安全問題研究会~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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【金曜恒例】反原発北海道庁前行動(通算290回目)でのスピーチ/日本の原発が必ず終わらざるを得ない2つの理由(1)経済性

2018-05-18 21:38:04 | 原発問題/一般
通算290回目となった今日の北海道庁前は、4月中旬並みの寒気が流れ込んで気温が5度近くまで下がり、冷たい雨の降るなかでの行動となった。当ブログ管理人が行ったスピーチを紹介する。

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 みなさんこんにちは。冷たい雨が降る中の行動、お疲れさまです。

 今日は、先週ここで予告した通り、「日本の原発が必ず終わらざるを得ない2つの理由」を2回シリーズでお話ししたいと思います。キーワードは「経済性」と「核のゴミ」ですが、今日は経済性の観点からお話しし、来週、核のゴミの観点からお話しします。

 経産省は、エネルギー政策をまとめる際、しきりに原発が「他の電源と比べて一番安いエネルギーだ」と言っています。しかし、それを否定する材料はこの場では語りきれないほどたくさんあります。今日はそのうちのいくつかをご紹介します。

 まず、福島第1原発の賠償は、経産省の控えめな予測でも21兆円が必要との試算がまとめられています。しかし、驚くのはまだ早い。2017年4月、民間シンクタンク「日本経済研究センター」がまとめた試算によれば、福島第1原発事故の処理にかかる費用は、50兆円から最悪の場合、70兆に上るとの結果になっています。内訳は、福島県内の汚染土除染に30兆円、汚染水処理に20兆円、これに賠償を加えると最悪の場合、70兆に達するというものです。この調査に中心として携わったのは、内閣府原子力委員長の要職も務めた鈴木達治郎氏で、信頼できる調査と言えます。

 福島第1原発事故が起きるよりもずっと前の2004年には、経産省の若手有志職員が核燃料サイクルの中止を求めて「反乱」を起こすという出来事がありました。最終的に反乱は「鎮圧」されたものの、このとき若手有志がまとめた資料「19兆円の請求書」によれば、青森県六ヶ所村の再処理工場の建設費は2.2兆円。関西国際空港の人工島ですら建設費は1.6兆円しかかかっていないのに、こんな金を再処理工場に投じるのはおかしいと当たり前の指摘をしています。さらに、再処理工場は動いたら動いたでコストが最終的に19兆円かかる可能性もあると、経産省の若手有志は指摘したのです。

 東芝が、中国での独占禁止法に基づく審査を終えた東芝メモリを売却するとのニュースが昨日、流れましたが、そもそも東芝がこのような事態に至ったのも、米国で2006年に子会社化した原発メーカー、ウェスチング・ハウス(WH)の破たんが原因です。日本国内では原子力損害賠償法で原発メーカーが免責され、事故が起きても責任を負わなくてよいことになっているにもかかわらず、海外での原発事業の失敗によって日本を代表する巨大企業が倒産の危機に瀕したわけです。

 それでも、原発推進勢力は「原発を動かせば、数字に換算できない様々な経済効果が地元に及ぶ。旅館や商店街が活性化する」と、執拗に再稼働を求めます。しかし、昨年出版された「崩れた原発「経済神話」~柏崎刈羽原発から再稼働を問う」という本がその正体を明かしています。柏崎刈羽原発の地元の地方紙である新潟日報社原発問題特別取材班が、地元企業の経営者100人と直接会い、面談して行った調査では、全体の3分の2に当たる67社が「原発全基停止による売り上げの減少がない」と答えました。原発による「間接的な経済効果」を尋ねても、半分近い48社が「なかった」と答えています。柏崎市の主要4産業における過去40年の就業者数、市内総生産額の推移を原発のない周辺各市と比較してもその差はなかったことがわかったのです。取材に当たった新潟日報社取材班はこうした原発推進派の根拠のない「経済効果」論を「原発経済神話」と名付け、その崩壊を指摘しています。何度でも繰り返しますが、原発が稼働すれば旅館や商店街が活性化するなどというのは根拠のないでたらめです。

 産経新聞には「原発が何年も動かず、このままではもう旅館を閉めるしかない」という「旅館経営者」のコメントが繰り返し載りますが(参考記事)、これは産経新聞が「原発作業員専用の旅館」しか取材をしていないからです。福島の事故後、東海第2原発の再稼働に同意せず、反対を表明してきた東海村の村上達也前村長が「原発作業員しか泊まれないような雑魚寝スタイルではこれからの時代、ダメだ。一般観光客も泊まれるように旅館を改造しなさいといつも経営者に言っているのに、いや、このままでいいんだと言って経営者が姿勢を改めない」と憤慨しておられました(参考記事)。産経新聞はこうした旅館ばかり取材し、「もう旅館を閉めるしかない」という経営者の声を拾っては「それ再稼働だ」と言っています。ふざけるなと言うしかありません。そんなに原発推進したいなら、産経新聞の経営者も社員も、全員、帰還困難区域に住めばいいんです。

 世界的に見ても原発事業は行き詰まっています。原発依存度75%の原子力大国・フランスの国営原発メーカー・アレバ社は2014年1~6月期決算で6億9400万ユーロ(約1010億円)という巨額の負債を抱えています。巨額(数百億~数千億単位)の赤字決算は4期連続であり、国営でなければとっくに倒産していたでしょう。そもそも世界最大の原発大国・米国で、1979年のスリーマイル島原発事故以降、1基の原発新設も増設もされていないどころか、2025年までに最大20基が廃炉になるとの予測も出されています(参考記事=2016.6.4付け「毎日」)。経産省が言うように、本当に原発が最も安価なエネルギー源であるなら、世界一市場原理を重視するはずの米国で、なぜ原発からの撤退が相次いでいるのでしょうか。経産省の宣伝が嘘であることが示されています。これから先、どれだけのカネが必要になるかわからない原発に未来はありません。

 まだまだ材料はありますが、この辺にしておきたいと思います。来週は「日本の原発が必ず終わらざるを得ない2つの理由」の後編、核のゴミ問題を取り上げます。ありがとうございました。

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