条数がゲンコとかぶっているし、鰭条の特徴もよく似ているが、有眼側の側線は3列である。オタフクゲンコの場合は側線がゲンコ同様2列だが、背鰭と臀鰭の軟条数がそれぞれ114~118、91~93軟条であること、背鰭と臀鰭の鰭膜は一様に暗色であること、ゲンコの脊椎骨数52~54なのに対し、オタフクゲンコでは56~57と重複しないなどの点で区別できる。オタフクゲンコは現在東シナ海からのみ記録されているが、九州沿岸で採集される可能性もあるのでチェックしたい。ちなみにオタフクゲンコは未記載だという。もう一種のヒレグロゲンコは以前にブログで記事を書いたのでそれを参考にしてほしい。背鰭や臀鰭の軟条数はゲンコとかぶるが、種標準和名にもあるようにこれらの鰭が一様に黒っぽいのが特徴である。

生息水深もゲンコ、オキゲンコ、オタフクゲンコではやや異なっている。ゲンコは水深10~140mと、この仲間では浅い場所に見られ、オタフクゲンコもゲンコに近い。一方オキゲンコは水深220mほどの場所まで見られやや深海性である。ちなみに宇和海の沖合底曳網漁業ではヒレグロゲンコしか見ていない。オキゲンコもまだみていない。上の写真の個体は愛知県三河一色で水揚げされた、廃棄されてしまう魚の中から見つけたものである。トビヌメリやアラメガレイ、ササウシノシタなども入る、比較的浅い水深の漁である。

ゲンコが含まれるイヌノシタ属は、日本産のウシノシタ科魚類としてはもっとも多くの種を含む属である。日本産ウシノシタ科魚類は20種が知られているが、そのうち12、3種はこの属の魚である。ほかアズマガレイ属4種、タイワンシタビラメ属3種。ほかオオシタビラメ属は1種で、イヌノシタ属に入れられることも多い。ゲンコはこの仲間としては小型であるためか、あまり利用されないようである。

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