昭和32年9月26日、諏訪劇場前の様子だ。今、片岡知恵蔵の大菩薩峠が再映されている。東映スコープ、総天然色。机龍之介が大菩薩峠で旅の親子を切り殺すところから始まる。暗く重い印象があった。
それとは裏腹に、劇場前は至ってのんびりしている。立ち小便をする子供。現在では考えられない。映画のスチール写真を眺めていたり、コンクリートの上に座る学生達は、友達との待ち合わせだろうか。前が柵で囲った空き地になっているのは区画整理に入っているためか。南側に自転車置き場がある。映画の黄金時代。毎週のように足繁く通った。
お祭りの日
当店の横には映画の看板がずらりと並んでいた。無かったのは本町の東宝劇場だけ。四日市シネマとグランドが出来たとき、看板は向かいの小沢さんの塀に立った。お袋は「あの看板は絶対うちの横に移動する!」と自信ありげに言った。1か月もたたないうちに当店横に移された。看板を張り替えに来るおじさんがビラ下券2枚と割引券5枚置いていく。だから、土曜日の夜はおやじの後をついて映画に通った。ポスターは糊をつけて上へ上へと貼重ねられ、ある程度の厚さになると一気にはがされた。