魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

ナガサキトラザメ

2016年05月14日 10時35分01秒 | 魚紹介

板鰓類シリーズも勝手にはじめたはいいですがもう若干ネタが切れてきた感じが。今日の紹介はメジロザメ目・トラザメ科のナガサキトラザメ。

ナガサキトラザメは体が同じトラザメ科のトラザメやナヌカザメと比べてほっそりしたような印象を受ける。体には小さな黒色の斑点が入る。まるでヒョウのような模様であるが、ヒョウザメという種類のタイワンザメ科のサメもいて、その種はまさしく海のヒョウだ。以前はカリフォルニアに分布するドチザメの仲間に「ヒョウザメ」の名前をあてていた本があったが、この名は現在はこの種に対しては使えない。これは先ほどのタイワンザメ科のサメの一種に充てられるべき名前だからだ。このほかに吻がやや短いことや、体に白色斑をもたないことなどもほかの日本産トラザメ科魚類と区別するポイントである。

ナガサキトラザメの斑点

体に黒色の斑点が散らばることでほかの日本産トラザメ科魚類との区別は容易。

トラザメの仲間は基本的に卵生であるとされ、ナガサキトラザメも卵を産む。12~翌年の4月に卵殻に包まれた仔ザメを7個体ほど産むようだ。

ナガサキトラザメの腹面

上の写真の個体の腹面。雄であろう。立派な交接器を有している。

ナガサキトラザメの雌

こちらは雌と思われる。

 

分布域は北海道留萌~鹿児島県の主に太平洋岸、長崎県沿岸、東シナ海、韓国沿岸、そして台湾近海。日本では長崎近海で多く採集されていて、その地域では惣菜として食べられているようだがほかの地域ではほとんど利用されることはない。しかしトラザメの仲間で、温和でありあまり広いスペースが必要ないともいわれ、水族館の水槽で飼育されていることもある。日本に分布するナガサキトラザメ属のサメはこの種のみ。世界ではインドー太平洋に7種が知られていて、その中には2007年に新種記載された2種を含む。いずれにせよ研究が進めばこの仲間はさらに増えるであろう。

生息水深は100m前後であり、まれに水深200mほどの深さの海域でも漁獲される。この個体は鹿児島県のやや深い海底から沖合底曳網漁業によって採集されたものである。アカタマガシラやアカグツ、アシロ、カワビシャなどと同じような環境の場所に見られるようだ。いずれにせよ底曳網漁業では本種はあまり有用ではなく、多くの場合は海へと戻される。沖合底曳網漁業で食用になるサメはほとんどがドチザメ科のサメで、メジロザメ科やカスザメ科のものもかつては練製品の原料として水揚げされていたのだが、現在ではあまりそういうのをさばくところも少なくなってしまったようである。

なお今回の標本は神奈川県立生命の星・地球博物館の瀬能宏博士に送付した。魚類写真資料データベースの写真は更新され、瀬能博士によるこの個体の標本写真が掲載されている。番号はKPM‐NR0108527。

以下は余談。

トラザメの仲間は英語でCat sharksという。Tiger sharkはイタチザメのことをいう。しかしWeasel sharkはメジロザメ目ヒレトガリザメ科の仲間のことをいう。一方でネコザメの類はBullhead sharks、またはPort Jackson sharksとも呼ばれる。日本に生息するネコザメはJapanese bullhead sharkと呼ばれているようだ。いずれもFishbaseのコモンネーム。

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ガンギエイ

2016年05月13日 14時35分26秒 | 魚紹介

昨日はお休みをいただきまして、連続「板鰓類」シリーズの続き。ガンギエイ目・ガンギエイ科・ガンギエイ属のガンギエイ。

ガンギエイ目も、昔の魚類検索ではエイ目(エイ亜目・ガンギエイ上科とされた)の中に入れられていたが、現在は独自の目に昇格している。この目の中に含まれるのは3科ほどあるが、日本で一般的に用いられている分類体系では3科ともガンギエイ科の中に含まれていることが多い。

さて、ガンギエイ。ガンギエイの仲間の尾は太目でムチのようにはなっていない。そして尾部背面に小棘がならび、大きな毒棘を有さない。この小棘の列数は雌雄で異なるといわれている。また尾部には背鰭があり、さらに小さな尾鰭があるが、写真からは尾鰭はわかりにくい。

体盤は茶色っぽく、不明瞭な大きめの斑点があるのも特徴的。大きくても全長70cmほど。日本産のガンギエイ属は4種が知られているが、本種はやや小型種で、吻が短めであることでキツネカスベやテングカスベと、腹鰭前葉が短いことでゾウカスベと見分けられる。ゾウカスベはこの仲間では特に大きくなる種類で全長2m近くになる。なおエイの仲間はほとんどの種が胎生で仔エイを産むが、このガンギエイの仲間だけは卵生である。

本種は北海道~九州、東シナ海と日本の広い範囲に分布するエイで、数が多い普通種のようである。以前参画していた「WEB魚図鑑」への登録数がすくないのは、おそらく本種の生息環境によるのだろう。水深30~150mの海域で網をひく底曳網漁業ではよく獲れるというが、それより浅い場所・深い場所ではほとんど漁獲されないのである。

