安全問題研究会~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

公共交通と原発を中心に社会を幅広く考える。連帯を求めて孤立を恐れず、理想に近づくため毎日をより良く生きる。

当ブログのご案内

当サイトは列車の旅と温泉をメインに鉄道・旅行を楽しみ、また社会を考えるサイトです。

「あなたがすることのほとんどは無意味でも、あなたはそれをしなくてはなりません。それは世界を変えるためではなく、あなたが世界によって変えられないようにするためです」(マハトマ・ガンジーの言葉)を活動上の支えにしています。

<利用上のご注意>

当ブログの基本的な運営方針

●当ブログまたは当ブログ付属サイトのコンテンツの利用については、こちらをご覧ください。

●その他、当サイトにおける個人情報保護方針をご覧ください。

●当ブログ管理人に原稿執筆依頼をする場合は、masa710224*goo.jp(*を@に変えて送信してください)までお願いします。

●当ブログに記載している公共交通機関や観光・宿泊施設等のメニュー・料金等は、当ブログ管理人が利用した時点でのものです。ご利用の際は必ず運営事業者のサイト等でご確認ください。当ブログ記載の情報が元で損害を被った場合でも、当ブログはその責を負いかねます。

●管理人の著作(いずれも共著)
次世代へつなぐ地域の鉄道——国交省検討会提言を批判する(緑風出版)
地域における鉄道の復権─持続可能な社会への展望(緑風出版)
原発を止める55の方法(宝島社)

●管理人の寄稿
ローカル鉄道に国・自治体・住民はどう向き合うべきか(月刊『住民と自治』 2022年8月号掲載)
核のない未来を願って 松井英介遺稿・追悼集(緑風出版)

●安全問題研究会が、JRグループ再国有化をめざし日本鉄道公団法案を決定!

●安全問題研究会政策ビラ・パンフレット
こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策
私たちは根室線をなくしてはならないと考えます
国は今こそ貨物列車迂回対策を!

【福島原発事故刑事裁判第4回公判】事故後に「後付け」で作られた証拠

2018-03-03 19:19:35 | 原発問題/福島原発事故刑事訴訟
福島原発事故をめぐって、強制起訴された東京電力旧3役員の刑事訴訟は2月28日、第4回公判が行われた。前回に引き続き、科学ジャーナリスト添田孝史さんの傍聴記が寄せられたので、福島原発告訴団の了解を得て掲載する。

----------------------------------------------------------------
事故3年後に作られた証拠

 2月28日の第4回公判は、傍聴希望者187人に対し傍聴できたのは62人で、約3倍の倍率だった。

 この日の証人は東電設計の久保賀也氏。東電設計は東電が100%の株を持つ子会社で、原発など電力施設の調査、計画、設計監理などを担っているコンサルタント会社だ。久保氏は、同社の土木本部構造耐震グループに所属し、津波計算などの技術責任者を務めていた。

 今回の公判では、東電設計が計算した、以下の三つの津波シミュレーション関連を中心に尋問が進められた。

1)政府の地震調査研究推進本部が2002年に予測した津波地震が福島沖で発生したら、福島第一原発にどんな津波が襲来するか。また、どのような対策が考えられるか

2)もし1)にもとづいて対策を実施していたら、2011年の東北地方太平洋沖地震の時、津波はどのくらい福島第一に浸水したか

3)東北地方太平洋沖地震の津波を防ぐには、防潮壁の高さはどのくらい必要だったか

 証人尋問では、最初に指定弁護士の石田省三郎弁護士が、1)のシミュレーションの経緯について明らかにしていった。東電設計は、東電からの依頼や打ち合わせの内容、資料、出席者等を品質マネジメントシステムISO9001の定めにしたがって詳細に記録していた。検察が持っていたその記録が、事故の経緯を明らかにする上でとても役立つことが、この日の証人尋問で見えてきた。

 久保氏は、2001年11月から2002年夏にかけて、どんな考え方で1)のシミュレーション作業を進めて高さ15.7mの津波想定を求めたか、また10mの防潮堤を設置する対策案の位置づけなどを証言した。津波を低くするために、東電が「摩擦係数の見直しができないか」と依頼し、東電設計が断わっていたことも明らかにした。

 一方、弁護側の宮村啓太弁護士が強調してきたのは、2)や3)のシミュレーション結果だ。

 1)のシミュレーションで、東電設計は海抜10mの福島第一原発敷地の上を、ぐるりと全部取り囲む形で高さ10m(海抜20m)の防潮壁を設置する案を示していた。

 2)のシミュレーションは、いくつかの仮定にもとづいている。1)で提案されていた敷地全部を取り囲む防潮壁のうち、海抜10m以上の津波が打ちつける部分「だけ」に、ピンポイントで防潮壁を作る。具体的には、敷地南部、北部と、中央のごく一部だけだ。その他の大部分の区間には防潮壁は設けない。

 そのような、櫛の歯が欠けたような状態の防潮壁の配置のもとで、東北地方太平洋沖地震の津波が襲来したらどうなるかを計算すると、敷地の広範囲に浸水する、というのが2)の結果だ。「対策をとっていても事故は避けられなかった」という東電側の主張を支えるものである。

 これに対して石田弁護士は、2)について、「敷地の一部だけに防潮壁を作るという対策が、工学的にありうるのか」と久保氏に尋ねた。久保氏は「弱い」と返答。「あまり考えられないのでは」という念押しに、「そうですね」と認めた。

 2)のシミュレーションは、40以上計算した津波地震の発生パターンのうち一つに絞り、それへの対策をピンポイントで実施する仮定にもとづいている。断層の位置、傾きなど地震の起こり方が少しずれるだけで、敷地のどこが一番高い津波に襲われるかというパターンも異なってくる。その不確かさを久保氏も認めた形だ。

 3)のシミュレーションは、東北地方太平洋沖地震の津波が全く敷地に遡上しないようにするためには、高さ何mの防潮壁が必要だったか試算。その結果、最大で高さ23m以上が必要だったことがわかったとしていた。

 これについては、シミュレーション結果を詳しくみると、高さ23m以上の防潮壁が必要となるのはごくわずかの区間だけであることが石田弁護士から示された。高さ10mで全周を覆っていれば「(事故防止に)一定の効果があった」と久保氏も証言した。

 そもそも、2)3)のシミュレーションは、勝俣・元会長ら3人に対し、検察審査会が「起訴相当」(起訴すべきだ)という1回目の議決を出した2014年7月の後で実施されたことも尋問の中で明らかにされた。事故から3年以上も経過したそのタイミングで2)3)のシミュレーションを実施した理由について久保氏は「わからない」と答えた。

 しかしこの時期のシミュレーションは、「対策を取っていても事故は避けられなかった」という東京地検の不起訴判断を補強するために、東電や検察の意向に沿って実施されたように見える。そもそも、千万円単位にのぼるシミュレーション費用を誰がどういう名目で負担したのかも気になる。

 弁護側が重視する2)3)のシミュレーション結果に、どれだけの意味があるかについては、4月以降の証人尋問で、さらに詳しく明らかにされることだろう。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする