前回フエダイ科・フエダイ属のナミフエダイという種を紹介したので、今回はナミフエダイの近縁種であるフエダイのご紹介。フエダイは以前にもこのぶろぐで紹介していたのだが、画像を1回出しただけであった。ということで改めての紹介となる。
私が自然下でフエダイを見たのは3回ですべて高知県である。1回目は2008年の秋で、前回紹介したナミフエダイが釣れた場所で2匹釣れた。写真の個体がそれである。小さくて逃がそうとも思ったが、ハリをのみこんでしまっていたのでお持ち帰り。展鰭や尾柄の姿勢修正が甘いのはご容赦いただきたい。2回目は2021年で、このときは高知県の道の駅、産直コーナーで販売していたのだが、「イサキ」として売られていたもの。鱗と内臓がなく写真は撮影していない(耳石は採取した)。じつはフエダイを食したのはこれが唯一である。3度目は今年で、防波堤から見たものである。特徴的な目立つ白色斑を有する、そこそこ大きそうな個体である。今年はバラフエダイなんかも多かったが、この手の魚の「当たり年」だったのだろうか。来年はアミメフエダイ、キンセンフエダイ、そして日本初記録のユウダチタルミを高知県から出したいところである。
フエダイといえば宮崎県が有名である。宮崎県では「しぶだい」と呼ばれ高級魚扱いされている。釣りの対象魚としても有名で夏の磯では本種がよく狙われている。本種のほかにクロホシフエダイなども釣れるようだが、人気があるのは標準和名フエダイのほうである。フエダイは従来は、現在ナミフエダイと呼ばれている魚と同種と考えられており、1983年に新種記載されたが、その際も日南市鵜戸で漁獲された個体がホロタイプになっている。クロホシフエダイは点が黒いのに対し、フエダイは点が白いことから「しろほしふえだい」なんて呼んでいる業者もいるとか。入荷はそこそこあるのだがかなり高価でお値段も1匹5ケタすることがあるとか。
近縁種ナミフエダイ
フエダイの側線と白色斑
ナミフエダイの側線と白色斑
なお、フエダイとナミフエダイの見分け方はそれほど難しくない。フエダイは頭部が赤紫色で、眼の前や下方に数本の青い線があるのみなのに対し、ナミフエダイでは線が多数入るので見分けられる。また体側の白い点もフエダイは側線の上方にあるのに対し、ナミフエダイは側線上にある。文字にするとわかりにくいので写真で見て頂きたい。またフエダイの幼魚では体側の横帯が見られないが、ナミフエダイは黒く明瞭な横帯が見られるのも違いとしてよいだろうか。
水族館のフエダイ
分布域はナミフエダイがより南方で、フエダイは鹿島灘以南の太平洋岸、日本海西部、瀬戸内海(稀)、琉球列島(少ない)、台湾、中国なのに対し、ナミフエダイでは紀伊半島以南の太平洋岸、小笠原諸島、沖縄諸島、八重山諸島で、海外ではインドー中央太平洋(ソシエテ諸島まで)に分布する。ただし古い文献や海外の文献ではナミフエダイとフエダイを混同している可能性があるので注意が必要である。付け加えておくと私は西インド洋(UAEやソマリアなど)のナミフエダイは異なる種かもしれない、と思っている(これは前回、ナミフエダイの紹介のときに書いた)。また南シナ海から得られた「コガネフエダイ」というのは本種の変異であるとされる。
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