この魚はチョウチョウウオという。その種標準和名からもわかるように、チョウチョウウオ科の代表的な種類である。しかしこれまで紹介していなかった(てっきり紹介していたと思った)。今回はチョウチョウウオをご紹介。写真は喜界島の防波堤からサビキ釣りで釣ることができた個体。
チョウチョウウオの仲間といえば背鰭にある目玉模様、もしくは黒色斑であるが、このチョウチョウウオについては見られない。しかし本種の場合、幼魚は背鰭に目玉模様、正しく言えば眼状斑を有している。この眼状斑はその名の通り、眼を偽装したもので、捕食者を惑わせて身を守るようだ。成魚は黄色だが、やや小さいものは茶色っぽく、あまりカラフルではない。それゆえアクアリストからの人気が低い、と思われがちだが、アクアリストからの人気が低い理由はまた別のところにある(後述)。
世界的にみるとチョウチョウウオはチョウチョウウオ属の中ではやや分布が狭く、西太平洋に生息するがその分布域は日本、朝鮮半島、台湾、中国、東沙、南沙と分布域は狭い。以前はChaetodon collareという学名も使われたが、この学名の種は別種である。そのため古い図鑑では本種の分布域にインド洋が入っていたりするので注意が必要。一方日本国内では北は津軽海峡からの記録もあるなど(死滅回遊であるが)、広い分布域をもつ。千葉県では夏~秋にかけて幼魚を採集することもできるが、越冬はできないらしい。高知や和歌山ではかなり大きいものも見られるので、越冬しているようだが、産卵しているかどうかはわからない。喜界島では周年見られるようだ。
千葉県で採集したチョウチョウウオの幼魚
チョウチョウウオを採集したら飼育といきたいところであるが、本種の飼育はベテランでも難しい。ポリプ食性ではないのだが、臆病な性格をしていて、ほかのチョウチョウウオと飼育すると調子が悪くなることもある。またやせやすいという特徴もある。トゲチョウチョウウオやアケボノチョウチョウウオは「豆サイズ」のものを大きく育てた、なんて話も聞くのだが、本種ではそのような話を聞かない。ある程度大きいものはサビキ釣りで釣れたこともあり、雑食性が強くなるようだ。飼育したいならある程度大きなサイズのものを入手するのがよいかもしれない。最もそれには大型水槽が必要になるが。もっとも、小さい水槽では敏感なチョウチョウウオの仲間は飼育しにくいのであるが。
本種は比較的多く釣れ、比較的多く漁獲されるため、食用にもできそうではあるが、この個体は食用にはしていない。また次の機会に。