安全問題研究会~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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【金曜恒例】反原発北海道庁前行動(通算303回目)でのスピーチ/原発を見限ったゼネコン業界の新たな動き

2018-08-17 23:58:16 | 原発問題/一般
 みなさんこんにちは。

 今日は、日本の原発を陰で支えてきたゼネコン、建設業界に、原発から自然エネルギーへの大きなパラダイムシフト、地殻変動が起きつつある。そんな少し希望の持てる話をしたいと思います。

 ご存知の方もいるかもしれませんが、おととし2016年に「水力発電が日本を救う」という本が出ました。著者は、元国土交通省河川局長として、3つのダムの建設に携わった竹村公太郎さんという方です。かつてダム建設といえば、建設予定地の住民を追い出し、土地を強制収用で奪い、時代の変化によって事業の必要がなくなったころになってようやく建設が始まるような、自然破壊と税金垂れ流しのイメージが付きまとっていました。群馬県で建設が進んでいる八ッ場ダムなどは今もこうした負のイメージそのままといっても過言ではありません。

 しかし、竹村さんはこの本の中でこれからのダム事業は違うと強調しています。この本のポイントはいくつかありますが、治水用だけに作られ、発電用に作られていなかったダムに新たに発電の機能を持たせ、半分程度しか水を貯めていないダムの貯水率ももっと引き上げる。それでも不十分な場合には少しだけダムをかさ上げする。要するに、今あるダムの使い方を変え、また少し改修するだけで大幅に水力発電量を増やすことができる。ダムはワイングラスのような形をしていて、上に行くほど容積が大きくなるので、今あるダムを10%かさ上げするだけで、発電量を2倍に増やすことができるのだそうです。電源を一極集中から多極分散型に変えるため、各地に小水力発電所をたくさん作るべきだという提言もしています。

 竹村さんは、これらの施策を組み合わせることによって、永遠に枯れることのない水から新たに2兆円分の電力と200兆円分の富が生み出せると試算しています。夢のようなバラ色の未来が描かれていますが、これは日本政府が政策を変えさえすれば夢ではなく現実となるのです。

 自分にとって心地よいことを言う人物ばかり重用し、耳の痛い忠告をする人物はことごとく遠ざけるなど、すっかり裸の王様となった安倍首相は、相変わらず経産省の言うことばかり聞き、原発にしがみついています。しかし情勢は大きく変わりつつあります。

 日本プロジェクト産業協議会という団体があります。ゼネコンや中小建設会社、機械金属メーカーなど218社が加盟する業界団体で、これらの企業の利益につながるような公共事業についての情報交換や国への陳情活動などを主な目的としています。はっきり言ってしまえばゼネコン利権団体ですが、この日本プロジェクト産業協議会の中の委員会のひとつである水循環委員会の前委員長が、この本を書いた竹村さんだったのです。

 日本プロジェクト団体協議会水循環委員会は、2013年12月、水力発電に関する提言をまとめました。「純国産の自然エネルギー・水力による持続可能な未来社会~既存のダム・水力施設の最大活用による水力発電の増強~」と題したこの提言では、竹村さんが提案したダムのかさ上げや使い方の改善によって新たに324億kwhの電力が生み出せるとしています。福島第1原発事故直前の2009年における原発54基の年間発電量は2798億kwhでした。この数字は、日本の年間発電量全体の29.3%に当たります(注1)。昨年(2017年)の日本の原発比率は2.8%(注2)なので、単純に2009年の1割とすると、原発の発電量は約280億kwhとなります。つまり、竹村さんが提案した水力発電の活用策を実行に移せば、少なくとも今、再稼働している原発程度の電力はまかなうことができるのです。

 今、日本の発電量全体に占める水力の比率は7.6%(注2)で、1割にも達していません。まだ記憶に新しい西日本豪雨をはじめ、近年、日本は大雨によって次々と多くの水害に襲われています。これだけ多くの雨が降っているのに、それが資源として活かされることもなく、災害だけをもたらし海に流れ出てしまうのはもったいない話です。まともな感覚を持った人なら、この水を何かの役に立てられないか考えるのは当然のことです。

 福島第1原発事故では、東京電力の責任ばかりが問われていますが、本来であれば法律で免責されている原子炉メーカーの責任は問われて当然ですし、建屋を作ったのは建設会社なのですから、ゼネコンや建設業界の責任も本来は問われておかしくありません。そうした責任の話はとりあえず今日は置いておきます。

 日本プロジェクト産業協議会という建設業界最大の利権団体で水力発電を拡大する方向での提言が出されたことに私たちはもっと注目すべきでしょう。もちろん、過去のダム建設による環境破壊や税金無駄遣いが再び繰り返されないよう、ゼネコン業界を監視することは必要だと思います。しかし一方でこれらの動きは、日本の建設業界が、原発にはもう未来がないと判断し、事実上、原発を見限ったことを意味しています。事故の反省もせず、深刻な環境汚染や健康被害はすべて隠蔽し、なかったことにしてやり過ごすだけの安倍政権の姿勢をよそに、民間レベルではすでにポスト原発に向けた動きが始まっているのです。海外への原発輸出も多額の費用が掛かることがわかり、早くも困難に直面しています(参考記事:日立の英原発建設、米大手が外れる方向 建設費の高騰で)。国内でも海外でもコストの膨れ上がった原発、危険で地球上のあらゆる生命を不幸にするだけの原発はいますぐやめろと、私たちが粘り強く声を上げ続けるなら、原発のない未来は必ず実現します。頑張りましょう。

(注1)(独)原子力安全基盤機構安全情報部・編「原子力施設運転管理年報 平成22年版(2010年11月)」より
(注2)いずれも「電源調査統計」より(参考資料

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