新・ほろ酔い気分

酔っているような気分のまま、
愚にもつかない身辺雑記や俳句で遊んでおります。
お目に留めて下されば嬉しいです。

器と中味の話

2008年12月18日 07時24分46秒 | 身辺雑記

 大汐会のメンバーであるA君の話をしたい。

 大汐会は昭和40年代の初めころ、一緒に仕事をした仲間たちの集まりだ。集まりと言っても、勉強会ではない。主として、年一回の呑み会が中心となっている。

 例年、初夏のころに呑み会が行われる。今年は35回目であった。

 そのメンバーにA君がいる。70歳前後だろうか。

 十数年前に奥さんを亡くし、以来ずっと独り暮らしを続けている。

 そのA君が、このごろ陶芸を始めた。何焼きというのか、私は知らない。

 A君は口数の少ない人で、考えながら行動するタイプ。陶芸と聞いて、ピッタリだと思った。

 先日、陶芸の面白さについて、いろいろ話してもらったが、やはりやってみなければ理解できない。「フーン」と聞くだけになってしまった。

 素焼きの上に釉薬を塗り、1200度から1300度程度の温度で本焼きをするのさそうだ。12時間も焼くのだそうだから、大事だなあと思わざるをえない。

 行政機関の施設を借りているそうだ。その代わり、年に幾度かの「チャリテイー即売会」を開催し、その売上金を福祉関係へ寄付をしているとのこと。とても楽しそうな口ぶりだった。

「食べ物を入れる器なのに、その料理を作れないンです。入れ物があっても、中味がないンですから、困ったものです」

 料理を作ってくれる人はもう亡い。その淋しさを、A君らしい言葉で言ったのだ。

「茶飲み友達はいないのかい?」 私の質問だ。

「まさか!」 彼は強く否定して、それから笑った。

 器があっても料理がない。意味深長な言葉だ。

 私に置き換えて考えたとき、今、カミさんのいない生活は考えられない。

 実生活上も大弱りだが、気持ちの問題でも大いに支障を来すに違いない。空気が薄くなった感じにでもなるのだろうか。喪失感は想像できない。

 とてもこんなことを、カミさんの前では言えないのだが。

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コメント (12)
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