ガンギエイ科のエイは全世界の海洋に分布し、南極の冷たい海に生息するような種もいる。ソコガンギエイ属のエイなどは深海底に生息し、そのなかのチヒロカスベは2906mの海底でも採集されているようだが、これはエイの仲間では最も深いところで採集されたもののよう。その一方、コモンカスベ属のエイは浅い砂底に生息し、陸からの投げ釣りで釣れる種もある。

漁業としては底曳網や刺し網などで漁獲される。食用用途としてはエイ鰭、もしくは練製品原料に使用されることが多い。本州から九州の沿岸で見られるコモンカスベ属の種は定置網などで漁獲されているが、リリースされるか、投棄されることが多い

 

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シロザメ

2016年05月10日 10時22分02秒 | 魚紹介

連続で板鰓類(ばんさいるい)の記事。今回はメジロザメ目・ドチザメ科・ホシザメ属のシロザメ。

シロザメは全長1mほどの中型のサメで、日本においては東北地方以南の太平洋岸、佐渡以南の日本海岸に生息し、東シナ海、南シナ海にまで分布している。メジロザメ目の仲間ではあるが、メジロザメよりもずんぐりしていて、性格もおとなしい印象。

日本産のホシザメ属の魚は本種とホシザメの2種が知られているが、見分けは難しくない。ホシザメは体の背部に小さい斑点が散在するのだ。一方このシロザメは海中で見ると鰭の縁が少しばかり白っぽくなるほかは目立つ模様はない。

シロザメの歯

シロザメに似ていて見分けも難しいものに、エイラクブカというサメがいる。エイラクブカはシロザメと違い、ドチザメ科エイラクブカ属に含まれるサメなのだが、その見分けは難しい。見分ける最大のポイントは歯の様子で、シロザメは敷石状に並んだ扁平な歯であるのに対し、エイラクブカでは鋭くとがった歯を有している。ただし見た目だけでシロザメか、エイラクブカを判断するのは難しい。もっともサメの仲間、特にメジロザメもくのサメはそんなものばっかりである。エイラクブカとシロザメの見分け方の詳細はまたエイラクブカが手に入ったときにでも。

生息域は水深100mまでの海底。200mより深い深海から採集されることもある。定置網、底曳網などで漁獲され、また、たまに釣りでも採集され釣り人を驚かせることがある。食性は肉食で魚や甲殻類、イカなどを捕食する。このため船釣りで釣れることがあるのだ。

シロザメ胎仔

繁殖の様式は胎生で30cmほどの仔サメを10個体前後産む。写真の個体は雌で、腹からは仔サメが出てきた。上の写真がその仔ザメ。これは食べたいという方に譲った。今回の個体は愛知県の三河一色さかな村で購入したもの。ドチザメの仲間はサメの仲間の中でも食用になるものが多い。フライやムニエルなどの洋風料理から刺身まで、さまざまな料理に使うことができ、かなり美味しい。また練製品原料としてもサメの仲間は重宝されている。この個体は揚げ物にして食べた。

地方ではサメは食卓に欠かせない。愛媛県八幡浜では沖合底曳網漁業により、本種やホシザメ、エイラクブカなどが漁獲されていて、ゆびきなどで食べられている。海外に生息する種を含めてホシザメ属の魚はおよそ30種知られているが、これらの種も様々な国で食用として親しまれているよう。しかし正直言って、日本のシロザメやホシザメとどこが違うのか理解しがたい種も多いのだ。

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ヤマトシビレエイ

2016年05月09日 23時15分58秒 | 魚紹介

5月2日~7日には恒例の「喜界島オフ会」に参加。私は3回目の酸化になった。「あらら」さんのほか、今回はIHさんというはじめてお会いする方も参加された。今回もたくさんの人、たくさんの魚と出会うことができました。ありがとうございました。なお、出会った魚は今後ご紹介いたします。

今日このぶろぐでご紹介するのは少し前にご紹介しました「シビレエイ」によく似た種。シビレエイ目・シビレエイ科・ヤマトシビレエイ属のヤマトシビレエイ。

 

シビレエイ目魚類は従来(魚類検索第二版)ではエイ目・エイ亜目・シビレエイ上科となっていたが、現在は目に昇格している模様。ただしシビレエイ亜目の分類については意見が分かれるところである。今回のヤマトシビレエイはシビレエイ科とする意見と、シビレエイ科ではなくTorpedinidae(ヤマトシビレエイ科)とする意見があるが、今回は魚類検索第三版に従い、シビレエイ科とした。このヤマトシビレエイを含むヤマトシビレエイ属は世界で22種が知られている。そしてその分布域はほぼ世界中の温暖な海域に及ぶのだ。日本にはヤマトシビレエイとゴマフシビレエイの2種が分布している。

