魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

トキ放鳥の問題を考える

2022年05月16日 14時38分18秒 | 環境問題

最近トキの放鳥の話があるが、私は賛同することはできない。それにはいくつか理由がある。めっちゃ長いので1.2.3.4.5.だけ見てくれていいよ。

1.税金で購入している

まず環境省はトキをどうやって入手するのか。これはまだトキが見られる中国から購入しているはずだ。そのカネはいったいどこからきているのかというと、スポンサーがついているのかもしれないが、行政法人という都合上、税金になるのではないかと思われる。これをやりたいのなら環境省は行政機関であることをやめて「一般財団法人環境省」とかになっていただき、税金ではなくスポンサーからのカネで購入するのであれば、自然環境に興味のない連中は誰も文句は言わないだろう。だけれども、以下のような問題点があることも理解してほしい。

2.今の日本はトキが住めるような場所ではない

日本のトキは羽毛目当てに乱獲によって絶滅したとされる。では保護され乱獲の心配がなくなった現在の日本はトキにとって幸せなのだろうか。そういうことはない。確かにトキを撃ち殺すような人はいなくなるが、現在の日本の自然環境は、トキを再び受け入れるキャパシティはない、どころか、今、日本の自然環境で生きている生物にだってもう明日はないかもしれないのである。そんななかに放たれても、餌がなく餓死してしまうかもしれない。それが起きる可能性が高いところに放つのは虐待ではないのか(+税金の無駄)。トキを放鳥するよりも、かつてトキがいた環境を甦らせることがはるかに重要である。というか、そもそも放鳥を前提としていることがどうかと。

3.餌を撒くことによりトラブルが起こる可能性が高まる

今回の件でトキ放鳥の「賛同者」はいずれも、トキは中国の系群とほとんど同じだから放鳥しても問題ない、というが、ではそのトキの餌はどうなるのだろうか。上記のように日本にはもうトキが住めるような場所、というよりも餌がなくて餓死してしまう可能性がある。この環境省による動物虐待を防ぐためには、餌を増やす必要がある。とくによく言われているのがドジョウ。トキが住めるようにドジョウの産卵場所や生息場所の確保、農薬を使わないモデル地区の選定などであればよいのだが、「トキがやせてかわいそう」という「かわいそう論」のためにドジョウを放つと、遺伝子汚染が起きる危険性がある。まあこれについては私よりもほかの有識者の指摘のほうが詳しいので、私が言うまでもないのだが。でも絶対にドジョウをどこかの団体が放流することがあるに違いない。

以前同じことをホタルでやっていたと思う。ホタルを復活させるなどと称し、カワニナを購入してばらまいたというものである。そのカワニナは今どうなっているのか、不稔が起きていないか、集団同士で交雑していないか、モニタリングが必要だろう。

4.いなくなったら放流・放鳥すればよいとの結論に行きつきやすい

今回の件でもっとも大きな問題は「トキが絶滅した。じゃあ放鳥して復活させよう」という機運ができそうなことである。しかし、放流・放鳥などして個体数を増やすのは基本的におすすめできない。どうしても放つであれば、少なくともその地域の個体群、それもほかの地域の生き物や水を一切入れずに育てたものでなければならない。購入してどこのものか放つのは絶対にやめるべきなのである。先述の通り、放流、放鳥では遺伝的な問題や、そもそも生きていけるか、という問題がある。しかしもし成功したとしても「いなくなったら放流・放鳥すればいい」という結論にいきつきやすくなる。そうでなく、どうすれば生き物がいなくならないようにするべきかを考えるべきである。環境省はその意味では本当にズレていると私は思うのだが。

実際にヒナモロコは中国か台湾だかの個体群を放流していた、日本の個体群は絶滅したとされている。ほかの希少な淡水魚でも、スイゲンゼニタナゴ(日本と韓国のは別種らしい。そうなればわかりやすくていいと思うのだが)の件では近縁のカゼトゲタナゴを放流していた、なんて話を聞く。一部は行政がかかわっているというが、それならばなおさら、生き物を放つということが恐ろしいということを一般市民は理解しておかなければならない。

5.検疫の問題

もちろん、外国から鳥を購入し野外に放つというのであれば病気や寄生虫のリスクも考えなければならない。今や日本中のあちこちで「鳥インフルエンザ」だの「殺処分」だのニュースになっているが、今回のトキのもちこみにより、もしかしたらまた...という懸念もある。淡水魚の世界ではコイヘルペスウイルスなんかがよく知られているが、もう19年も前のことだからみんな忘れているということはこれで何回書いたかわからない。そもそも日本の動物検疫に対する知識はガバガバであるということは先日のウクライナ難民のペットとして日本に入ってくるイヌの狂犬病の件についての発表で世界中に明らかになったはずである。


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