シビレエイの仲間との違いは背鰭にある。背鰭の様子がどうなっているかはシビレエイの記事をみればわかる。背鰭が二つあるのでシビレエイの仲間とは簡単に区別できるのである。尾部は太くアカエイの仲間のように、尾には毒棘はもっていないが、発電器をもっているため扱いには十分注意しなければならない種といえる。

眼は噴水孔よりも離れるのがヤマトシビレエイやゴマフシビレエイ、眼の直後にあるのがタイワンシビレエイというのが同定のポイントとして挙げられているが、これはわかりにくい。尾鰭の形状や第1・第2背鰭のサイズの違い、吻の形もあわせて同定するべきだろう。日本産のもう1種ゴマフシビレエイは体に小さな黒色点があることなどによりヤマトシビレエイと区別することができる。

ヤマトシビレエイの分布は北海道~沖縄島、東シナ海までとかなり広域におよぶ。あまりヒトの目に触れないのは本種は多くが深海(~1000m)に生息しているためのようだ。ただしまれに浅いところにも見られるようで、ダイバーによって撮影されることもある。ゴマフシビレエイのほうは浅い場所にも生息し、北米西海岸の巨大な海藻、ケルプの森をバックにおよぐ本種の写真はよく知られている。この仲間もほかのシビレエイの仲間と同様に仔魚を産む。このヤマトシビレエイは残念ながら保管中に腐らせてしまい食することはできなかった。

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喜界島のカエルウオたち

2016年05月04日 06時30分15秒 | 魚紹介

喜界島のカエルウオの仲間、ここまでスジギンポ、ケショウギンポの2種類をご紹介していたが、ほかにも多数のカエルウオの仲間が採集出来た。

タマギンポ

岩礁のタイドプールに生息する。干潮時には磯をはい回る。タネギンポと同じような行動をする種ではあるが、タネギンポは礁湖付近やそのほかあちこちにいるのに対して本種はイワサキスズメダイやスジギンポがいた場所の近くで見られた。同属の魚であるタネギンポの頭部には白い斑点がないが、このタマギンポでは白い斑点が多数みられる。2010年にも潮だまりでこの種をみたことがある。タネギンポも採集したのだが、残念ながらバケツの隙間から飛び出してしまった。タネギンポ属の魚は日本では3種が見られる。もう1種カブキギンポはまだ見たことがないが、屋久島や西表島にも分布しているので、喜界島でも見られると思われる。

ホホグロギンポ

ハナカエルウオ属の魚である。この属の魚は雌雄で斑紋に違いがあるものが多いが、この種もそうで、雄は体側に細かい線が入っているが、雌は細かい線がなく暗色の斑点がある。雄も採集していたのだが、採集後に水を変えるためにバケツの蓋を開けたらぴょーん、と飛び跳ねて逃げてしまったのである。大型個体は全長10cmほどあり、やや大きくなる種のようであった。喜界島のほか琉球列島に広く分布し、和歌山県から高知県、種子島、屋久島でも採集されている。

シマギンポ

ヤエヤマギンポ属の魚である。ヤエヤマギンポは全長12cmを超える大型種であるが、この種は小型で大きくても5cmほどらしい。ヤエヤマギンポとは胸部に大きな円形斑があることや、眼や項部の皮弁が分岐しないことで区別することができる。この種は6年まえにヤエヤマギンポを採集した礁湖の中で採集したものなのだが、その場所にはヤエヤマギンポは見られなかった。ヤエヤマギンポ属の魚は日本に3種が分布している。もう1種ヒレナガカエルウオはまだ観たことがないのだが、屋久島で採集できているので喜界島でも採集できる可能性が高い。なおシマギンポはこのなかでも北方に生息する種で和歌山県や高知県でも採集できる。

ヒナギンポ

体長4cmほどの小型種。岩礁域のタイドプールに生息していたもので、イワサキスズメダイとおなじような場所で採集出来た魚である。体側の後方に細かい模様があること、臀鰭に暗色の横線があることなどが特徴である。また雄は頭部の腹面に大きな黒色斑が1対あることが特徴というがこの個体にはそれがなくおそらく雌なのだろうと思われる。分布は屋久島、琉球列島。海外では西太平洋~サモア、トンガのサンゴ礁域、インド洋のクリスマス島。ヒナギンポ属は現在のところ、1属1種。

ロウソクギンポ

ロウソクギンポは項部の皮弁を欠くこと、眼の上方に分岐しない細長い皮弁を持つことが特徴である。体は緑色っぽく、しみのような黒い斑紋と、短い線のような青白い小斑点がある。生息地はやはり岩礁域のタイドプールのような場所で、数多く見られた。これは無事に持ち帰ることができ、現在も飼育中である。餌はもうすでに配合飼料を食している。ロウソクギンポ属は5種がしられて居るが、日本に生息するのはロウソクギンポのみ。

ここで紹介した5種のほかに、今回同行した方はヨダレカケを目撃されていた。さらに写真はないのだが、ニセカエルウオとタネギンポも採集できた。喜界島は河川がなく隆起サンゴ礁の島であるため、ハゼの類は少ないがこういうカエルウオの仲間はほかにも多数みられるのだと思われる。

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